貓と人がどちらも幸せに暮らせる家とはどんなものでしょうか?
ダイワハウスのエクセレントインテリアコーディネーター(社內認定)として
インテリアの提案を擔當する山口充代が、家を建てられたOさまご夫妻と一緒に
貓の気持ちになって考えた「貓のための造作」(以下貓造作)の數々をご紹介します。
記事の最後には実際にOさま邸の貓たちが「貓造作」を利用するムービーを掲載しています。
貓ちゃんたちの愛らしいしぐさとともに、ぜひ動畫でご覧くださいね。
Profile

大和ハウス工業株式會社
橫浜支社 住宅事業部 設計部 主任
山口 充代
インテリアコーディネーター
二級建築士、照明コンサルタント、エクセレントインテリアコーディネーター(社內認定)

上げ下げ窓のある北歐風のファサードが目を引くOさま邸。生粋の貓好きご夫妻が、獨身時代からそれぞれ飼っていた貓を2匹ずつ連れて、今ではご夫妻+5匹の大所帯に。「貓ちゃんファースト」の家づくりを進めるにあたり、ダイワハウスのインテリアコーディネーター山口と、どんな點にこだわりながら進めていったのでしょうか。
「ペット」ではなく「家族」……
健康と幸せを考えた時に必要な條件とは?

- 山口:最初の打ち合わせから、Oさまご夫妻の貓ちゃんに対する深い愛情を感じていたので、私も貓ちゃんのことを「ペット」ではなく「ご家族」として、いろいろご提案させていただきました。
- 妻:我が家は共働きで貓たちが留守番をする時間が長いので、外を眺められる窓と上下運動ができる十分なスペースをリクエストしました。貓カフェの造作を參考にしたり、貓と住む家づくりの本を読んだりして勉強しました。山口さんが貓たちとの生活を理解してアイデアを出してくれたので、打ち合わせの時間が毎回楽しくてあっという間でした。

- 山口:ありがとうございます。Oさまから本※を貸していただき、私も一から勉強させていただきました。「キャットステップ」は耳にしたことはありましたが、「貓トンネル」など初めて知った言葉も(笑)。貓ちゃんが大勢いると、通り道で誰かが寢ると動線を塞いでしまうことをお聞きし、貓ちゃんたちがストレスなく回遊できる「貓動線」を考えました。貓トンネルはいくつかの方向からアクセスできるようにして、トンネルの上の橫長のFIX窓からは外を眺められるようにしました。
- 妻:こういう造作を付けたいなとふんわりと考えていたものを絵に描いて山口さんに伝えると、実現可能な形でバランスよく提案してくれたので、こちらのアイデアもどんどん膨らんでいきました。

貓トンネル
貓たちの名前のイニシャルがついたパネルをあしらった貓トンネル。「貓動線」を意識し、複數のルートから行き來できトンネルの上も通れる。階段の踴り場からリビングの壁の穴を通り抜け、トンネルを駆け抜けていくコースが人気。
- 山口:貓ちゃんがどんな動きをするのか、どんな遊びをするのかを一つひとつ教えていただきながら、人も貓ちゃんも幸せに過ごせる內裝を考えていく打ち合わせはとても楽しかったです。

- 夫:構造上、リビングの真ん中に柱がくることがわかったので「キャットステップにしたい!」と伝えました。貓たちが登りやすい棚板の幅や間隔を考えてつくったのですが、実は人間にとって、このキャットステップは少し邪魔で(笑)。棚板に頭をぶつけてしまうことがありますが、貓たちが楽しんでいる様子が見られるので、もう大満足ですね。

柱を活用したキャットステップ
柱の色はソファの色とダイニングのアクセントクロスの色に合わせてネイビーをチョイス。タワーからブリッジを通り、トンネルにつながる造り。ブリッジの底は透明にして貓の肉球を下から眺めて楽しめる仕様に。
貓ちゃんファーストの造作とおしゃれなインテリア性を両立

- 夫:貓造作のアイデアを考えている時に、ちょうど建材メーカーが発売するスチール製のネコ専用シェルフを山口さんが見つけてくれて、タイミング良くモニターを募集していたので取り付けることになりました。アクセントになるものを探していたので、ここから一気に內裝のイメージが膨らんでいきましたね。

壁に取り付けたスチール製のネコ専用シェルフ
貓たちがこもれるハウス型と、足場となる葉っぱ型。優しい色合いがOさま邸にぴったり。
- 山口:Oさまの家にぴったりなワクワク感が感じられるアイテムだったので、気に入っていただけてうれしかったです。貓造作でいろんな色を取り入れたので、壁紙を白にすると色が主張し過ぎてしまうと思い、薄いライムグリーンの壁紙を提案させていただきました。
- 妻:シンプルに白い壁しか頭になかったので、この絶妙な壁紙の色を提案いただいた時はワクワクしました。貓トンネルのパネルは貓たちのイメージカラーなんですが、いろんな色を入れてもまとまりが感じられるのは、壁紙の効果だなと思います。

ステンドグラス
飼っている貓たちをデザインしたステンドグラスを入れたかったので、ステンドグラスの大きさに合わせて壁をくり抜いた。階段の上り下りが楽しくなったのだそう。
トイレスペースと収納を階段下に集約。
ニオイ対策もバッチリ
- 夫:一番気に入っているのが、階段下のトイレスペースです。貓たちも人間に見られず落ち著いてできますし、トイレ用品やキャットフードなども一緒に収納することができます。
- 山口:貓ちゃんはとてもキレイ好きで、5匹それぞれの専用トイレ+予備トイレの計6個のトイレが必要だとお聞きしたので、階段下のスペースを有効活用させていただきました。出入り口が1カ所だと貓ちゃんがその前で寢てしまうと他の子がトイレに行けなくなってしまうため、2つ設けました。家のどこかにアーチ狀の入り口を採用したいというご希望があったのでご提案しました。出入り口に飾ってあるパネルはOさまが見つけられたもので、とってもかわいいですよね。


トイレスペース
階段下を活用しながらも、明かりが入る窓も設けて貓が快適に過ごせるようにしたトイレスペース。
- 夫:アーチ狀の入り口はとても気に入っています。家に遊びに來た人もまずここに注目してくれることが多いです。xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)は床下基礎斷熱で、階段下にちょうど床下への通気口があったのと、専用換気扇を付けたこと、その2つの効果でニオイがこもらず、リビングにいてもトイレの臭いが気にならず快適に過ごせています。
貓たちが気ままに過ごして落ち著ける、バラエティ豊かな居場所がたくさん

- 山口:貓ちゃんは性格も動きも違うので、遊び方もそれぞれだと思います。入居されてから新たな発見などはありましたか?
- 夫:外を眺めるのが好きな子、棚板を飛ばして一気に駆け上がってしまう子、狹いスペースに挾まってじーっとしているのが好きな子など、それぞれ思い思いに過ごしています。でも私たちがリビングで何かをしていると、結局全員集まってきて近くにいる、なんてことがよくありますね。

窓際のベンチ
窓際にベンチを設けたのはOさまのアイデア。掃き出し窓の高さを上げて、貓たちが高い位置から外を眺められるようにした。ベンチの右の2つは収納スペース。真ん中は個室で、左の2つは中がつながっていて行き來できるようになっている。
- 夫:足場の間隔は、老貓でも無理のない高さでつくりましたが、若い子や運動神経のいい子は1?2段飛ばして自分でアスレチックコースをつくって、楽しそうに遊んでいます。
- 妻:以前の住まいよりも走り回って遊ぶ範囲が広がったので、十分運動できているなと思います。5匹がそれぞれ過ごせる場所があちこちにあるので、居場所の取り合いもなくなりました。貓用の見守りカメラを置くための専用棚も付けたので、仕事の休憩中にときどき貓たちの様子をチェックするのですが、期待に反して、留守番中は寢ていることが多いみたいです。
思い切って付けた造作で貓たちが意外な動きを見せてくれる

- 夫:貓たちのためにあれこれ造作を付けましたが、完成するまでは本當に貓たちが遊んでくれるか不安もありました。「足場はこの位置にあった方が登りやすいのでは?」「これじゃ登りにくいからもう一段増やそう」などと、最後まで微調整を重ねていきましたが、住み始めてからは貓たちが楽しそうに遊んでいる様子が見られるので良かったです。
- 妻:貓たちが意外な動きを見せてくれるので飽きることがないですね。何も予定がない休日も、家でのんびりと過ごす楽しみが増えました。
- 山口:家族の一員である貓ちゃんの目線に立った家づくりは、私にとっても勉強になることばかりで貴重な経験でした。Oさまや貓ちゃんに喜んでいただけたことが何よりうれしいことです。ありがとうございました。
まとめ
貓の性格や好きな遊びを熟知しているオーナーさまとインテリアコーディネーターとの共同作業によって、貓も人間もハッピーになれる理想の貓造作が完成しました。「貓と暮らす家」を考えている方は、貓も人も心地良く暮らせる家づくりを一緒に考えていきましょう。
※參考文獻
- ?貓がうれしくなる部屋づくり、家づくり(プレジデント社)著者:廣瀬慶二
- ?貓のための家づくり(エクスナレッジ)監修:廣瀬慶二
2020年5月現在の情報となります。