土地活用ラボ for Owner

コラム vol.341-4
  • 賃貸住宅経営のポイント

「所有者不明土地」関連法改正の行方(2)所有者不明土地を“減らす”

公開日:2021/02/02

前回のコラム「(1)所有者不明土地になることを“予防する” 」では、今後予想される「所有者不明土地」に対する3つの施策のうち、“予防する”點から考えられることをお伝えしました。 今回は、2つめの視點:所有者不明土地を“減らす”ことについて紹介します。

所有者不明土地を“減らす”ために、土地所有権の放棄を可能にする

土地の所有意識にも変化が見えています。
國土交通省「令和元年度土地問題に関する國民の意識調(diào)査」によると、「土地は預(yù)貯金や株式などに比べて有利な資産であるとお考えですか。」という問いに対して、「そう思う」と答えた人の割合が27.1%、「そうは思わない」と答えた人の割合が45.3%、「どちらともいえない」と答えた人の割合が21.4%となりました。過去の調(diào)査結(jié)果と比較してみると、「そう思う」と答えた人の割合は前年度から5.5ポイント低下し、はじめて30%を下回って過去最低となった一方、「そうは思わない」と答えた人の割合は前年度から5.9ポイント上昇し、過去最高となっています。

(図1)土地活用は有利な資産か

國土交通省「令和元年度土地問題に関する國民の意識調(diào)査」より作成

実際、相談をお受けしていても、年々、空き家や空き地を手放したいと考える人が増えています。人口減少?超高齢社會となり、土地利用の効率化も叫ばれる中、以前のように全ての不動産に利用価値や経済価値があり、「保有しているだけでお得」という意識は、過去のモノとなったようです。

売卻するにしても買いたいと思う人がいなければ手放すことができませんが、所有者不明土地発生の最大の理由が「相続」である以上、相続放棄することで所有権自體も手放すことができれば、所有者不明土地問題解決に近づくはずです。

相続放棄にはルールがある

実際、法的にも相続放棄は認(rèn)められています(民法第915條?921條)。
ただし、相続放棄をする場合もいろいろな手続きやルールがあります。(民法938條、家事事件手続法、非訟事件手続法)
?放棄することを被相続人(亡くなった人)の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し出る
?亡くなってから(正確には亡くなったことを知ってから)3ヵ月以內(nèi)に行う
?戸籍など亡くなった人との関係性を示す書類を提出する
?相続開始前にはできず、撤回もできない
などです。

しかし、実際に土地所有権に関して放棄することができるのかというと、現(xiàn)行法上では必ずしも明らかになっていません。
例えば、ゴミなどの動産や請求権などの債権については放棄が認(rèn)められていますし、所有者のない不動産については國庫に帰屬するものとされています(民法239條第2項)。ですから相続放棄をすれば、基本的に國庫=國の所有になります。
しかし、広島高裁松江支部 平成28年12月21日判決で、「土地の所有権放棄が権利濫用等にあたる」とされ、認(rèn)められなかった(無効とされた)ケースもあります。権利濫用とは、社會的に認(rèn)められる限度を超えて権利を活用しているので、認(rèn)められないということです。

つまり、土地の所有権放棄は認(rèn)められないケースが多く、現(xiàn)在はどんな形であれ、誰かが土地の所有権を引き継ぐことが必要となっているようです。

行政の立場から考えると???

不動産の保有稅である固定資産稅は地方自治體である市町村の重要な財源です。ただでさえ新型コロナウイルス感染癥対策等の財源確保に苦労している昨今、行政サイドから考えても、簡単に相続放棄により所有者が國になってしまうと、國からは固定資産稅の支払いがなく(免除)、固定資産稅分の収入が確実に減ってしまいますから、自治體としては、受け入れづらい狀況です。

また、使い道の乏しい不動産が國庫に入るということは、國自體でその土地の管理をするということです。手間やコストは私たちの稅収が基になりますので、簡単にYesというわけにもいきません。

管理不全などのモラル的な問題も生じやすく、2020年(令和2年)3月に土地基本法が改正され、その対処がなされました。この法律はバブル時期にできた法律で、改正前は土地を保有することが前提=所有する意思の有無がポイントになる管理責(zé)任でしたが、昨今の空き地や空き家の増加を踏まえた今回の改正後は、土地保有の意思の有無は問わず、所有者が管理責(zé)任を負(fù)う內(nèi)容に改定されました。

今後の動き???

管理不全を防止するとともに所有者不明土地の発生自體を抑制することが必要です。そのために、一定の條件の下、新たに「土地所有権の放棄を可能とする制度」を創(chuàng)設(shè)する方向で検討されています。

ただし、コスト面を検討する必要がありますので「土地の権利帰屬に爭いがなく、境界が確定されている」「土地について第三者の使用収益権や擔(dān)保権が設(shè)定されておらず、所有者以外に土地を占有する者がいない」などの所有権放棄の條件も必要でしょう。

また、モラルハザード防止のための手段も必要になります。
例えば、
?建物や土地の性質(zhì)に応じた管理を阻害する有體物が存在しない
?崖地等の管理困難な土地ではない
?土地に埋沒物や土壌汚染がない
?土地の管理にあたって、他者との間の調(diào)整や費用負(fù)擔(dān)を要しない
など、將來も現(xiàn)狀のままで、容易に管理できることが必要です。

そして、公平感の観點から、放棄を希望する土地所有者が、一定の経済的な負(fù)擔(dān)することも必要でしょうし、止むを得ないと言えるだけの対応をしたことも必要になるでしょう。例えば、土地所有者が、相當(dāng)な努力をして、土地の売卻等をしようとしたができなかった、複數(shù)の不動産業(yè)者に相談したが売卻が難しかった等の行動です。

前述の「土地問題に関する國民の意識調(diào)査」平成29年度版を見ると、空き地の所有者の約5割が土地を所有することに負(fù)擔(dān)を感じており、そのうち約25%の方が土地の所有権を手放したいと考えています。そして、負(fù)擔(dān)を感じる人のおよそ半數(shù)が「固定資産稅相當(dāng)額(1年分)」を支払ってでも手放したいと考えているようです。

この「土地所有権の放棄を可能とする制度」が実現(xiàn)すると、従來と異なる全く新しい制度が創(chuàng)設(shè)されることになります。 法律的にも、2021年3月までの國會で、民法(物権編?相続編)、不動産登記法、新規(guī)の行政法の創(chuàng)設(shè)など非常に大掛かりな改正が予定されていますので、今後注視していく必要があるでしょう。

次回は、「所有者不明土地」に対する3つの施策の3つ目、「共有権の解消」についてお伝えする予定です。

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