
CREコラム
不動産証券化のトレンドを追う第5回 自動バレーパーキングで駐車場が変わる?
公開日:2017/05/22
夢の乗り物といわれる自動運転車の実用化が加速しています。究極の安全運転を目指して普及すれば、交通事故低減や高齢者の移動支援などにもつながり、社會的メリットは測り知れません。自動運転車の商業(yè)運行を目指して進んでいる実験のひとつに、自動バレーパーキングがあります。実用化されれば、不動産としての駐車場に大きな変化をもたらすといわれ、駐車場業(yè)界も大きな関心を寄せています。今回は、自動運転車の話題に觸れながら自動バレーパーキングについてお話します。
自動運転車の実現で3つの実験が進行
21世紀に入り、自動運転車はITの急速な進展とともに一躍腳光を浴びています。2010年に無人で動く「グーグルカー」が出現して以降、歐米各地で走行実験が実施されるようになり、完全自動運行までの道のりは10年を切ったといわれています。
自動運転車に関してはこれまで、運転技術の高度化よりも、無人で走らせる道路のインフラに課題があるとされてきました。しかしセンサーが高性能化し、GPS(全地球測位システム)が精度を上げ、AI(人工知能)が発達してきたことで無人走行の障害リスクが低減しました。自動運転車は夢の乗り物でなく、もう少しすれば手の屆く乗用車になっているのです。
我が國では2014年から自動走行の実現を目指した國の指針である「官民ITS構想?ロードマップ」が策定され、実用化に向けて大きく動き出しました。そして2015年、2020年の東京五輪開催が決まったことで、自動運転車の商業(yè)運行は、早ければ2020年からと前倒しの目標になっているのです。
自動走行は走行レベルによって4段階に分けられています。現在進められている実証実験は、(1)隊列走行(2)バレーパーキング(3)ラストワンマイル走行―の3つです。
自動走行の定義
分類 | 自動化の狀態(tài) | システム | 事故の責任所在 | 走行事例 |
---|---|---|---|---|
レベル1 | 加速?操舵?制御のいずれかをクルマが行う狀態(tài) | 安全運転支援システム | ドライバー責任 | 緊急自動ブレーキ |
レベル2 | 加速?操舵?制御の複數の操作をクルマが行う狀態(tài) | 準自動走行システム | 隊列走行 | |
レベル3 | 加速?操舵?制御をすべてクルマが行い、緊急時のみドライバーが対応する狀態(tài) | システム責任(自動走行モード時) | ||
レベル4 | 加速?操舵?制御をすべてドライバー以外が行い、ドライバーが全く関與しないシステム | 完全自動走行システム | システム責任 | ?バレーパーキング ?ラストワンマイル |
出典:官民ITS構想「ロードマップ2016」などをもとに作成
隊列走行は、高速道路上で3臺以上のトラックを電子連結させて自動走行させます。ただし、先頭車両には運転者が乗車します。ドライバー不足の昨今、運転手1人當たりの輸送力向上に期待がかかっています。ただ、數百臺以上の商用車両を保有する業(yè)者でなければ隊列走行の恩恵にあずかれず、中小業(yè)者の多い國內輸送業(yè)界では早期実現は厳しいとの聲もあります。
バレーパーキングは、ホテルなどで見られる駐車サービスの自動化版。離れた場所にある駐車場まで無人で移動できるので、観光地やショッピングセンターといった商業(yè)施設は駐車所を併設する必要がなくなり、街づくりに大きく寄與するといわれています。
ラストワンマイル走行は、過疎地における高齢者の移動支援手段として注目されています。ラストワンマイルはもともと、インターネットの敷設で加入者と基地局の距離を指す言葉で、サービスが顧客に屆くための最終區(qū)間という意味です。年々交通網が劣化する過疎地で高齢者の足代わりとして低速バスの自動運転が想定されています。
不動産の有効活用で期待されるバレーパーキング
3つの実証実験のうちで社會的影響が大きいと思われるのは、自動バレーパーキングではないでしょうか。というのも、自動運転が普及すれば、クルマを所有する必要性が薄れると見られているからです。無人で動くならば、例えばスマートフォンを操作してレンタカー會社に連絡し、好きな時に必要な場所まで呼び出して借りれば済みます。近年増えているカーシェアリングの拡大にもつながるでしょう。
所有しないとなれば、個人で駐車場を所有する必要もなくなります。駐車スペースが各地で減少し、土地の有効利用が広がる可能性が出てきます。都市計畫にも異変が起きるでしょう。例えば、スーパーマーケットは売り場から離れたところに駐車場を作ることも可能で、出店コストの低減につながります。自動運転車の発展によって、自動バレーパーキングが実現すれば、従來の駐車場スペースが他の用途に転用され、不動産の有効活用が拡大すると思われます。
駐車場が抱える問題への解決
自動バレーパーキングは、完全自動走行となる「レベル4」で初めて実用化されるので、早くても2020年以降。不動産としての有効活用も、長い目で見る必要はあります。ただ、その普及過程では、車両事故の3割を占めるといわれる駐車場での事故低減に寄與することは間違いありません。
専用駐車場で自動バレーパーキングが実現すると、(1)事故が減少する(2)スペースが有効活用できる(3)混雑が緩和される―などのメリットがあります。
自動走行の車だけが自動バレーパーキングの専用駐車場に駐車するので、そこには一般の車や歩行者は存在しません。そのため人身事故や車同士の接觸事故は基本的になくなります。今後の法改正(駐車場法)を伴いますが、無人の駐車場ですから従來の駐車、乗降スペースを狹くすることができ、スペースを有効活用できます。また、ショッピングの帰りなど駐車スペースを探し回ることがなくなり、「乗車待ち」の混雑は解消されます。
歐米の自動車メーカーではすでに自動駐車システムを搭載した新型車を開発しています。なかには、スマートフォンなどの攜帯電話で車両を駐車させる無線操作システムもあるようですから、完全自動化の前に、スマホによる半自動バレーパーキングが実現する可能性もあるかもしれません。
現在駐車場が抱えている課題に対して、自動バレーパーキングは一定の解決策を持っているということを認識しておく必要があるでしょう。