
CREコラム
急拡大するESG投資(2)ESG投資 市場規(guī)模
公開日:2020/10/23
注目が高まっているESG投資ですが、どの程度のマーケット規(guī)模となっているのでしょうか。今回は市場規(guī)模について紹介します。
世界的には資産運用額の3割に上昇
國際的なコンサルティング會社の2017年調(diào)査によれば、2016年末における世界の資産運用
殘高は約69兆ドル(7808兆円)。これに対して、世界のESG投資の統(tǒng)計を集計している國際団體のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の2016年調(diào)査でESG投資額は24兆ドル。4年前の時點で、世界の資産運用市場でESG投資が占める比率は34.7%と3分の一を超えるまでに増加しています。
GSIAは世界の各地域にあるESGの投資協(xié)會が加盟する団體で、わが國からは2015年に設(shè)立された「日本サステナブル投資フォーラム」(JSIF)が加盟しています。各協(xié)會は関連する機関投資家に調(diào)査票を送り、2年に1回「レ
ビュー」を作成して、ESG投資の市場動向を公開しており、現(xiàn)時點ではESG投資における有力な調(diào)査機関と思われます。しかし南米やアフリカなど一部地域はカバーしていません。
地域別に見ると、最新の數(shù)字(2018年)ではドイツや北歐など環(huán)境問題にシビアな國々が多い歐州が世界シェアで45%とトップに位置しており、米國がこれに続いています。ただしカナダを含めて「北米」として合算すれば44%と拮抗し、歐米の2つの地域がESG投資の主流であること裏付けています。
図1:世界のESG運用資産額と増加率(単位:10億ドル)
注:1ユーロ=1.17ドル、1円=0.01ドル換算
GSIA「2018レビュー」をもとに作成
日本を含むアジア地域は2018年時點で約2.2兆ドルと世界シェアは7%足らず、歐州の6分の 1以下です。JSIFの調(diào)査では日本國內(nèi)の2016年におけるサステナブル投資殘高(=ESG投資殘高)は56兆円。GSIAの2016年調(diào)査は5417億ドル(約54兆円)ですから、アジアにおけるESG投資は日本がそのほとんどを占めている計算になります。
ネガティブ型と統(tǒng)合型で7割を占める
ESG投資には7種類の投資手法があります。
手法別の資産運用実績がありますので、簡単に紹介しておきます。
図2:ESG投資の種類
ネガティブ?スクリーニングは、最も古いESGの投資手法で、1920年代に米國のキリスト教系
の団體が始めたものといわれています。武器製造やギャンブル、ポルノなど反社會的または非倫理的な事業(yè)を展開している企業(yè)への投資を排除するものです。ポジティブ?スクリーニングは、ESGに積極的(ポジティブ)に取り組む企業(yè)に対して投資すること。ある業(yè)界の中で投資先を選定する場合、ESG投資に熱心な企業(yè)ほど好業(yè)績であるとの発想が根底にあります。
2018年の「GSIAレビュー」調(diào)査によれば、ネガティブ?スクリーニングとポジティブ?スクリーニングを合計すると68%。株主総會における議決権を行使して企業(yè)にESG投資を求める「エンゲージメント?議決権行使型」の18%を含めると、この3つの手法で全體の9割近くを占めています。
図3:投資手法別のSRI運用資産額(2018年 単位:10億ドル %)
JSIF「サステナブル投資殘高調(diào)査」をもとに作成
國內(nèi)市場規(guī)模は336兆円、前年比1.45倍
2020年4月にJSIFが発表した「サステナブル投資殘高」調(diào)査(國內(nèi)の生損保、投資顧問、
年金基金など41機関対象)によると、2019年の國內(nèi)におけるESG投資(=サステナブル投資)殘高は、対前年比45%増の336兆円になりました。國際団體であるGSIAの「2018レビュー」でも、日本を含むアジアのESG投資が米國を抜いて世界で3番目の市場になっていることが示されており、國內(nèi)のESG投資は海外と比較しても成長過程にあるといえます。
國內(nèi)のESG投資は、運用手法別に見ると、「エンゲージ」が最も多く3割近くを占めています。これに「議決権行使」を含めると54%と過半數(shù)を超えます。エンゲージは投資対象の企業(yè)との対話を通して環(huán)境や社會貢獻、企業(yè)経営の姿勢など改善のための建設(shè)的な意見交換を図ります。その結(jié)果、満足する対話や回答が得られなければ株式を売卻することもあります。こうした対話を主體的行う人々を近年は「モノ言う株主」として市場が注目しており、投資対象の候補に挙げられる企業(yè)は、適切な対話と改善活動が求められます。
図4:手法別のサステナブル投資殘高(2019年 単位:億円 %)
JSIF「サステナブル投資殘高調(diào)査」をもとに作成
図5:資産別のサステナブル投資殘高(2019年 単位:億円、%)
JSIF「サステナブル投資殘高調(diào)査」をもとに作成
資産別に見ると、債券が38%、次いで日本株34%、外國株21%の順。いずれも証券市場で企業(yè)業(yè)績のほうか対象になっている有価証券であり、ESG投資に限らず投資対象の候補として選定しやすいこと共通していると思われます。
不動産は2%のシェアにとどまっています。國內(nèi)の不動産でESGの評価制度の対象になっている不動産はオフィスビルだけで、ESG投資の認証制度も検討過程にあります。このため、機関投資家の目を引き付けるだけのマーケットになっていないとも考えられます。2018年から國土交通省がESG投資促進のための最終とりまとめを行っており、早ければ來年にも認証制度の基本設(shè)計が固まると思われます。いまや資産運用の世界で3分の1を占める巨大市場になったESG投資における環(huán)境整備が待たれます。