
「特例事業承継稅制」シリーズ(5)贈與者と受贈者の範囲が拡大
公開日:2019/05/31
平成30年度稅制改正による事業承継稅制の特例措置では、贈與者と受贈者の範囲が広がりました。「先代経営者以外の複數の贈與者」から「最大3人の受贈者」への贈與が、特例事業承継稅制の適用対象として認められています。 例えば、先代経営者から一括贈與された場合の後継者は、特例認定贈與承継會社の先代経営者以外(配偶者や兄弟、先代経営者と創業した役員など)からの一定期間內の贈與についても特例納稅猶予の適用が認められます。また、代表権を有している後継者が2人や3人の場合でも、議決権保有割合10%以上の後継者であれば特例納稅猶予が認められます。
図:特例制度のイメージ
経済産業省「平成30年度経済産業関係稅制改正について」より作成
先代経営者以外からの贈與等も対象
特例事業承継稅制では、先代経営者から一括贈與等されたことを條件に、その先代経営者以外の特定の複數の株主からの贈與?相続?遺贈であっても特例納稅猶予を受けることができます。具體的には、先代経営者の配偶者、兄弟、甥?姪、後継者の兄弟、先代経営者と共に創業した第三者の役員や役員であった者などが考えられます。
- ? 改正前の一般事業承継では、1人の先代経営者から1人の後継者へ贈與?相続される場合のみが対象。
- ?特例事業承継稅制では、親族外を含む複數の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象となる。
複數株主からの贈與等の注意點
特例経営承継受贈者が特例認定贈與承継會社の代表者以外の者から贈與等により取得する特例認定承継會社の非上場株式等については、特例経営贈與承継期間內にその贈與等に関する申告書の期限が到來するものに限り、特例の対象となります。
特例経営贈與承継期間は、贈與を受けた年の翌年3月16日から5年後の3月15日までですが、5年後の3月15日に申告期限がくる贈與は、その前年の12月31日までの贈與になりますので注意が必要です。
先代経営者からの贈與等と同じ年に、先代経営者以外からの贈與を受ける
先代経営者から贈與等を受けて、それ以降その同じ年に先代経営者以外からの株式の贈與を受けた場合、贈與等を受けた年の1月15日までに認定手続きをして認定を受け、3月15日までに贈與稅の納稅猶予を受けるための贈與稅の申告を一度行う必要があります。
先代経営者以外からの贈與については、特例経営贈與承継期間內にその贈與に関する申告書を提出することが條件です。なお、先代経営者から贈與等を受けた年の翌年以降に贈與を受けると、都道府県庁に対する手続きが別途必要になりますので注意が必要です。
特例経営承継者の注意點
特例経営承継者とは、特例認定承継會社の特例承継計畫に記載された特例認定承継會社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせてその會社の総株主議決権數の過半數を有する者)であって、その同族関係者の、その特例認定承継會社の議決権を最も多く有する者をいいます。
その特例承継計畫に記載された後継者が2名または3名の場合には、その議決権數において上位2名または3名でそれぞれ総株主議決権數の10%以上を有する者(同族関係者の中に後継者以外に保有株式數の上位者がいない者)も対象となります。
これらの條件を満たす限りにおいて、親族外の後継者であっても適用を受けることができます。なお、複數の後継者の場合は平成30年4月1日から令和8年3月31日までの間に提出する特例承継計畫に後継者になる予定者として記載されている者最大3人に限定され、これらの者が実際に贈與等をされた時點で代表者である必要があります。
一般事業承継稅制でも贈與者の範囲が拡大
先代経営者以外の複數の者から贈與できるようにする點については、一般事業承継稅制においても適用されることになります(平成30年4月1日以降の贈與)。