
CREコラム
中小企業白書に見る「中小企業における生産性」
公開日:2017/04/14
低い中小企業の生産性
日本の労働生産の低さが注目されるなか、企業規模で見た場合、どうなるのでしょうか。過去最高益を出すなど大手企業の好調さは大きく伝えられるところですが、中小企業の場合は、厳しい狀況であるとの報道も多く見聞きします。
平成28年7月1日に発表された「中小企業白書」のなかで、中小企業における生産性の問題について深く分析されており、その內容を紹介しましょう。
そもそも、中小企業の數の変異を見てみると、中小企業者數(中規模、小規模事業者)は、ここ5年程度を見ても、2009年の420.1萬者から、380.9萬者まで大きく減少しています。(中規模企業に関しては、ここ數年のM&Aやサービス業を中心とした開業や大企業の分社化などの影響もあって増加傾向にあります)
中小企業數の推移
出典:総務省「経済センサス?基礎調査」より作成
※中小企業の定義
製造業:資本金3億円以下又は従業者數300人以下、卸売業:資本金1億円以下又は従業者數100人以下、小売業:資本金5千萬円以下又は従業者數50人以下
サービス業:資本金5千萬円以下又は従業者數100人以下
※小規模企業の定義
製造業?その他:従業員20人以下、商業?サービス業:従業員5人以下
このような中小企業、小規模企業者の淘汰の狀況を見ると、円安による原材料コストの圧迫、優秀な人材不足、設備の老朽化、大手企業の徹底したコスト管理などによる厳しさがうかがえます。
これからさらに労働人口の不足や新興國の経済発展、ロボット化などの大きな波は、決して中小企業にとって有利なことばかりではありません。日本の企業の大半を占める、中小企業の生産性を向上させることは、日本経済の発展という観點からも非常に重要なテーマとなっています。
実際、労働生産性を大企業と中小企業とで比較してみると、製造業、建設業では2倍以上の開きがあります。
製造業は設備投資など規模の原理が機能しやすく、ある程度の生産性の違いはしかたがないのかもしれませが、人數規模の多い製造、小売業がこのような狀況では、その後の消費活動にも大きく影響するでしょう。
中小企業と大企業の労働生産性の比較
出典:総務省「平成26年経済センサス-基礎調査」より作成
(注)労働生産性=付加価値額/総従業者數
日本における大企業と中小企業の差は、先進國と比較しても顕著となっています。次のグラフを見ても分かるように、大企業の製造業における比較では、英國、ドイツ、フランスよりも労働生産性は高く、日本の技術水準の高さ、合理性を表しています。
反面、中小企業同士の比較となると、グラフのように、英國、ドイツ、フランスに対してかなり低い數値となっています。
規模の原理が働く製造業では、ある程度の大企業と中小企業の差はあると認識していたものの、ヨーロッパ先進國では、大企業と中小企業の差はそれほどでもなく、日本の中小企業の生産性の低さが浮きぼりになっています。
時間當たり労働生産性の國際比較
出典:中小企業白書(中小企業庁)
生産性の高い中小企業も存在する
しかし、どの業種においても、一定層の大企業の労働生産性を上回る中小企業が存在することも事実です。
積極的な設備投資やIT化、社員への教育投資が行われ、むしろ大企業にはできない小回りの良さや決斷の速さを生かし、その結果売上、利益も上がり、一人當たりの人件費も上がるという好循環を実現している中小企業も相當數存在します。(中小企業白書では、製造業では約1割の中小企業が大企業平均を上回り、非製造業では約3割もの中小企業が大企業平均を上回っているとしています)
ここにユニークなデータがあります。5年以上在籍する社員がどの程度の割合存在するかで、労働生産性にどのような影響を與えるのかという調査結果です。
サービス業は、相対的に人の入れ替わりが激しいため、従業員の定著率と生産性は多少の関連にとどまっていますが、特に製造業に関しては、入社5年後の定著率が90%を超える企業の生産性は、全體平均の140%という結果になっています。
つまり、従業員の満足度、ロイヤリティの高さが企業の生産性に直結しています。ここに中小企業(特に製造業)における生産性向上の一つのヒントがありそうです。
入社5年後従業員定著率別生産性の水準
出典:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝國データバンク)より作成