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      コラム vol.399
      • 不動産市況を読み解く

      地方四市の地価上昇はいつまで続くのか?

      公開日:2022/04/28

      ここ10年弱の間、地価上昇が最も著しいのは、三大都市(地価公示では三大都市圏と表記)と呼ばれる東京?大阪?名古屋圏ではなく、地方四市と呼ばれる(地価公示での呼び方)札幌市?仙臺市?広島市?福岡市です。住宅地、商業地ともに、2014年以降、地方四市平均の地価変動率は、三大都市圏平均を上回っています。
      今回のコラムでは、地方四市の地価推移の分析と今後の予測をしてみたいと思います。

      2022年分地価公示の全國と三大都市圏の分析については「地価はどれくらい回復したのか?22年地価公示を読み解く」をご覧ください。

      地方四市の住宅地地価の推移と分析

      2020年以降の地方四市の住宅地地価平均変動率と各市の地価変動率は、下記図1のとおりです。

      図1:地方四市の地価公示(住宅地)変動率の推移(%)

      國土交通省「地価公示」より作成

      図1をみれば分かるように、地方四市は地価公示の公表では一括りにされていますが、各市の変動率の推移にはかなり違いがあります。
      変動率の大きい順に並べると、金融緩和が進められた2013年以降では、2019年までは、仙臺市→福岡市→札幌市→広島市の順がほぼ定位置となっていました(図2參照)。近年、地方四市の地価上昇がクローズアップされますが、広島市はプラス圏を維持しているものの、他の三市に比べて変動率の上昇は低水準です。
      2020年以降の変動率順位は、札幌市→福岡市→仙臺市→広島市の順が定著しています。特に札幌市とその周辺地域における住宅地地価上昇の勢いはすさまじく、2022年地価公示における住宅地の変動率地點ベスト10のうち、7つが札幌市周辺となっています。
      少し長期的になりますが2005年以降の推移を示したのが、図2です。

      図2:地方四市の地価公示変動率推移(住宅地)

      國土交通省「地価公示」より作成

      ミニバブル(2005年~2009年頃)と呼ばれた以降の地方四市の住宅地地価の推移をみれば、地方四市の中では札幌市が上昇?下落の振れ幅が最も大きいことが分かります。逆に、広島市が最もボラティリティが少ないようです。
      (注:仙臺市においては2011年に東日本大震災が発生したことによる影響がありましたので、考慮する必要があります。以下同様)

      地方四市の商業地地価の推移と分析

      2019年以降の、地方四市の商業地?地価平均上昇率と各市の地価変動率は、下記図3のとおりです。

      図3:地方四市の地価公示(商業地)変動率の推移(%)

      國土交通省「地価公示」より作成

      変動率の大きい順に並べると、金融緩和が進められた2013年以降では、2017年までは仙臺市と福岡市がほぼ並び、次いで札幌市→広島市となっていましたが、2020年以降は、札幌市と仙臺市がほぼ並んでいます。仙臺市については、上記のとおり東日本大震災の影響が少なからずあると思われます。

      図4:地方四市の地価公示変動率推移(商業地)

      國土交通省「地価公示」より作成

      2019年以降は福岡市が地方四市の中では変動率トップが続いています。「天神ビッグバン」と呼ばれる福岡市中心部?天神周辺の再開発計畫が次々に進められ、商業地地価上昇の起爆剤になっているものと思われます。
      住宅地と同様に、商業地においても地方四市の中では、広島市が最も低調な傾向です。新型コロナウイルス感染癥の影響が色濃く出た2021年の地価公示では地方四市の中で、唯一、商業地地価が下落しました。

      図2、図4の2005年以降の変動率の推移をみると、三大都市圏の地価でも同様ですが、住宅地よりも商業地の方が上昇率?下落率とも大きく変動しています。
      また、地方四市商業地の変動率は住宅地の変動率と似たような動き(=似たようなグラフ)になっていることが図2と図4を比較すると分かります。

      地方四市の地価上昇はいつまで続くのか

      地方四市を一括りにした今後の見込みはあまり意味がないと思われますが、地方主要都市部の地価の見込みを簡単に述べておきます。
      日本における地価上昇?下落は、三大都市→地方大都市→地方都市と続きます。また、上昇時には多少(1~2年)の時差がありますが、下落時の時差は比較的短くなっています。參考までに述べておくと、近年ではミニバブルと呼ばれた時期の上昇とその後のリーマンショックでの下落などがこの典型例です。また、下落に若干の時差があったのは、1980年後半のバブル期後の1991年以降の下落期で、都市部の下落基調が地方に伝播するのに、數年の時差がありました。
      こうしたことから、地方主要都市の地価は、三大都市の地価の行方を見ておけばある程度予測できるものと思われます。2023年の三大都市圏の地価見込みの詳細は、冒頭に記したコラム(地価はどれくらい回復したのか? 2022年地価公示を読み解く)に書いていますが、今年よりも地価の上昇率が上がるものと見込まれます。つまり、地方主要都市の地価も上昇率拡大の可能性が高いと思われます。
      個別に見れば、札幌市や周辺地域では、JR駅前などで再開発が盛んに行われています。大和ハウス工業においてもタワーマンションなどを開発していますが、こうした計畫はまだ続くようです。また、札幌市や周辺地域は北海道各地からの人口流入が続いており、こうしたことも地価上昇に拍車をかけて、2023年以降もしばらく、地方主要都市の地価上昇は住宅地?商業地ともしばらく続くものと思われます。
      福岡市についても天神ビッグバン計畫はまだまだ続きますので、商業地地価の上昇率が拡大する可能性は極めて高いと思われます。また、福岡市や周辺地域においても、札幌市と似た傾向にあり、九州全域からの人口流入が続いていますので、住宅地の地価上昇は続くでしょう。これら2つの地方主要都市の勢いは、當面続くと思われます。

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