「砂漠のバラ」と呼ばれる多肉植物のアデニウム。
海外の秘境とも言える場所に、植物を探しに行くことも。

寫真提供:そら植物園

オーストラリアで採取したボトルツリー。その幹の形狀がボトルの形に似ているためにそう呼ばれている。

寫真提供:そら植物園

―― その土地に足を運ばないと本來の魅力は伝えられないのかもしれません。価値のある植物を見つけるコツは?

情報は世界中から入ってくるので、価値を見分ける目利きである必要があります。いくら苦労して秘境にたどり著いても、珍しい植物かどうか見分ける力がないと意味がない。日本では価値が高くても、現(xiàn)地では「こんな木を欲しがるのか?」と不思議がられることもあります。

最近では海外でも私の存在を知られるようになったおかげで、大使館を通じて「こんな植物があるんだけど?」という打診もいただくので、この5年間やってきたことがようやく実を結(jié)んだという手応えを感じています。

―― 「花宇」の5代目として伝統(tǒng)をどのようにつなげているのでしょうか。

曾祖父は促成栽培を日本で初めて成功させた先駆者。小石川植物園や新宿御苑くらいにしか溫室がない時代に、桜の開花をコントロールする技術(shù)を確立したんです。現(xiàn)在ではどんな時期にでも様々な花を楽しむことができますが、それは促成栽培技術(shù)が一般化したおかげ。こういった先祖の存在は大いに刺激になります。

人の文化は、単なる點ではなく線のようなものだと思うんです。その時代に合ったアイデアを考え、今まで積み重ねてきた経験と融合させることで、點と點がつながり線になる。意図しなくても結(jié)果的に伝統(tǒng)として継承されるのではないでしょうか。

―― 「そら植物園」の活動が始まって5年になりますが、変化を感じることは?

手前味噌ですが、植物のファンは確実に増えていると実感します。また、日本の植物は海外でも注目されており、2016年3月には日本とシンガポールの國交樹立50年を記念した桜の花見イベント「Gardens by the Bay(ガーデンズ?バイ?ザ?ベイ)“Blossom Beats”」を手がけました。

「花宇」で代々培ってきた開花調(diào)整の技術(shù)を活用した展示は、世界的な植物園である「Gardens by the Bay」に、週末だけで2萬人以上が押し寄せたほど。リー?シェンロン首相も視察に來られ話題となり、2017年3月にも「“Blossom Bliss”」というイベントを開催しました。

植物の本質(zhì)的な魅力を伝えるという、「そら植物園」の思いが海外へも広がっていくのはうれしいですね。

2012年、シンガポールの植物園「Gardens by the Bay」で行った日本との國交50周年を記念する桜のイベントも西畠さんが手がけた。

寫真提供:そら植物園

サステナブルな社會のためにできることは、植物のファンを増やすこと

―― 植物は自然環(huán)境の代名詞でもありますが、人は今後どのような共存関係を植物と築くのでしょうか?

植物が光合成で酸素を生み出さなければ、我々は息をすることもできません。また、植物は人と人とをつなぐコミュニケーションツールとしての力も圧倒的で、音楽やダンスのように、年齢や性別はもちろん、國や人種を超え、言葉が通じなくても美しさを共有できる。

だから、植物を介してできることは無限にあると思うんです。その一方で、生け花を愛でることは、植物の命を奪っていることになるので、自然破壊をしている側(cè)面もあります。

―― とは言え、植物を身近に置きたいという欲求には人間らしさを感じます。

そうなんです。花を愛でる気持ちは、人間の根源的な欲求なので否定したくはありません。だから自分の使命は「植物を好きになってもらうこと」だと考えるようになった。

「自然保護活動の父」と呼ばれるジョン?ミューアは、カリフォルニアのヨセミテ渓谷にルーズベルト大統(tǒng)領(lǐng)を招いて數(shù)日キャンプを楽しんだそうです。自然の魅力のとりこになった大統(tǒng)領(lǐng)は「ここを守りたい」と考え、その理念が國立公園制度の基礎(chǔ)となり、現(xiàn)在の環(huán)境保護の概念として世界中に広がりました。

この話を聞いたとき、たった一人の體験から生まれた愛情は、世界を守る原動力になると感じた。自分の會社はまだ小さいので、CO2を大幅に削減するような社會貢獻は難しい。だからこそ、「そら植物園」の活動を通じて植物のファンを増やす存在になろうと。

そのためには花の開花だけでなく、育て、運び、飾るという植物の生命の循環(huán)をわかりやすく発信し続け、一人でも多くの方に植物を好きになってもらえる仕組みを考えていきたいと思うんです。

文章:杉山元洋 寫真: 長谷川靖哲

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