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高まるBCP(事業継続計畫)の重要性(2)BCPとBCM、そしてBCMS
公開日:2018/11/30
BCPは計畫でありBCMは実行プロセス
日本において「BCP(Business Continuity Planning:事業継続計畫)」は昨今とてもポピュラーな用語になりましたが、「BCM」に関しては、さほど普及してはいないようです。
BCMとは「Business Continuity Management」の略で、直訳すれば、「事業継続管理」となります。
國(內閣府)は、「事業継続ガイドライン第三 版」(平 成26年7月)の中でBCMについて、「BCP(事業継続計畫)策定や維持?更新、事業継続を実現するための予算?資源の確保、対策の実施、取組を浸透させるための教育?訓練の実施、點検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動のこと。経営レベルの戦略的活動として位置付けられる」としています。
つまり、BCMは組織にとって重要な事業の継続能力を継続的に維持?改善するためのプロセスであり活動です。一方、BCPは事業継続計畫であり、有事の際の行動計畫を表した文書です。目的や目標、BCPの條件や體制、具體的な行動手順などが記載されます。つまり、せっかくBCPを策定しても、実行しなければ寶の持ち腐れとなってしまいますので、BCPを日々運営する活動が重要となってきます。その仕組みがBCMというわけです。
BCPの実行プロセスであるBCMは、事業の継続能力を高めていくためのものですが、次のような注意點に考慮する必要があります。
- ?事業継続のために人が持つべきスキルなどの人的側面とマニュアルやシステムなどのツールの側面のバランスをとること
- ?何が最も影響を與える重要な業務で、何が重要な経営資源であるか、大きなリスクとなるものは何かを分析しておくこと
- ?BCPを実行するための教育、訓練を平常時に実施しておくこと
こうしたことを継続的に行うことによって、BCPが実際に役に立つ効果的なものになります。
経営としての事業継続、BCMS
もうひとつ、BCMS(Business Continuity Management System:事業継続マネジメントシステム)という考え方があります。これは、BCMを経営全體でとらえるもので、BCPを確立し、経営の視點から、実踐?運用(BCM)する全體の流れをモニタリングしたり、検証?レビューを行ったり、維持?改善を組織的に行ったりする総合的なアプローチ法です。具體的には、経営レベルでの戦略の策定、內部監査體制、経営陣への報告書などが必要となります。これらによって、現場、管理者、経営陣が一體となった「事業継続策」が揃うことになります。BCMS適合性評価制度などの認証を受ける場合には、BCMSの整備?運用が必要です。
內閣府の同資料によれば、企業全體でBCMを進める場合、次の3つのポイントに留意し、必要に応じて部門や拠點別にも計畫書として準備しておくことが重要です。
- (1)計畫文書は文書化を目的にしない
事業継続に関する計畫を作ることにエネルギーを注いでしまい、文書化自體がゴールになってしまうことが多いものです。必要なメンテナンスをせず放置してしまうと、いざというときに使えないこともありえます。常に見直し?改善、実施訓練が必要です。 - (2)緊急時に使いやすいように、簡潔なマニュアルやチェックリストを用意
緊急時に分厚い文書を參照している時間はありません。何を行えばいいのか、すぐにわかるように、できる限り簡潔なマニュアルやチェックリストを用意します。 - (3)策定後の擔當者でもメンテナンスしやすくする配慮
事業自體の変化、組織の変化、環境の変化などでBCMの計畫はすぐに古くなるだけでなく、人事異動や入退社によって人も入れ替わります。策定に関わらなかった後任の擔當者などでも、効果的に活用し、定期的にメンテナンスができるように配慮?工夫しておく必要があります。
さらに、BCP~BCMSの平常時からの取り組みとして、6つの項目(方針の策定、分析?検討、事業継続戦略?対策の検討と決定、計畫の策定、事前対策及び教育?訓練の実施、見直し?改善)をサイクルとして回し、経営環境の変化に応じて発展的に改善していくことが重要であり、この全體像こそが、BCMSと呼べるものです。
図で示されているように、災害時にBCPが効果的になるように、平常時から一つのシステムとして管理しておく必要があるわけです。
図:BCM(事業継続マネジメント)の各プロセス
事業継続ガイドライン第三版(內閣府平成25年8月)より抜粋して作成