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インタビュー 025
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稅理士リレーインタビュー 第25回 山中朋文稅理士事務所 所長 山中朋文様守るだけではなく、攻めの相続対策も活用しながら、相続爭いをこの世の中からなくしたいと思っています。

公開日:2019/08/30

地域の資産家の方々の「いざ」というときのニーズに応える

インタビュアー(以下I):平成25年に自由が丘で開業されてから、どのような業務を行われていますか。

山中(以下Y):基本的な業務內容は、中小企業の黒字化を目標にした、擔當者が毎月訪問する月次巡回監査と稅務業務です。また、世田谷という場所柄もあるので、資産家のお客様向けのサービスも充実していきたいと思っています。
自由が丘で開業したのは、大きな街で競爭するより、住まいがある自由が丘に密著して一番になりたいという理由です。しばらく自由が丘から離れる気はありません。
新しいお客様の開拓は、大きく分けて、士業の方からのご紹介、大和ハウス工業さんなど不動産業からのご紹介、保険會社からのご紹介が3本柱です。
また、近隣の方を対象にしたセミナーを開いています。先週も、賃貸住宅経営と駐車場経営のメリット、デメリットについてお話ししてきました。
ホームページからの問い合わせもありますが、口コミも大事です。私は稅理士の営業活動は広報活動だと思っているので、「自由が丘の山中は相続対策を得意としている」と紹介していただけるように努めています。、一度我々の事務所で申告され、サービスにご満足いただいたお客様からお知り合いをご紹介いただくケースも數多くあります。そういった輪を広げていきたいですね。

I:自由が丘という場所柄、資産家の方々からの相続や資産稅のご相談が多そうです。

Y:多いですね。ところが、土地をどうやって守ったらいいのか、相続対策をどうしたらいいのか悩んでいるのに、「うちの稅理士は確定申告だけで、相談に乗ってくれない」と感じている方がいらっしゃるようです。一方、稅理士は、確定申告の顧問料で、相続対策まで面倒みるのは割に合わないと敬遠することもあり、ニーズがかみ合わないことはよくあります。これは、地主様が稅理士のサービスに満足していないというより、稅理士がお客様のお悩みに親身に対応できていないのが原因だと思います。
ですから、稅理士に相談すれば、相続やその他のお悩みについて、生前に対策を取って解決できることがたくさんあるということを、一人でも多くの地主様にお伝えしたいと思っています。こういったお話しをすると、だいたい皆さん興味を持ってくださいます。セカンドオピニオンとして入ることを依頼されることもあれば、今の稅理士では物足りないからと顧問をお願いされることもあります。相続が発生した段階で、苦手意識からなのか、依頼を斷る稅理士は案外多いものです。実際、お亡くなりになった途端、相続はできないから他の稅理士を探してくださいと斷られて、私どもの事務所にいらしたお客様もいらっしゃいました。それでは、長年確定申告をお願いしていても、いざというときにはしごを外されて、路頭に迷ってしまいますよね。私は、いざというときにお客様を助けるのが稅理士だと思っていますから。

生前の対策で相続をスムーズに

I:相続対策をしていない方がこれから対策をする場合、何から始めるべきなのでしょうか。

Y:まずは財産調査をするため、現狀をお話しいただきます。相続稅がいくらになるかご存知かお聞きすると、約8割の方は分からないとお答えになります。殘りの約2割の方は、數年前に銀行や証券會社に調べてもらったことがある方です。資産には、現金や株式といった評価額がいくらかわかりやすいものから不動産まで、いろいろなものがありますから、大部分の方が、相続稅がいくらになるのか分からないのが現狀です。
現狀把握をした後は、そもそも相続稅が払えるかが問題になります。世田谷近郊のお客様は、不動産を多くお持ちでも保有現金が少ないということをよく聞きます。不動産を購入しすぎているケースもあります。稅務対策にはなりますが、現預金をもう少し殘しておかないと、いざ相続で分割するときに大変なことになってしまいます。納稅できなかったら結局不動産を売卻するしかありませんので、早急な対処が必要です。
納稅に問題がなければ、次はどのように分割するかです。お客様のご意見を聞いて、いくつか分割案を提案します。だいたい皆さん平等にしたいとおっしゃいますが、中には絶対に財産をあげたくない人がいることもあり、その場合はご希望に沿った対応策をご提案します。例えば、法人化をしたり、遺言や家族信託を利用したりすることで、継がせたい方に確実に財産が相続されるよう対策をとっていきます。

I:相続対策として、法人化や遺言、信託の利用が増えてきているということですね。

Y:増えてきています。以前にあった例ですが、ご両親が高齢で、5人兄弟の末っ子に相続をさせたいというご相談がありました。上のご兄弟の方々にさまざまな事情があり、親御さんは、財産を末っ子に継がせるしかないとお考えでした。しかし、口で言っているだけでは、亡くなった後に分割協議による話し合いが必要になってしまいます。また、話し合いをするにも、相続人に成年後見人をつけなければならないような狀況でした。そこで、末っ子の息子さんの名前で會社を作り、會社で建物を建てるという形をとりました。土地を擔保に建物を建てたので、あとは家賃収入で借入を返していけばいいだけです。土地の所有は父親のままにしておいて、家族信託で末っ子を受託者に指定しました。仮に父親が認知癥になったとしても、土地の処分から建物の管理まで、末っ子の方が全部一人で行うことができます。もともと持っている土地の活用で、最初は建物の建築も父親名義で進めていたのですが、入ってくる家賃収入はお子様たちの収入となるようにしました。遺言書も作って、相続は全て末っ子が引き継ぐことにしました。遺留分については、相続した現金で分けられるように手だてができています。
また昨今、親はもちろんのことお子様の代で、認知癥や病気といった問題が出ることも増えてきました。獨身の方やお子様がいらっしゃらない方も増えています。高齢化社會だからこそ必要な対応も今後増えていきます。
例えば、長男にも次男にもお子様がいない場合、両親の財産を長男が相続したのち、長男が亡くなると次は長男の奧様を経由して、奧様の家族に引き継がれていってしまいます。そうならないよう、長男が亡くなった後、次男に財産がいくようにしてほしいというご相談がありました。そのような形にするには、長男が相続した段階で遺言書を作成したり、養子縁組をすることもあります。父親が元気な段階でやるのであれば、家族信託を活用することもあります。
お子様のほうが先に認知癥になってしまうケースもあります。ですから、早めに手を打っておかないといけません。そのためのご提案をいろいろと行っており、現在では、ほぼ毎月1回のペースで、公証役場で遺言書を作っています。遺言執行まで、私と司法書士ですべてやっています。
相続稅を切り口にして、お父様のご意向を聞きながら、今抱えているリスクを全部洗い出し、一つずつ潰していきます。リスクの例として、不動産が一つしかないのに遺留分を主張されると、不動産を分けざるを得ないケースがあります。財産の大部分が不動産、しかもご自宅であるケースも多いですね。そういったご相談にどう対応するかが腕の見せ所だと思っています。

次世代の財産を増やすことが、攻めの相続対策となる

I:相続爭いを避けるため、親御さんにはどのような心構えが必要でしょうか。

Y:元気なうちに対策しましょう、ということに盡きると思います。親御さんも、できれば生きているうちに自分の意思を自分の言葉で伝えられたほうがいいですよね。一番いけないのは、死んだ後のことは子どもたちが勝手にやるだろうという考えです。子どもたちだけではできないことがあるのです。父親の意思があるのであれば、父親が率先して話し合いを持つべきです。父親の財産なのですから、責任をもって対策を立ててほしいと思います。まだまだ先のことと思わずに、親の意思、考えを、元気なうちに家族に伝えることが一番です。
遺言を作って家族が爭う爭族を起こさないようにすることに、昔から取り組んでいます。その際に私が心掛けていることは、親が持っているお金や財産を、子どもたちの代で増やしていくことです。父親の名前で建物を建ててしまうと、家賃収入は全て父親のものとなって高い所得稅が掛かり、さらに稅引き後のお金が相続財産になってしまいます。ですから、會社を作るなどの対策を行い、どんどん子どもの代に移転させます。子どもの會社にお金を移転させることは直接の稅務対策ではありませんが、そのお金を元に將來子どもが賃貸不動産を購入して家賃収入を増やしていけば、今度は子どもの財産が増えていきます。結局、相続稅対策というのは、手元に殘るお金を増やすことです。それと子どもたちの財産を増やすことは、同じ効果なのです。目先の稅務対策という守りだけではなく、今はむしろ、次世代の収入を増やすという「攻めの相続対策」に力を入れています。ご提案できている數はまだ少ないのですが、これから力を入れていきたいと思っています。
現預金をかなりお持ちで、お子様ごとに會社を作り、會社に不動産を持たせているお客様もいらっしゃいます。最初は親御さんのお金かもしれませんが、お子様の代で、お子様の會社で不動産を購入すると、不動産を持っていることが會社の価値になりますし、収入もある程度見込めるので、そうなると次の不動産を購入することができます。父親のお金を元手にして始まった不動産経営から生まれた、內部留保されたお金を元手に不動産投資を行うことで、どんどん子どもの會社を強くしていくこともできます。相続稅は10カ月以內の現金一括納付なので、もちろん納稅する現金はお持ちいただくことが大事ですが、その後は攻めの相続対策が有効です。
一方で、「先祖代々の土地は誰にも觸れさせない」とお考えになる方ももちろんいらっしゃいます。そういったお気持ちは尊重して、対策をします。ただ、それで現預金が回らないのであれば現実をお見せしないといけません。法定相続ですから、どのような財産があるのかを明らかにし、生命保険なども活用しながら、お金を作り出す必要があります。
將來、相続爭いをこの世の中からなくしたいと思っています。

I:相続人がいない土地や、そもそも相続人が誰もいないなど、社會問題になりつつあります。

Y:最近、一人暮らしで相続人がいないケースが増えています。1年以上前にあった例ですが、ご依頼者の親戚の方が、相続人がいなくて困っているということでした。その方は立派なお屋敷に一人暮らしの高齢者の女性で、面倒を見てくれている遠縁の親戚がいるのですが、相続権がなく、このままでは財産が國にいってしまうので、何とかしてほしいということでした。そこで、遺言から任意後見契約などの対策を行いました。家はいらないということだったので、最後は全部売卻し、現金にして相続するという內容の遺言を作成しました。売ることでの稅金、相続稅はかかるのですが、売卻の不動産手続きなど、面倒な手続きは全部私たちがやり、最終的には親戚の方に現金がいくようにしました。ご依頼者の體調の問題もあり、速やかに提案を行って、依頼を受けてから1カ月で遺言を作成しました。その半年後にお亡くなりになり、スピード感を求められる案件でした。
また、ある日突然、「○○さんはご存知ですか。あなたは○○さんのご相続人ですよ」という內容の書類がお客様の元へ區役所から送られてきたことがありました。聞いてみると、相続人の第一順位から皆さん斷ってきたそうで、相続財産の管理をお願いできませんかということでした。相続するにも困るような、売れない土地が全國にはたくさんあるのです。また、財産を引き継ぐ人がいない、身寄りのない方も今後ますます増えてきています。こういったことはこれから社會問題になっていくのではないでしょうか。行政も困っているようなので、私たちとしてもお手伝いしたいと思っています。

I:そのようなご活動が地域貢獻にもつながりますね。本日はありがとうございました。

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