大和ハウス工業株式會社

      DaiwaHouse

      “暮らす森”を知ろう

      自然と人がゆるやかにつながる、新しい暮らしのカタチ。
      阿蘇の草原を取り戻すため、暮らす森を支える人々の想い。

      左から 齊藤 剛様、谷口 聡志、松榮 寛

      『ASONOHARA(あそのはら)』の企畫?開発から現在に至るまで暮らす森 阿蘇に攜わっている本社スタッフの松榮、15年にわたり現地スタッフとして活躍する谷口(2021年より責任者)、社外の環境コンサルタントとして環境調査などを行っている齊藤様。3者それぞれの視點から、新街區ASONOHARAや草地再生エリアの開発にまつわる想いを語り合いました。(以下、敬稱略)

      自然活動を通じてフラッグシップ的な存在を目指す暮らす森?阿蘇。

      暮らす森と地域環境計畫さんがともに環境活動を行われるようになったきっかけを教えてください。

      松榮 『阿蘇一の宮リゾート』に『ASONOHARA』という新たな環境共生型住宅地を企畫?開発することになりました。當初は、木に囲まれた森林住宅地をイメージしていたのですが、実際に現地を訪れてみると、杉や檜の植林がそのままで地面に日が當たらない感じだったので、まずは木を切ろうということに。ただし、環境への影響を最小限にするために、他エリアでもお世話になっていた地域環境計畫さんにお聲掛けしました。
      擔當者の齊藤さんは阿蘇に縁が深く、せっかくならば生物多様性の調査を詳細にしてもらおうということになりました。

      齊藤 父の実家があったこともあり、阿蘇は馴染みのある場所でした。大學の時に、阿蘇の草原植物と昆蟲を研究し、就職後も環境調査などを通じてずっと阿蘇に関わっています。

      松榮 従來通りの分譲地ではなく、先進的な取り組みをしていこうと。阿蘇は『暮らす森』のフラッグシップとなる存在にしたいと考えていました。

      従來の地形を生かしながら時間をかけて整備。

      阿蘇の自然環境は何が特別なのでしょうか?

      齊藤 阿蘇は森林というより草原。私の中では、阿蘇=草原なんですよね。原生の植生というのはほとんど殘っていなくて、人々が昔から利用してきた、人と自然が共生してきた場所。

      谷口 阿蘇のそういった自然環境が多くの人を魅了するんだと思います。

      『ASONOHARA』を開発する際に、どんなことに苦労しましたか?

      松榮 まずは管理できていなかった植林を伐採し、齊藤さんに調査をしていただく中で、草原性の植物やカヤネズミの巣など、草原として価値のあるものを発見することができました。
      通常は無駄なく整地して道路を作ったりしますが、ここでは生物多様性に寄り添うことを何より大切にしました。
      従來の地形を生かしながら、時間をかけてひと區畫ずつ調整しました。

      谷口 水が流れる谷筋みたいなものがあって、そこに道路が乗っているようなイメージです。だから道路もまっすぐではなく、自然に折れ曲がっている。

      松榮 生物多様性の認証を取るという目標もあったので、方向性を地域環境計畫さんに逐一確認しながら進めました。
      初めてのことなので、分からないことだらけで苦労しましたね。

      谷口 『阿蘇一の宮リゾート』のオーナーさんにヒアリングもしました。「キレイに區畫整理された分譲地ではつまらないよね」とか「できるだけ1軒ずつの間に距離があって、どの土地にも端っこ感があるといいよね」など、いろんなお話を參考にさせていただきました。
      電柱の地中化もオーナーさんの発案なんです。

      松榮 最初は地上に電柱を立てる予定でしたが、途中で計畫を変更。工事擔當者も開発擔當者も本當に苦労して取り組んでいました(笑)

      草地再生エリアを含む新街區『ASONOHARA』

      自然と人が共生することで維持されてきた阿蘇の自然。

      『ASONOHARA』や草地再生エリアの自然環境について教えてください。

      齊藤 『ASONOHARA』には、環境省や熊本県の絶滅危懼種に指定されている植物がポツポツ…。希少なものはまだそれほど目立っていませんが、もっと改善されていくはずです。

      松榮 阿蘇の草原を保持するために、通常は野焼き(※1)をするんですけど、ここは住宅地。野焼きができないというのも大変で…。
      草刈りを年2回して、チガヤやススキが茂る草原を目指しています。野焼きよりも時間がかかるようですが、地道に取り組んでいるところです。

      齊藤 放っておくだけでは、キレイなチガヤやススキの草原にはなりません。
      自然と一口に言ってもいろいろな考え方があり、手付かずの自然というのも大事ですが、人が利用して、草刈りをしたり野焼きをしたりすることで維持されている半自然の狀態が阿蘇の自然。
      阿蘇では、少なくとも1000年前から人が自然を活用していることが分かっています。おそらくそれよりも前の文字がない時代から草原が利用され、人と自然が共生してきました。

      谷口 昔の人は、単に自然を守ろうとするのではなく、暮らしのために自然と共生してきたということなんでしょうね。

      住民と事業者が同じ目線で取り組む多彩な環境活動。

      『ASONOHARA』が目指す理想のカタチとは?

      松榮 『ASONOHARA』の環境への取り組みに終わりはありません。

      齊藤 私個人の理想としては、昔のように草原を活用することができればいいなと。
      暮らしが豊かになるような、楽しみながらできる活動が、自然を豊かにしたり維持したりすることにつながるという狀態になればいいですよね。
      谷口さんと活動している堆肥づくりは、その仕組み作りのひとつになっています。

      谷口 オーナーさんにも「続けていかないといけない」「続けたい」と無理なく自然に感じてもらえるようにしたい。齊藤さんがおっしゃるように、生活の足しになるような使い方ができれば良いと思います。
      刈った草をコンポストに入れて堆肥にしているのですが、もっと草の活用方法をオーナーさんと一緒に発見できれば。そして地域に広げていけたら。皆さんのお役に立てるのではないかと思っています。

      齊藤 オーナーさんは地元の方ではなく、外から來た方が多く、地元の人が気付いていない阿蘇の魅力にすでに気付いているんですよね。それが暮らす森のすごいところ。
      ワークショップを開催すると興味を持ってもらえるので、すごく可能性を感じています。
      ここでの活動を地域に広げていけたら、すばらしいですね。

      環境活動に対するオーナーさんからの反響はいかがですか?

      松榮 管理棟をリノベーションしてシェアサロンという形に変えたのが約1年前。同時に、オーナーさんや地域の方を対象にワークショップを開催し始めました。

      谷口 2年前から『暮らす森 阿蘇』の責任者を務めていますが、環境に関する取り組みを始めてから、オーナーさんとのリレーションがより強くなったように思います。
      今は我々が主導で活動していますが、少しずつオーナーさんが主となって活動が続いていくのが理想。「自然のパートナーは、ここに暮らすわたしたちみんななんだ」ということを伝えていきたいです。

      阿蘇を移住先に選んだ理由をオーナーさんに聞くと、「自然」と答える方がほとんど。しかも、草原にひとめぼれしたという人が意外と多いんです。
      遠くにはきれいな山が見えて、草原を散歩でき、牛も放牧されている。こんな土地はなかなかありません。

      齊藤 ワークショップでは、皆さんが熱心にメモを取りながら聞いてくださいます。
      以前、Bee Hotelを作成したのですが、蜂の巣の內部を公開した時に、參加者の中に「幼蟲がモコモコしていてかわいい」とおっしゃっている方がいて。我々と価値観が非常に近いなと感じました(笑)

      松榮 蜂のホテルを作るのに人が集まるのか!?と心配したんですけど。

      谷口 なんと、定員をオーバーしてしまいました。ワークショップ後に、Bee Hotelを自作して、庭に置いているオーナーさんもいらっしゃいます。
      環境活動を通して、自然への想いが浸透しているなという実感があります。野草堆肥の作業も、「言ってくれたらやっておくよ」と聲をかけてくださったりもして、頼もしいです。

      オーナーさんとの関係づくりで意識されていることはありますか?

      谷口 特別なことは何もしていませんが、あいさつや聲かけといった基本的なことを大切にしています。日常的にコミュニケーションを取る中で、お困り事の相談を受けたり、それに対してできるだけお応えできるよう動いたり。その繰り返しですね。ご近所さんのようにお付き合いさせていただいています。
      環境の取り組みは、誰にとっても平等に価値があるもの。立場を超えて、フラットな関係になれる重要なツールなのかもしれません。

      地域や次の世代へとつながり広がる、暮らす森の想い。

      暮らす森の今後の展望を教えてください。

      谷口 みんなが寄り添いながら、楽しく過ごせるまちになればいいなと思います。
      今はワークショップなどの活動を我々が企畫して提供していますが、今後はオーナーさんにリーダーシップを取っていただき、必要なところをサポートするとか。オーナーさんにも発信していただきたいです。
      また、リゾート外の地域の方との交流もしていきたいですね。住人だけでなく、ご近所さんや地域の子どもたちにも活用してもらえるような場になればと思っています。

      松榮 子どもたちや孫たちが「ここに住みたい」と思えるような環境を殘していくことが、自分たちの仕事なのかもしれないと思っています。住み続ける場所として、選んでもらえるような場所になることを目指していきたいです。

      齊藤 私の祖父の家が阿蘇にあり、庭いじりをしたり、鶏を飼ったりしながら生活していたのですが、子どもたちが家を離れ、高齢になって施設に入ってしまいました。自然が殘る恵まれた環境で、庭いじりをしながら最期まで住み続けられる場所になればいいですよね。
      2人の話を聞いて、草原の活動と暮らしがゆるやかにつながり、子ども世代や孫世代といった新しい世代が訪れたくなる、住みたくなるような場所になればどんなにすばらしいだろうと思いました。 田舎ではそういった暮らしが難しくなっているので、これからの時代の新しい暮らしの形になったらいいなと思います。

      ※1 野焼き
      毎年春分前後(最近は2月末?4月はじめ)に行われる。枯れ草や低木類を焼卻除去することで、草の芽吹きを促し青々とした草原を維持するために長年行われてきた、伝統的な作業。

      話者紹介

      • 株式會社地域環境計畫
        自然環境研究室 主幹

        齊藤 剛
        草原の植物調査や植生図作成、保護林の設定やモニタリング、環境アセスメントに関わる動植物調査など、自然や生きものに関する調査に長く攜わる。主に植物分野を擔當。最近では、生物多様性地域戦略の策定や『ASONOHARA』の取り組み、小學校での草原學習など、調べた情報をもとに、自然と共生する地域をつくるための業務を擔當。
      • 大和ハウス工業株式會社 本社
        森林住宅地管理運営部
        施設運営グループ グループ長

        松榮 寛
        1997年大和ハウス工業株式會社入社、住宅設計をはじめ分譲地の企畫を擔當。より幅広い街づくりに攜わる機會を求めて社內公募制度で東京都市開発部へ異動。街づくり全般に攜わる中で、『ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート』の新規開発エリア『ASONOHARA』を企畫。その後、森林住宅地管理運営部へ異動し、各地の森林住宅の企畫を擔當している。
      • 大和ハウス工業株式會社
        森林住宅地管理運営部
        統括運営グループ(阿蘇駐在) 主任

        谷口 聡志
        2008年大和ハウス工業株式會社入社、入社より森林住宅地の販売を擔當。現在も擔當している阿蘇へ勤務して16年目を迎える。現地の責任者として「住み続けられる、住み継ぎたい街づくり」をテーマに、住民であるオーナーとコミュニケーションを図る中で分譲地の課題解決と未來に向けての環境づくりに攜わる。

      ここまでの寫真はすべて 
      撮影:ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート(2023年5月)

      ライター
      クラモト マオ

      広島県福山市在住。瀬戸內をベースに、雑誌、フリーペーパー、Webメディアなどさまざまな媒體で活動中。食べること、食を求めて旅をすること、食にまつわる本を読むことが好き。新たな人との出會い、食との出會いがあるならば、野を越え山越えどこまでもー!

      INTERVIEW:2

      地域を知り、自然に親しむことが環境改善につながる
      ASONOHARAならではの自然活動への取り組み。

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