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コラム vol.264-4
  • 土地活用稅務コラム

稅の仕組みを知れば、もっと土地活用は面白くなる(4)集合住宅のバリアフリー化と稅について

公開日:2019/03/29

POINT!

?自己所有物件、集合住宅のバリアフリー化を後押しする優遇稅制がある

?今後、住宅における高齢者対応のニーズは高まるだろう

國や地方自治體でも、超高齢社會に備えて、 高齢化住宅に対する施策を進めています。國や 自治體が求める社會的なニーズに対応して、そ れに応じた投資を行うことで、稅制面などでの恩 恵を受けられる可能性が広がり、結果として投 資コストの軽減につながります。ぜひ、こうしたポ イントを押さえて、國や自治體の求める社會的な ニーズを上手に活用してはいかがでしょうか。

自己所有物件へのバリアフリー改修工 事を行った場合の優遇稅制

まずは、自己所有物件へのバリアフリー改修工事について考えてみたいと思います。私には、一人暮らしをする98歳の祖母がいます。ただ、體も弱くなり、今の家に住み続けても何かと不便なので、それ相応の設備が整った施設のほうが良いのではないか、もしくは面倒をみられる家族と同居をしたほうがよいのではないか、という悩みを抱えています。祖母にとって、そうしたサービス付きの施設に入ったり、家族と同居をしたりすれば、さぞかし生活が楽になるだろう、と考えてしまいがちですが、高齢者にとって、生活環境を変えるのは、想像以上に負擔が重いようです。何よりも新しい環境で生活を始めようという気持ちが動かないようです。このように同じ悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。
そこで、こうした住環境の変化がおっくうになる前に考えたいのが「老後に向けたバリアフリー化」です。今の住環境のまま、老後に備えて住みやすい家にカスタマイズ?改修をするというものです。何十年も同じ家に住み続けるのであれば、體や気持ちが動くうちに、その時々に合わせてカスタマイズ?改修をしていくのは非常に大事なことです。國や地方自治體の稅制では、こうしたバリアフリー化を國民の自助努力によって整備できるように、社會政策的にさまざまな優遇稅制が設けられています。

(1)(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

返済期間が5年以上の住宅ローンを利用して、自分の住んでいるマイホームを所定のバリアフリー仕様にするためにリフォームをすると、特定増改築をした場合の住宅借入金等特別控除が利用できます。通常の新築や既存(中古)住宅のローン控除の場合は、10年以上の借入期間という要件がありますが、リフォームの借り入れの場合は、借入金が多額にならないため、借入期間が10年未満のケースが多いです。そこで、5年以上の住宅ローンであっても住宅借入金等特別控除が利用できるようになっています。その制度を「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」といい、內容は以下の通りです。

既存住宅を特定改修した場合の稅額控除

居住年 対象ローン殘高 控除対象限度額 控除期間 最大控除額
2021年12月31日まで 1000円萬以下 2%(一定のバリアフリー改修工事にかかる借入金で250萬円まで) 5年 62.5萬円
1%(上記以外工事に係る借入金)

(2)投資型減稅

高齢者や要介護?要支援認定者、障がい者本人、またはそれらの人と同居する人が自ら所有し居住する住宅のバリアフリー改修工事を行ったときに使える制度です。一定のバリアフリー改修工事を行った場合、控除対象限度額を上限として、その控除対象額の10%の控除を受けることができます。この減稅は住宅ローンの借り入れの有無にかかわらず、自己資金によってバリアフリー改修工事を行った場合でも適用が可能です。

バリアフリー改修工事の投資型減稅の概要

適用期間
(改修後の居住開始日)
控除期間 控除対象限度額 最大控除額
2021年12月31日まで 1年間 200萬円 20萬円※
  • ※消費稅8%または10%が適用される場合の金額であり、それ以外の場合は15 萬円

(3)固定資産稅の軽減措置

2020年3月31日までの限定措置として、築後10年以上経過した住宅について、一定のバリアフリー改修工事を行った場合、その住宅にかかる固定資産稅(100m2相當部分まで)の稅額が以下の通り減額されます。

住宅のバリアフリー改修工事の固定資産稅の減稅措置

適用期間 減稅期間 控除対象限度額 備考
2021年12月31日まで 工事完了の
翌1年度分
固定資産稅額
の3分の1を減額
1戸あたり100m2相當分までを限度

(4)贈與稅の非課稅措置

通常、年間110萬円を超える贈與を受けた場合には贈與稅がかかりますが、父母等から自己の居住の用に供する住宅の新築もしくは取得、またはバリアフリー化やリフォームを含めた増改築等のための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます)の贈與を受けた場合においては、下記の金額までの贈與について非課稅措置が設けられています。

(a) 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費稅等の稅率が10%である場合

契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日 3,000萬円 2,500萬円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,500萬円 1,000萬円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,200萬円 700萬円

(b)上記以外の場合

契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2016年1月1日~2020年3月31日 1,200萬円 700萬円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,000萬円 500萬円
2021年4月1日~2021年12月31日 800萬円 300萬円

集合住宅へのバリアフリー化、他

次に、賃貸事業に係る賃貸住宅やマンション等の集合住宅へバリアフリーの設備投資を行った場合、並びに高齢者向け賃貸住宅投資の有用性について考えてみたいと思います。
住宅へのニーズはライフスタイルの変化とともに変わるため、賃貸住宅にお住まいの方にとっては、その時々に求める住環境に応じて住まいを変えられるという利點がありますが、歳をとってから最終的に住宅に求めるのは、生活するうえで障害の少ないバリアフリー化された住環境であり、マイホームにお住まいの方が住宅に求めるニーズと何ら変わらないのではないでしょうか。
賃貸事業を行っている貸主としては、今後、こうした借主のニーズに応じた住宅環境の提供が求められると思います。最近は、少子高齢化を背景に賃貸住宅?マンション投資についてネガティブなイメージを持たれている方がいらっしゃいますが、逆に今後の超高齢社會のニーズをくみ取って、賃貸住宅?マンションにバリアフリー化の投資を施したり、高齢者向け賃貸事業へ投資をしたりすることは、非常に大きな武器になるのではないでしょうか。

(1)助成金支援制度

各自治體によって助成金を受けるための要件や助成內容は異なりますが、多くの自治體で、集合住宅の共用部分のバリアフリー改修工事を行うと、費用の一部を助成する「共同住宅バリアフリー化支援事業」を行っています。
一例までに、東京都港區の支援事業をあげてみます。(東京都港區HPより引用)

要件
  • (1) 區內に存する共同住宅で、分譲住宅又は今後も優先的に高齢者を居住させる賃貸住宅
  • (2) 65歳以上の高齢者を含む世帯が居住世帯全體の25%を超える共同住宅
  • (3) 延べ床面積のおおむね2分の1を超える部分が居住の用途に供されている共同住宅
  • (4) 公的賃貸住宅以外のもの
事業の詳細
  • a 出入口?廊下等の段差解消70萬円
  • b 出入口?階段?廊下等の手すりの設置70萬円
  • c 床のノンスリップ化70萬円
  • d 段差解消機の新設800萬円
  • e エレベーターの新設2,000萬円
  • f 既存エレベーターのバリアフリー化改修300萬円
  • ※a~fの工事を組み合わせて申請することもできますが、助成を受けた工事については、受給後5年間は同一工事で申請できません。
  • ※工事著工後の申請については、助成対象外となります。

工事費用と上記の限度額のいずれか少ない額の2分の1が助成されます。
賃貸事業を行っていてバリアフリー化を検討されている方は、ご自身が保有する不動産の所在する自治體の情報を集めてみてはいかがでしょうか。

(2)サービス付き高齢者向け住宅供給促進稅制、、他

日本における高齢者住宅事情は、諸外國に比較して不足しているのと、賃貸住宅で自力だけで生活することへの不安、また、本來は高齢者住宅で対応可能な要介護度の低い高齢者でも特別養護老人ホームの申し込みとなっています。こうした狀況等を踏まえ、高齢者生活支援施設を併設するサービス付きの高齢者向け住宅を推進させる施策が行われています。
高齢者が安心して暮らせる住宅の供給を促進することを目的に「サービス付き高齢者向け住宅」に係る稅の特例措置が今年の稅制改正によって2年間延長されることになりました。

固定資産稅

適用期間 內容
2021年3月31日まで 5年間稅額について2/3を參酌して1/2以上5/6以下の範囲內において市町村が條例で定める割合を軽減
(一般新築特例は1/2軽減)固定資産稅額の3分の1を減額
要件
  • (1)床面積:30m2以上/戸(共用部分含む。一般新築特例は40m2以上/戸)
  • (2)戸數:10戸以上
  • (3)補助:國又は地方公共団體からサービス付き高齢者向け住宅に 対する建設費補助を受けていること
  • (4)構造:主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること等

不動産取得稅

適用期間 內容
2021年3月31日まで 家屋課稅標準から1,200萬円控除/戸(一般新築特例と同じ)
土地家屋の床面積の2倍にあたる土地面積相當分の価額等を減額(一般新築特例と同じ)
要件
  • (1)床面積:30m2以上/戸(共用部分含む。一般新築特例は40m2 以上/戸)
  • (2)戸數:10戸以上
  • (3)補助:國又は地方公共団體からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
  • (4)構造:主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること等

また、融資の面においても「サービス付き高齢者向け住宅」として登録を受ける賃貸住宅の建設、改修に必要な資金、または賃貸住宅とする中古住宅の購入に必要な資金の貸付制度を住宅金融支援機構が支援しています。
このように、今後はマイホーム並びに賃貸住宅投資関連においても、高齢者対応へのニーズが間違いなく高まるでしょう。また、國や地方自治體においても、それを支援するような施策が進められています。國や自治體の求める社會的なニーズを上手に活用して、バリアフリーや高齢者向けの対応を念頭において投資を検討されてはいかがでしょうか。

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