
賃貸住宅経営は不動産事業(1)會社の「數字」に目を向けよう
公開日:2024/07/31
賃貸住宅経営は個人で行っている人が多數ですが、不動産賃貸業として法人で賃貸住宅経営を行っている人も少なくありません。個人にしろ、法人にしろ、賃貸住宅経営とは事業であり、経営的な視點が必要となります。特に法人として行っている人は、企業としての活動ということになりますから、賃貸住宅経営企業の社長としての観點で捉え、経営していく必要があります。
私が稅理士としてこれまでかかわってきた法人の中には、過剰な設備投資を行ったり、無謀な契約を結んだりして、経営がうまくいかなくなった會社が數多くありました。
その背景にあるのは、殘念なことに、會計がよくわからない社長が多いという事実です。
數字に強くないために、売上が上がったとき経費を使いすぎてしまうなど、會社を潰さないためのお金を堅実に蓄えていくことができる社長は多くありません。つまり、お金があれば使ってしまう社長が多いのです。これは、真面目な人でも陥ってしまいます。業績が好調なときに人の採用や設備投資を先に考えてしまい、あとで苦しくなってしまうのです。
社長は、會社経営のための考え方?知識を身につける必要がある
最近、起業する人たちに法人化の目的を聞いてみると、多くの人が「稅金が安くなるから」と答えます。
稅金を少しでも安くしたいと思う気持ちは理解できますが、「それを目的にするのは違うのではないか…」と少々殘念な気持ちも抱いてしまいます。このように考える人は売上をさらに上げるために、効率だけを上げようと考える傾向があるのかもしれません。
稅金を安くしたいと思っているということは、それなりに売上が上がっているのでしょう。本來であれば、売上が上がったら、將來のことを考え、予算計畫や経営計畫をつくるべきなのですが、効率を追求するあまり、無茶なことを要求しすぎてしまい、振り向いたら人は誰もいなかった…というケースは少なくありません。
會社がうまく回っていかないのは、社長として必要な知識が不足していることが大きな原因の一つです。実際、社長としての教育を受けている人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
いい社長になるためには、まず社長としてのお金に対する考え方や知識を身に付ける必要があります。従業員のときは會社からお給料をもらっていても、社長になれば立場が変わります。
たとえば100萬円の利益ができたとき、その100萬円をどのように配分すればいいのかをきちんとわかる社長は、決して多くはありません。
お金の考え方ができていない人は財産形成が難しく、會社が長く続くための盤石な財務基盤をつくることが難しくなります。社長としてやっていくためには、経営に必要な考え方や知識を身につけていかなければなりません。
會社のお金は、第三者にいつでも説明できる狀況にしておく
會計を學んだ人ならご存じとは思いますが、稅務上、法人と個人とでは扱いが異なる部分がたくさんあります。
たとえば減価償卻資産について、個人事業者は無條件に減価償卻をしなければいけないのですが、法人の減価償卻は任意となっています。つまり、減価償卻を行ってもいいし行わなくてもいい、自分で決めなさい、という決まりになっているのです。
大切なのは、融資を申し込んだ際の銀行の対応です。減価償卻はキャッシュが減らない費用ですが、費用計上した場合でも実際に利益がいくらあったのかを、計算しているはずです。そして、その後の資金繰りを考えたうえで、お金を貸すかどうかを判斷しています。
銀行がお金を貸してくれる會社は、対外的に見ても認められるよう、資産背景を含めて財務がきちんとしているものです。一方で、銀行からお金を貸してもらえない會社は、もともと返済能力がないか、もしくは過大に借りすぎているのかのどちらかに當てはまるでしょう。また、社長が自社の財務狀況をきちんと説明できない場合も、銀行はお金を貸してくれません。
そもそも個人にしても會社にしても、會計を正しく行っていないことが問題なのです。ある程度の會社であれば、社內に経理擔當者がいるものです。きちんとした経理擔當者、いわゆる番頭さん的な存在がいれば、たとえ社長からの依頼だったとしても、交際費の使用理由が正當でなければ、交際費として認めないでしょう。社長が私用でお金を使うことがまかり通るようでは、會社経営がうまくいくことは少ないでしょう。
個人事業主も、仕事のためのお財布と自分自身の個人用のお財布を一緒にするのは、いいことではありません。銀行を分ける形でも構わないので、個人用と仕事用をきちんと分けるようにしましょう。
銀行などの金融機関で資金調達できれば用は足りるのですが、それが厳しくなってしまったときに、社長の個人口座からお金を借りる形になってしまいます。もっとも、社長から借りなければいけないことがあっても、返済をきちんと行うならば、全面的に否定する理由はありません。
ただし、社長からお金を借りる狀態に陥らないようにするには、銀行から借りられる財務狀況を目指すことが大切です。
きちんとした企業なら、銀行もそれなりの融資枠を設けています。銀行も営利企業なので、きちんとした事業計畫や返済計畫があれば、自分たちの利益のために、お金を貸してくれるはずです。
「會社の財布は自分の財布」という感覚は、持たないほうがいい
會社と社長との個人的なお金の貸し借りも、どこかできちんと解消しなければいけません。なぜなら、會社だけにとどまらず、社長個人のB/S(貸借対照表)にも関わってくるからです。
問題は、「會社の財布は自分の財布」といった感覚になってしまう社長が多いことです。これが常態化すると、會社全體の財務がわからなくなり、會社のお財布も社長個人のお財布も混同してしまいます。
銀行が會社のB/Sを見るときにも、社長との個人的な貸し借りは指摘されやすいポイントです。社長から會社への貸付(社長借入金)があると、「會社の資金繰りを本気で改善する気があるのですか?いつまで社長から借入をしているんですか?早くきれいにしてください」と言われかねません。
この借入金は社長個人の相続財産になってしまいますので、もし會社とのお金の貸し借りがあるのなら、早いうちに解消しておきましょう。