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インタビュー 018
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稅理士リレーインタビュー 第18回 「経営者の相談相手として経営計畫を一緒に作成し、そこに気づきを與えていくのが我々の仕事。」 稅理士法人ジャパン?ビジネスパートナーズ 兵頭弘章様

公開日:2018/11/30

インタビュアー(以下I):以前から資産稅をメインで行われていたとお聞きしています。

兵頭(以下H):私は大阪時代から資産稅をメインでやっていたので、當然資産稅をやりたかったのですが、大阪から松山に帰ってきてすぐに地主様とお會いする機會もそうそうありませんでした。資産稅はスポットが多くてなかなかビジネスにはなりにくいので、まずは法人様とのビジネスを行ってきました。現在は、法人の巡回監査が柱で、それに醫療系と資産稅、三つの柱で行っています。

I:大阪で資産稅をやられていた時とこちらに帰られてからでは、やはり全く違いますか。

H:ロットも違いますし単価も違いますから全く異なりますね。こちらで資産稅中心にビジネスを行うには、地主のお客様をどれだけ増やしていくかということになります。
個人のお客様のメインとなるのは、相続対策、相続稅申告、所得稅の確定申告です。法人様からは毎月顧問料が入ってきますので、安定収入になります。そのうえで、地主様の數が増えることになれば、自ずと安定していきます。そのような仕組みを作らないと、資産稅だけでというのは地方では難しいと思います。中央ではある程度資産稅に特化されている事務所でも十分安定したビジネスができますが、地方ですと、資産稅だけでというのはやはり厳しいのではないかと思います。

スムーズに代が替わることが相続の一番の神髄

I:資産の活用や相続において、変化はありますか。

H:平成11年に開業した頃はインターネットが徐々に普及している段階でしたので、お客様が収集する情報は、そんなに多くはありませんでした。今では、皆さんスマートフォンですぐに情報を入手することができます。いろいろな知識を持たれている相続人が増えた印象です。権利者の情報を取るスピードが速くなったといえるでしょうか。ただし、皆さん、それが良い情報なのか悪い情報なのか分からずに収集されますから、結果どうなるかというと、昔よりも爭うことが増えているような気がします。相続といえば、家督相続のイメージがありましたが、そのイメージは薄れています。
揉めることが増えていくために、それに対応するように民法の改正などが行われるわけです。
たとえば、自筆証書の部分も、來年の1月からは財産目録などワープロでの作成が可能になります。不動産が10筆も20筆もあったら自筆では書けないわけです。今までと比べてかなり負擔が減ります。つまり、揉めごとが増えてきていますから、遺言も書いてくださいということです。インターネットで情報収集すれば、相続人は皆平等で、私も貰えましたといった情報が出てきます。そうすると、やっぱり私も貰えると思うわけです。だから、遺言としてきちんと遺さないと揉めごとがたくさん増えてしまいます。そういうところは徐々に変わってきていると思います。

I:遺言はお薦めされているのですか。

H:必ず書いてくださいと言っています。それでも書いていただけるのは10人中1人いたらいいほうです。「うちは大丈夫、うちは揉めない」といわれます。「揉めるか揉めないかは、あなたがいなくなってからの話なので」と言いますけど(笑)。日本は兄弟皆仲良しで、基本的に揉め事はないというイメージがありますが、増えています。
資産稅をされている先生方はご存知だと思いますが、節稅というより、まずはスムーズに代が替わることが相続の一番の神髄です。そこをきちんとやらないと、いくら節稅したからといって、稅金が安くなったからといって、財産がお子様に移らなかったら本末転倒です。そこを一番大事にしなければならないと常々思っています。

相続稅対策でも、賃貸住宅経営は建ててからが本來の事業

I:スムーズに移行したとして、先生は相続稅対策としてどういったものをお薦めされることが多いですか。

H:基本的には家それぞれで、家によって変わります。ただ、地方のお客様に農家さんで土地持ちの方が多いので、土地活用をしないといけないことになります。土地活用となると土地を活用するということですが、私はこのいい方には語弊があると思います。
土地を活用するだけであれば、駐車場でもなんでもいいわけです。そうではなくて、相続稅対策でなぜ土地を活用するのかというと、建物を建てて人に貸すから相続稅対策になるわけです。
要するに、建物を建てましょうという話です。土地の評価は松山であれば更地に比べてだいたい減額15%くらいです。それよりも建物の評価の差額が大きいので、土地活用という話になるわけです。地主様においては、まず建物を建てて評価の圧縮をすることが大きな一つの柱です。例えば、1億円のアパートやマンションを建てたとすると、簡単に言うと6000萬円くらいに評価が圧縮されるわけです。そう考えると、建物を建てて賃貸するということがまずは相続対策になります。
ただし、立地が良くないところは評価も高くありませんから、そういうところは置いておくしかありません。利用狀況が良いところだから評価も高いので、そこをどうにかしないとけないということになります。

I:都市によってはコンパクトシティー化によって中心に集まるなど、いろいろな施策を採っている自治體もありますが、松山での傾向などはございますか。

H:松山では今でも賃貸住宅や流通店舗などは郊外に出ています。中央付近は分譲マンションなどが多く、やはりまだ外に出てきています。

I:賃貸住宅をお薦めされるケースが多いのでしょうか。

H:場所によってはまだいけると思います。ただ、どこまでいけるかはわかりません。ですから、そこはプロの大和ハウス工業さんがデータを分析していただくなど、これからどうなるかについてはお任せするしかないと思います。安心してお薦めできるのは、やはりそうした背景があるからだと思います。
そもそも相続稅対策だけであれば、どの會社で建ててもいいんです。建てただけで評価額は下がりますから。しかし、相続稅対策でマンション経営や賃貸住宅経営をやるということは、建ててからが本來の事業です。安いからという理由だけで建てて、最初はいいかもしれませんが、5年後、10年後、20戸のうち10戸空いていたとしたら大変なことになります。
空室のリスクもありますし、修繕のリスクもあります。しかもそうしたリスクは徐々に大きくなっていきます。一番の問題は、そういったリスクをどうヘッジするかです。大和ハウス工業さんのような大手であれば、そうしたリスクヘッジがある程度は可能ではないでしょうか。
入居者が入らなかったら意味がない話ですから。

I:相続稅対策とはいえ、建物を建てる、そしてそれを人に貸すということは一つの事業です。そこをどれだけ理解して取り組めるかということですね。

H:そうなんです。やはり大きな買いものですから。リスクはどこまであるのか。例えば、今の家賃が10年後にはどうなるか、5%の下落なのか。そういうことを考えながら、ここまでだったら投資できるという判斷をしなければなりません。大和ハウス工業さんであれば、そうしたアドバイスをいただくことができます。

I:自分が持っている資産、特に不動産が今後どうなっていくのだろうとか。もう少し地方でもいけるのかなとか。いろいろな情報が錯綜している狀況だと思います。

H:実際にオリンピックが終わったら下がるかもしれませんが、20年後どうなっているかは誰にもわかりません。ただ、過去の今までの狀況を見た時に、ガクッと落ちた時でも問題なく。バブルの頃に比べたら、今は決して大変ではありません。東京オリンピックが終わったからといって、半分以下になるかといったらなりません。
ただ、過度に投資するのは禁物です。自分の狀況の適量の中でやらないといけません。例えば、相続稅をゼロにしたいからといって、建物をどんどん建てるのがいいかといったら、それは違います。リスクはやはりあります。ある程度の対策で納稅をしながら、いろいろな稅務対策を活用しながら、リスク分散をしましょうという話をします。何かあった時には土地を売ればいいわけですから。ただ、それが売れるかどうかは、これからまた時代が変わったときには分かりませんが。

I:代々資産を活用してきた方はもっと長期的な視野を持たれていて、今後どうやって資産を減らさないどころか増やしたい、投資をしたい、そんなご相談も多いと思います。

H:投資の場合は、中央に買いましょうといいます。もし新しくやるのだったら、松山で將來を考えるより、人口がそんなに減らないということを考慮して投資しませんかという話をします。
たとえば、大阪、東京、近ければ広島です。四國四県で日本全國のGNPの4%しかありませんからね。人口も広島市內だけで100萬人いますが、愛媛県で150萬人いるかいないかくらいです。ですから、広島市と愛媛県で良い勝負です(笑)。それだけ規模も違います。さらに、愛媛の中でも松山に集中してしまうということが出てきています。そこは問題にはなると思います。

社長が一番腹を割って話せるのが稅理士、會計事務所

I:企業オーナーの方には、具體的にどのようなアドバイス、サポートをされているのでしょうか。

H:我々がやることは、社長に気づきを與えることだと思っています。例えば、社長に対して、「來期はどういう計畫で、どういう行動をして、どうやって事業をやっていくんですか」とお聞きし、経営計畫を一緒に作成することで、そこに気づきを與えていくのが我々だと思うんです。
そうした経営計畫を作って、「じゃあ、社長これでいきましょうね」とお互い納得します。それで毎月お伺いさせていただいた時に、実際と予算との比較がどうなのか、立てた計畫どおりに進んでいるのかを確認します。まずそれをやっていかないとだめだと思います。
社長の頭の中を全部具現化して、數字に表して、社長が思っていたものと実際はどう違うかについて話し合うことです。
我々に経営コンサルティングはできません。例えば建築の社長に、この釘よりあの釘のほうがいいよとか、飲食店のオーナーに、刺身をこう切ったほうが売れますよ、なんていえるはずありません。プロは向こうですから。ただ、落ち著いて一緒に話をするのが我々の仕事であり、その數字がでたらめにならないように、毎月行ってきちっとした數字を出していく。それからスタートだと思います。誰も倒産したくはないですから。

I:そういう意味ではメンター的ですね。そうやって話せるパートナーがいるということは、お客様の社長も安心です。

H:社長が一番腹を割って話せるのが稅理士、會計事務所だと思います。我々が一番、企業の隅から隅までわかっているはずです。會社の裸を見ているはずなので、何かの時には相談相手として我々が一番にならないとおかしいのです。

金融機関とのパートナーシップを築き、お客様をサポートしていく

I:今年は事業承継の法律も変わり、やりやすくなったと聞きました。

H:やりやすくなったと思います。それに、認定支援機関が入ることになったので、それはかなりのメリットがあると思います。當然銀行も支援機関になっていますが、定期的に県に書類を提出していくことが銀行は難しいので、そこはやはり稅理士の先生方が擔っていかないといけないと思います。ただ、稅理士の絶対數からいうと、認定支援機関になられている先生はまだ少なく、3分の2はTKCの先生が支援機関になっています。
今回事業承継稅制が変わったことによって、認定支援機関でなければ出せなくなりましたので、一般の先生方も取っていくのではないかと思います。ただし、昔と違い今回は更新制度になりましたから、今後変わってくると思います。
そういう意味で今がチャンスなので、弊社のお客様にもそうですし、TKCとしても金融機関に「うちならできますよ」と発信していかなければなりません。今は毎月、お客様のところにいって情報発信を行っています。

I:先生は、金融機関とはどのような関係を築いていかれるのでしょうか。

H:基本的にはトライアングルです。本來は銀行と稅理士とお客様、これは必須です。しかし、今までそれができていませんでした。稅理士と銀行とお客様で一緒に経営計畫を作るとか、そういうことは一切なかったわけです。銀行からすると、出てきた決算書が本當に正しいのかどうか、銀行は稅理士を必ずしも全面的に信用しているわけではありません。ですから、そこを変えていこうと、TKCが銀行との協議會を開催しています。「我々はこういうことをやっています、われわれのやっている決算書は正しいです、この決算書を信用して融資をお願いします」という話を常にしています。まだまだ、我々の社會的信用が低すぎるので、上げたいと思っています。それは、銀行とタイアップすることが必要です。我々だけでは無理なんです。
もう一つ、我々は1人が擔當で持つ案件はだいたい20件くらいです。銀行は営業1人で中小企業100~150社くらいの擔當先を持っていますから、1人の営業が全部管理するのは無理だと思います。我々は1人20件くらいですから全部見ることができます。ここで公開しておけば、何かある時にはすぐにお客様を守れるし、次の対策を打つこともできます。そういう流れを作りたいというのが、今の動きです。本來の動き方をしたいということです。金融機関と敵対していたら、実現するのは難しいと思います。

I:貴重なお話、ありがとうございました。

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