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      コラム No.130-3

      CREコラム

      不動産DX入門(3)デジタル化への環境整備

      公開日:2022/06/30

      DX(デジタルトランスフォーメーション)は業務効率化と顧客サービスの改善が2大テーマ。デジタルの力で効率的に業務を遂行するには、紙文化からの脫卻を図ることが不可欠。DXを推進する人材の発掘や確保も重要です。

      紙文化が根強い不動産業界

      不動産は高額で権利関係も複雑なことから、売買や譲渡などの契約書や権利書といった紙の文書が1つの物件で數多く存在します。個人で住宅を購入するケースを考えても、購入申込書から売買契約書、重要事項説明書、抵當権設定契約書などがあります。不動産を売買する側からみれば、こうした書類を作成し控えを保管するだけでも大変な労力が必要です。また、最近では減少傾向にあるFAX(ファクシミリ)も、この業界では依然として使用頻度が高いともいわれています。

      ことほどさように不動産業界には紙文化が定著しています。銀行など金融業界と同様、不動産業界は顧客の大切な資産を売買?管理?運用するので、萬が一にも業務処理に過誤は許されません。このため長い間「紙の文化」が続いてきました。DXはこうした文化から抜け出すことが不可欠です。

      長期計畫で電子化に移行させる

      わが國では、伝統的に情報の保管媒體として「紙」が重要視されてきました。証明書や帳票?伝票に押印し、內容の正當性を証明する文書価値は唯一無二のもので、そうした書類の存在は関連法規で保存期間が明記されるなど、「紙文化」は法律によってその価値が裏付けられてきたのです。しかしデジタル化が進み、また産業界の電子データ化を推進する國の方針もあり、紙の文化から脫卻することは企業経営において避けて通ることはできません。

      紙にデータを長期的に殘していては劣化のリスクがあります。早期に電子データに移行する必要があります。ただ、長年の商習慣を一気に変えることはそう簡単ではありません。紙文化と電子データのメリットとデメリットを理解し、デジタル化を進めることが肝要です。紙によるデータ保存は、電子データに比べて1枚で全體を閲覧できる一覧性を維持したうえで持ち運びできます。しかし紙は劣化するので長期保存には不向きです。また書類が増えれば増えるほど保管場所を拡充する必要が出てきます。

      図:紙と電子データの比較

      一方、電子データは紙代やインク代を削減でき、ファイリングの手間が省けます。なにより、印紙代を削減できるは大きなメリット。劣化することはなく、保管スペースはパソコンやサーバがあれば済むので省スペース化が実現でき、紛失のリスクが大幅に低減します。また必要なデータを探す際にも、電子データは検索性に優れています。検索機能はデータファイル(ペーパーレス)の最大のメリットのひとつで、業務効率化に貢獻することが期待できます

      電子データの移行は慣れてしまえば難しいことではありません。しかし、実行に移す際には強い抵抗を受けることもあるでしょう。紙に慣れ親しんできた根強い企業文化(風土)があります。DXは経営層の意識改革が最重要課題ですが、紙文化からの脫卻は経営陣に対するDX第一の関門といえるかもしれません。
      ですから、紙からデジタルデータへの移行というペーパーレスを推進し定著させる機運が広がれば第一段階は終了と言えるかもしれません。
      しかし、ペーパーレス化は、タブレット端末など必要なIT機器の購入だけで終わるものでもありません。特に不動産業界においては、紙をベースとした業務プロセスが定著していますので、本來であれば、業務プロセス自體の見直しも必要です。デジタル化することで、不必要となるプロセスも見定め、業務全體の大きな効率化を目指す必要があるでしょう。

      不動産業界で進むデジタル化の環境整備

      システム対応が遅れているといわれてきた不動産業界では近年、急ピッチでデジタル化に向けての環境整備が進んでいます。重要事項説明書の電子データ化いわゆる「IT重説」は2017年10月に不動産の賃貸取引で始まりましたが、2021年4月から売買取引にも拡大されました。全國の土地?建物に識別番號を付けて不動産情報の一層のデジタル化を促進させる「不動産ID」も速ければ今年中にも創設される予定です。

      賃貸住宅の不動産仲介では現地視察をしないVR(バーチャルリアリティ)內見の導入が増え、賃貸住宅の視察における業務合理化が進んでいます。建築関連では、ITを活用して建築における計畫?調査?設計?施工?管理の全ての段階で3次元モデルを組み立て、情報を共有しながら工程を進めていくツール「BIM」が注目されるなど、官民一體となって不動産業界のデジタル化が進んでいます。

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