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      コラム vol.515-8
      • 土地活用稅務コラム

      相続対策としての「短期対策」(8)賃貸住宅経営のシミュレーションでは「デッドクロス」には注意

      公開日:2025/02/28

      デッドクロスとは?

      不動産投資の世界で「デッドクロス」という言葉があります。株や証券の投資を行われている方にとってはおなじみの言葉かもしれませんが、不動産投資におけるデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償卻費を上回っている狀態を指します。この狀態になると、キャッシュフローには変化が無いのに、帳簿上は大きな利益が出ていることになり、結果として稅金の支払額が大きくなってしまいます。経営的な狀況は変わらないにもかかわらず、稅金によって実際のキャッシュフローがこれまでと大きく変わってしまうという、わかりにくい狀態です。

      不動産投資(賃貸住宅経営)にとって、減価償卻は経費計上できるために、稅務対策としてはメリットが多いのですが、減価償卻がなくなった場合に、キャッシュフローが悪化することがあります。
      たとえば、不動産投資が年月を重ねていくと、家賃収入は経年劣化により年々減少し、修繕費などの経費は増加。減価償卻費がゼロになるため、収入が減少し、減価償卻や利息という経費項目が減少することによって、手元に殘るキャッシュよりも、稅金が上回ってしまうという現象が起こりかねません。
      加えて、修繕費用などは、経費計上はできますが、収益の悪化に直結しますので、より利益が少なくなってしまいます。
      こうして帳簿上は利益が出ている狀態であるにもかかわらず、現金支出額が増えるため、「実際の現金収支」より「課稅される所得金額」が多く計上されてしまい、実際は資金不足になることがあります。このような現象を「デッドクロス」といいます。特に中古の賃貸住宅やマンションを購入する際には、耐用年數が短いため、デッドクロスには注意が必要です。

      「減価償卻」は、現金支出はないが、経費計上ができる

      不動産投資におけるデッドクロスに大きく関係してくるのが、「減価償卻」です。賃貸住宅やマンションなどの建物は「償卻資産」となりますが、償卻資産は毎年経年による劣化が起こりますので、価値が減少していきます。その減少分を「減価償卻費」として経費計上します。建物の構造によって、償卻期間が決まっており、例えば、木造建築の場合、耐用年數は22年、償卻率は0.046、RC造(鉄筋コンクリート造)の場合は、耐用年數47年、償卻率0.022と決まっています。
      減価償卻費の計算には定額法と定率法の2種類がありますが、いずれの方法でも償卻期間が終了すると経費計上できなくなります。減価償卻費は、現金支出のない経費として、帳簿上で処理することになります。
      例えば、2000萬円の木造賃貸住宅を投資用として購入したとして、耐用年數が10年だった場合、10年間の経費として計上しますので、「2000萬円×償卻率0.046=減価償卻費92萬円/年」ということになります。

      経費計上できる利息の割合は減少する

      賃貸住宅経営をはじめとする不動産投資を行う際には、最初に不動産を購入しますが、多くの場合、ローンを組みますので、実際には元金と利息を毎年支払います。ローン返済が進むと、経費計上できる利息の割合が減少していきますが、これもデッドクロスが起こる要因のひとつです。
      ローン返済の中身は「元金」と「利息」ですから、ローンの返済を続けると徐々に利息部分の割合が少なくなっていきます。そして、経費計上できるのは利息部分のみのため、同じ収益でも経費が減るため、課稅対象金額は増えていきます。
      ローンの返済方法を選ぶ際には、元利均等返済、元金均等返済の二つの方法があります。元金均等返済の場合は徐々にローンの返済額が少なくなるため、家賃収入が一定であれば徐々に手元に殘る資金は増加していくでしょう。一方、元利均等返済においては、支払額は一定ですが、徐々に経費計上できない元金の割合が増える(経費処理できない金利が減る)ために、稅務効果が薄れていきます。
      つまり、デッドクロスになりやすいことになります。減価償卻期間を超えるような長期間のローンを組む場合は、デッドクロスになりやすいことに注意が必要です。

      建物の構造によっても変わる

      デッドクロスになる可能性は、保有する賃貸住宅やマンションの減価償卻期間によって変わりますが、これは、構造(木造や鉄筋コンクリート造など)によって異なるからです。建物構造別の耐用年數は、次のとおりです。

      図:建物構造別の耐用年數

      鉄骨鉄筋コンクリート造?鉄筋コンクリート造(住宅用) 47年
      鉄骨(店舗用?住宅用) 骨格材の厚さ(4mm超)34年
      骨格材の厚さ(3mm超4mm以下)27年
      骨格材の厚さ(3mm以下)19年
      木造?合成樹脂(店舗用?住宅用) 22年
      木骨モルタル造(店舗用?住宅用) 20年
      金屬(店舗用?住宅用) 骨格材の厚さが(4mm超)34年
      骨格材の厚さが(3mm超4mm以下)27年
      骨格材の厚さが(3mm以下)19年

      國稅庁「主な減価償卻資産の耐用年數表」より

      保有する賃貸住宅やマンションが新築の場合は、木造でも法定耐用年數が22年あり、その期間は毎年減価償卻が発生するため、デッドクロスが発生するリスクは低いでしょう。しかし、中古の賃貸住宅やマンションを購入し、賃貸住宅経営を行う場合には、減価償卻期間が短くなることもあり、デッドクロスが発生する可能性があります。特に築古で木造や木骨の賃貸住宅を購入する場合は、減価償卻期間が短くなるため、あらかじめ、デッドクロスの発生を想定したキャッシュフローを組み立てておくことが必要となります。

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