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インタビュー 014
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稅理士リレーインタビュー 第14回 「地元企業の発展のために。地域中小企業の経営サポートをよりいっそう充実させていきたい?!? 益子秀一稅理士事務所 稅理士 有限會社益子総合會計事務所 代表取締役 益子秀一様

公開日:2018/03/31

地域の特徴である、土木?建設関連企業をサポート

インタビュアー(以下I:)福島県石川町、棚倉町を中心にビジネスを行われていますが、地域特性やこの地方の特徴などはありますか。

益子秀一(以下M):石川郡石川町、東白川郡棚倉町、須賀川市、白河市などが、おおまかな商圏ですが、土木?建設関連の企業が多いのが、この地域の特徴でしょうか。もちろん農業や製造業もあるのですが、顧問先の中心も土木?建築関連業です。多い業種としては、土木?建築系、塗裝や內裝、外構工事や鉄筋工事、機械のメンテナンスなどです。
関連業者も多く、建設業を中心にピラミッド構造になっていますから、建設?土木関連に発生する仕事の広がりや資金の循環を考えると、この地域にとっては大きな産業なのだと思います。
私はもともと、一般の建設業で経理?総務の擔當業務を行っていました。そのときに稅理士の資格を取得した後退職して獨立し、ここに開業しました。今年の7月1日で20年目に入るのですが、法人稅中心の稅務申告代理業務はもちろんですが、企業の業績管理體制の構築支援を重點テーマとして予算策定や予実管理の支援を行っています。

I:土木建築関連と製造業では、稅務的な業務はかなり違うのでしょうか。

M:普通の製造業とは違う部分がかなりあります。一番大きいのは、受注産業ですので、年間同じように毎月の売上げが発生するわけではないということです。官公庁の仕事ですと、どうしても年度末などに工事の納期のタイミングが集中してしまう傾向があります。年度末に完成工事高が一時に計上され、合間に民間からの受注が入るといった傾向があるので、売り上げの波が非常に大きいのが特徴です。
その波が大きいために、工事別の原価管理を行い、その時々の粗利や最終利益を年間の目標數値に対してきちんと現狀を把握し、社長など経営幹部がコンセンサスを取れているかどうかがポイントです。

I:地域のビジネスの現狀はいかがですか。

M:福島県の場合、震災後、國の予算からの復興予算としては平成28年度がピークで、平成29年度からは減少傾向になっているような感觸です。そうすると、平成30年度以降は、土木関連での官公庁の発注工事はどんどん減っていくだろうといわれています。そういう意味で、土木関係では危機感を持っているお客様が非常に多いですね。
ここ數年は順調でしたが、リーマンショック後のように、建設関連企業の受注が一気に減少した時期もありました。その時期を経験して生き延びている企業は、危機感をすごく持っています。當時かなり多くの企業が廃業したり、倒産したりしました。そういう経験があるので、ここ2~3年は、ある一定の中規模企業であれば、投資的な事業活動よりも、危機感を持ちながら足元を見てしっかりとした経営を行っていこうとしているといえるのではないでしょうか。

空き家をどう活用するかが大きな課題

I:不動産関連のご相談は増えていますか。

M:多くはありませんが、今、ダイワハウスさんに相談させてもらっている案件があります。こちらが地元の方で土地建物をお持ちでしたが、お子様は都市部に住まわれていました。年配のお母様が地元にいらっしゃったのですが、介護が必要になり、地元から離れてお子様の近くに転居されました。その後、実家がそのまま空き家狀態になっていたのですが、昨年そのお母様が亡くなられて、地元にある物件をどうしようかという話になりました。それで、ダイワハウスさんに見ていただいた上で、どんな方法があるか検討していこうということになりました。
相続人の方は、地元に殘っている親戚の方に贈與したうえで先々の管理も頼みたいという意向を持っていたのですが、利便性がそこまで悪いところでないにもかかわらず、贈與を受けてもその後どうするか困ってしまう。自分が管理できなくなったときにどうするかを考えると、すんなりと受け入れていただけることにはならないようです。

I:今、日本全國で空き家は大きな問題になっています。

M:この事例のように、これからは、後継者の方が地元に殘らず都市部に出ていき、年配の方が殘っている土地建物がある。そこに誰もいなくなったとき、空いている土地をどう活用するかということは大きな課題です。ただ、このあたりの舊商店街、舊道沿いの街中の通りは、営業している店舗が年々減少しているといった狀況です。新たに未利用の更地ができたとしても、そこをどう活用するかとなると、営業用店舗として開発という方向にはなかなか進まないという感じはあるのかもしれません。後継者がいればまた違うのでしょうけど、どうしても後継者の絶対數が少なくなってきているということも課題としてありますね。

若手経営者を支援し、地域の活性化の一助に

I:地域活性化、地域創生的な動きとしての活動はいかがですか。

M:若手経営者の方の勉強會を、事務所で主催しています。7~8人くらいの勉強會を2年ほどやっています。
今年は5S活動をメインテーマにしました。地域に5S活動で頑張っている製造業の方がいらしたので、その擔當の方にいろいろと指導してもらっています。5Sで利益を生むという思いで、整理整頓を含めてしっかりやっていらっしゃる企業です?,F場を見せてもらったり、工場見學をさせてもらったり、こんなことをやっているということを教えていただいています。

I:この建物自體、いわゆるベンチャーが集まるような、インキュベーションスタイルの建物になっています。

M:もともと、この建物は士業が集まって、ワンストップでサービスを提供できる施設を目指していました。司法書士、土地家屋調査士、社會保険労務士、稅理士が、それぞれの部屋に入って始業しました。そんな形でスタートしたのが20年前です。企業活動でわからないことがあれば、ヨコの連攜を取っています。ここを起點に、大きく巣立った人もいますし、そういう意味ではインキュベーションの役割も果たしています。

I:今後、若い経営者の方々が、先生の勉強會などを通じてノウハウを得ていただけるといいですね。

M:後継者がいらっしゃらないところも含めて、こうした若手の勉強會をもう少し拡大していきたいと思っています。公的な機関ではありませんが、その経営者の企業で雇用が1人でも2人でも増えてもらえればありがたいですし、地元の中で「會社頑張っているね」といわれる企業が少しずつ増えてくればやはり嬉しいですね。
目標としては、5~10人規模の企業を5社、10社、20社と、地元から立ち上げていく。10人規模の企業を立ち上げるにしても、業種業態によってはけっこう大変なものです。小規模の事業者だけどしっかりと地元に根差して企業活動ができる企業に、5人、10人の雇用を確保してもらう。それが10社、20社に増えてもらえれば、ある程度の雇用を確保することができます。そういった意味からも創業のお手伝いをしっかりと実踐する。それが結果として、地元経済の発展のために少しでも貢獻できることではないかと思っています。

増加する事業承継問題

I:中小企業の経営支援も積極的に行われています。

M:そうです。これからさらに積極的にやろうと思っています。いろいろな意味でのキャリアプランを含めた経営計畫です。

I:今、経営者が団塊の世代であることが多く、ちょうど世代交代に差し掛かっていると言われています。やはりこちらでも事業承継は多いですか。

M:多いですね。ざっと見て、後継者がいないところの割合が少しずつ増えてきている感じがします。以前はそんなにいるのかなと思っていましたが、実際に子どもさんがいても、跡継ぎではないということもあります。小規模企業では家族承継がほとんどです。そうすると、一緒に仕事をしていたはずなのに、子どもが都市部で就職してしまったり、地元にいても他の會社に勤めてしまったこともあります。お子さんと一緒にきちんとやっているところももちろんありますが、やはり後継者をどうするかという課題は多いですね。
たとえば、年配の方で、今は自分と奧様と2人、あとは外注先として2人くらい使っている方がいます。機械のメンテナンス業務を定期的にお客様のところに出向いてやっています。技術的な面では本人もしっかりしているのですが、それを伝えていく後継者がなかなかいません。小規模企業では、企業の価値が、社長そのものだったりするものです。技術力や昔からの経験など、それがあるから、メンテナンスもうまく滯りなく回っているわけです。その社長が引退するとなると、後継者を育てるのに時間がかかります。お子さんがいらっしゃらないので、外注の方をうまく使って後継者にしようとしていますが、その方もだんだん年齢が上がっています。
もちろん、うまく承継されているところもあります。お子さんがUターンで戻ってきて、後継者として社長に切り替わったところや1回外に出で修業した後継者が戻ってきたところもあります。
こうした後継者がいらっしゃるところでは、設備計畫や経営の強化、稅務的な対応、機械設備の導入など、現在の社長自身もよく考えていて、後継者への承継準備が著々と進んでいるようです。

農業、畜産業も法人化を支援

I:地域として、農業や畜産業の支援もされているのでしょうか。

M:農業でも、法人化というかたちでお手伝いさせていただいています。農業生産法人化するところもありますし、あとは、特殊なのですが農事組合法人というものがあります。これは稅法上の違いが若干あるのですが、協同組合的な法人です。そういった法人を地元で立ち上げるお手伝いをしています。
法人化すると、どうしても農地法の関係があるので、その範囲內でしか動けませんが、どう活用していくかがやはり大事です。後継者が農事組合法人を立ち上げたとしても、次の後継者が少ない中で立ち上げていくことになりますので、最初からすでに次の課題を抱えてのスタートですね。
しかし、その課題がある中でも、やはり労働を集約しないとやっていけません。いろいろな共同化をしてコストを下げて、うまく利益の分配ができるように仕組んでいければいいと思います。
収入面でのメリットがあることが重要だと思いますが、將來、そうした分野に現在農業を行っていない人が農業後継者として入ってきて、その方が農地を取得できるようになる。そのような仕組みができてきたら、後継者の問題も一部解消すると思います。本當に農業をやりたいと思っている若手の人が參入できるようになれば、もしかしたら集約もしやすくなるかもしれません。

畜産業の場合も、肥育農家が減り、出荷される牛の頭數も減ってきて、値段はある程度高止まりしている狀態がここ2年くらい続いています。畜産業の農家から相談を受けるのですが、ここでも後継者が問題なのです。なんとか利益も取れているのですが、後継者がいないところが多いです。その辺の仕組みをどうにかつくれないか、という思いがあります。
たとえば、設備の問題はあるのですが、和牛をやっている方を共同で1箇所に集めます。それを共同にして、法人化して人を雇い入れる。もちろん生物が相手なので様々な管理は必要でしょうが、出産のタイミングなど組織として効率よくうまく管理できれば、お米よりも、コンスタントに利益を上げられる分野だと思います。お米はブランド米をつくれば別ですが、単価は自分で決められません。そう考えれば、畜産業のほうがある程度コンスタントに収益を出せる仕組みがつくれると思います。

何でも相談いただける存在でありたい

I:今後のご予定、展望があれば教えていただけますか。

M:まず資産活用的なところでいえば、我々稅理士とスタッフがいるとしたら、スタッフがある程度情報をしっかり収集できる仕組みを作らないと、お客さんに対して様々な情報の発信ができないと思います。お客様と一番接點が多いのがスタッフです。スタッフがお客さんに対して資産活用の案件の情報の提供をする。そしてお客様から「こんなものがうちにあったけど、これどうなの?」「こんなものがあったから相談してみるか」というような情報の集約、収集できる仕組みを、自分たちの事務所にも作っていかなければならないと思います。
TKCの會員として考えると、そういった仕組みを福島県內の會員先生とその職員さんにうまく広げていけたら、職員も意識してお客さんからそういった情報を集約することができます。
そのために、福島県の資産活用委員會という立場としては、スタッフがお客さんにきちんと情報発信できる體制をつくっていけるよう、會員の先生方に情報を発信し、會員の先生からスタッフやお客さんに発信できるようにしていきたいですね。

もう1つは相続案件です。相続した物件をこれからどうしようかという相談が、増えてくるのではないかと思います。月次訪問をしているお客さんや毎回相談していただいているお客さんであれば、ある程度対応ができるのですが、ここ數年、特に相続稅改正後は、単発での相続の相談、亡くなった後で、計算したら基礎控除額を超えてしまった、超えそうだという相談が増えてきています。
本來であれば、相続する前に相談いただければ理想なのですが、相続後であったとしても、次のために提案できるかたちを事務所としてつくっていかなければなりません。
事前に、相続の相談をいただければ、その方が持っている財産もある程度はこちらで把握できますので、その中からうまく収益物件に変えられるものがあるのであれば、変えていきましょうという提案をしていきたいと思います。

I:オーナー様自身が、こんなことも稅理士さんに相談していいのか不安に思ったり、何を相談すればいいのだろうというレベル感の方もかなりいらっしゃると思います。そういう意味では、どんどん何でも出してくださいということですね。

M:そう思います。いろいろな方向からお客さんに対して提案できれば、取捨選択をしていくのはお客さんなので、必要だと思ったら「これはどんなことなの?」と聞いてくださると思うのです?!袱饯Δいà?、この間あんなことを言われたけど、もしかしてこれも相談していいのかな」と、次の段階でそう思ってくれるかもしれません。
まずは情報として、最低限のことを上手に伝えておく必要があると思います。それを伝えておいた中で、「気になることがあったから、電話してみるか」と思っていただくことが重要です。その時に何も伝えていなければ、別のところに相談に行くかもしれません。それがすごく重要な部分だと思います。

まずは相談していただける場所でありたいし、我々にも、相談できる場所としてダイワハウスさんがいるわけです。ダイワハウスさんに見てもらえるということは、相談者との間に入る私としては、すごく有りがたいことなのです。
件數が沢山あるかどうかはわかりませんが、スタッフが普段からそういう話を伝えておく。話があったときには、私たちにも相談する窓口としてダイワハウスさんがある。それ以外の分野でもTKCの提攜企業がいらっしゃいます。その間の相談窓口に我々がなって、結果、お客さんに対して役に立つ情報を返せればいいなと思っています。

I:まさに、この地域の産業を擔っていらっしゃるわけですね。

M:どこかでそんな形で接點を持っておきたいですね。建設業者や製造業者ももちろんそうですし、もう少し農業関係の分野で支援のためのノウハウを吸収して、しっかりと後継者が育つかたちができるよう、お手伝いができればいいと思います。
業種にかかわらず、創業支援や後継者育成といった分野で、我々ができるサポートをしっかりと実踐していきたいと思っています。田舎の事務所なものですから、地元の方との交流を大事にしてしっかりとやっていかないと、これから先は生き殘れないと思います。

I:貴重なお話しをありがとうございました。

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