霧島市福山町福山にある松下美術館までは、國分市街地から車で約15分です。
錦江灣の奧深く、1年を通じて溫暖な気候のこの地は、天然黒酢の里としても有名な所です。いつもなら、桜島と錦江灣の遙かな景色に心奪われつつ通り過ぎてしまう堤防沿いの國道220號線を左折して、山側に少し上ります。
『鄙(ひな)には稀(まれ)な』という言葉がありますが、松下美術館はまさにそういう所にあります。



受付を済ませ、まずはロココ風のお部屋が目に飛び込みます。そこにあるのはイタリア製の優雅な貓腳のテーブルと椅子。その傍らには螺鈿(らでん)細工の中國製家具、そしてシャンデリアがあります。
収蔵している作品は約3,000點。
収蔵品は有名絵畫だけにとどまらず、古代オリエントの埋蔵品から掛け軸?能面?陶磁器など多岐にわたり、敷地內に點在する1號館から6號館の展示館に、ジャンルごとに展示されています。やはりメインは1號館と2號館の絵畫です。鹿児島ゆかりの作家と19~20世紀にフランスで活躍した作家の作品を展示してあるといいますが、その內容に驚かされました。



黒田清輝や東郷青児などは郷土出身畫家として感心しながら眺めていたら、ルノワール?モネ?ルオー?ドガ?コロー?クールベにピカソが出てくると、そこはに特別な世界が広がった気がしました。美術館や教科書でしか見たことのない巨匠たちの作品が、実にさりげなくそこにあります。

福山病院の初代院長だった松下兼知氏が、病院の敷地內に松下美術館を開館したのは昭和58年だそうです。訪れる人は日に5~6人、多いときには100人前後の団體さんが來られるとか。
初代館長の松下兼知氏は幼少より絵を描くことを好み、畫家も志しましたが、長崎醫大に學んで醫者となりました。後年、ヨーロッパ各國を旅行したときに、どんな田舎の教會にも本物の絵や宗教畫が掛けてあり、小さな美術館がありました。そして、それらの絵を見て育った子どもたちの中から、また有名な畫家が輩出している事実を知ったそうです。ここの松下美術館も鄙びた町にこそ本物を飾り、人々の心を潤し、地域貢獻をしたいと願ったといいます。
錦江灣に浮かぶ桜島を背景に、周囲の景色も含めて福山の地を楽しんで、心休めに出かけてみてはいかがでしょう。
松下美術館
霧島市福山町福山771
TEL0995-55-3350
■交通アクセス ロイヤルシティ霧島妙見臺より約22㎞(車で約33分)
■上記の寫真はすべて平成24年1月に撮影されたものです。