これから家を建てる方は、どんなテイストのインテリアにしようか、
楽しく迷われているのではないでしょうか。
インテリアは簡単に変えることができないため、
飽きずに長く楽しめるベーシックなものを求める方が多いかもしれませんが、
なんらかの特色をプラスするとオリジナリティある空間になり、
我が家への愛著が増すという側(cè)面もあります。
採用する/しないは別として、現(xiàn)在のインテリアのトレンドとその背景を知っておけば、
豊かな自宅づくりのヒントとなるかもしれません。
今回は世界のインテリアトレンドの発信源であり、
毎年イタリア?ミラノで開催される「ミラノサローネ國際家具見本市(以下、ミラノサローネ)」から
最新インテリアをご紹介するとともに、國內(nèi)のインテリアトレンドの傾向をご紹介します。
アドバイス
大和ハウス工業(yè)株式會社 西日本住宅設(shè)計室 一課
鱸(すずき) 麻理
インテリアコーディネーター、インテリアプランナー、一級建築士、キッチンスペシャリスト、照明コンサルタント
インテリア業(yè)界でも「サステナビリティ」がキーワード

近年、インテリア業(yè)界でも「サステナビリティ(持続可能性)」は外せないキーワードになっています。ミラノサローネでもサステナビリティにフォーカスした企業(yè)やデザイナーの取り組みが多く見られました。
製品自體が環(huán)境に配慮された天然素材やリサイクル素材で作られていることはもちろんですが、製造?輸送においても環(huán)境への負(fù)荷が低いこと、生産者の労働環(huán)境が適切であること、使う人の健康に悪影響がないことも大切なポイントです。消費者がそうした製品を暮らしに取り入れることで住みやすい環(huán)境を持続させ、ひいては心地良く暮らすことにつながります。
ひと昔前はファストファッションになぞらえた「ファストファーニチャー」の臺頭で、安い家具を気軽に買って、短いサイクルで買い替えるという考えもありました。しかし、これからの時代は人や環(huán)境にとって優(yōu)しい製品を使う側(cè)が選択し、メンテナンスをしながら愛著を持って使い続け、世代を超えて引き継いでいくという視點を持つ方が増えるのではないかと考えています。私たちインテリアコーディネーターもサステナビリティに配慮したメーカーのものをご提案したいですし、結(jié)果的にそれがお客様の満足度にもつながると考えています。
落ち著いた空間を演出する「カラードレンチング」
ここからはデザインやテイスト、カラーといった最新インテリアトレンドをご紹介していきます。
カラードレンチング

インテリアのカラーコーディネートといえば、ベースカラー(床や壁)+アソートカラー(建具や家具、ラグなど)+アクセントカラー(クッションやオブジェなど)で色を変えるのが一般的ですが、それとはまったく異なる手法が「カラードレンチング」です。ドレンチングとは英語で「浸す」という意味で、文字通り一つの部屋を一色で浸すように統(tǒng)一させた大膽なインテリアが海外では注目されています。
DIY文化が根付き、セルフリノベーションが當(dāng)たり前の海外ではトレンドを柔軟に取り入れることができるかもしれませんが、日本に海外のトレンドをそのまま持ってくるのは勇気が要ることかもしれません。トイレのようなコンパクトな空間ならカラードレンチングに挑戦しやすく、統(tǒng)一感も出しやすいのでおすすめです。
こちらはトイレの床や壁、設(shè)備までをブラウン系で統(tǒng)一した當(dāng)社のカラードレンチングの実例です。木目調(diào)の壁やタイルなど、同じ色でも素材を変えることで、空間にリズムが生まれます。カラードレンチングをするなら、アースカラーで統(tǒng)一すると落ち著いた空間に仕上がります。

カラードレンチングの実例
大膽な色柄の大理石
竹や籐、和紙などの自然素材をインテリアに取り入れるトレンドが數(shù)年前から見られますが、その流れで注目されているのが大理石を取り入れた家具です。大理石と聞いて想像するような白や黒のマーブル柄ではなく、白地にピンクやグリーンのマーブル柄といった珍しい色の大理石を天板にあしらったテーブルがミラノサローネでも多く見られ、今後、増えていきそうです。大型家具だとどうしても高額になりますが、小さなコーヒーテーブルや、一部に大理石をあしらった家具などをアクセント的にお部屋に置けば、一気にトレンド感が増すことでしょう。
和×北歐をミックスしたジャパンディ
數(shù)年前から注目され始めた「ジャパンデ?!工?、ますます日本で浸透していきそうです。ジャパンディは「Japanese」と「Scandinavian(スカンディナビアン)」を掛け合わせた造語で、日本の伝統(tǒng)的なデザインと北歐テイストをミックスさせたインテリアスタイルです。モダンで直線的なしつらいや、自然素材の家具や小物を用いることでジャパンディを表現(xiàn)できます。全體的な色味を抑えてニュートラルカラーをアクセントに取り入れ、さらにマットブラックをポイント的に置いて空間を引き締めるのがおすすめです。
インテリアのトレンドカラーは?

実はトレンドカラーというものは自然発生的に生まれるのではなく、インターカラー(國際流行色委員會)という機関が世界情勢などをあらゆる角度から分析し、2年前からその年を象徴する色を決めていることをご存知でしょうか。
日本ではインターカラーの情報をもとに、JAFCA(日本流行色協(xié)會)が獨自に國內(nèi)のトレンドカラーを発信しており、2023年のトレンドカラーは「ルミナスイエロー」としています。
アメリカのPANTONE社も獨自のトレンドカラーを選定しており、2023年のトレンドカラーは「ビバ?マゼンダ」と発表しています。

左:ルミナスイエロー
右:ビバ?マゼンダ
こうしたトレンドカラーはファッションやインテリア、コスメなどさまざまな業(yè)界に影響をあたえます。
インテリアにおいては、上記のような各団體が発表するトレンドカラーが直ちに取り入れられるわけではなく、インテリア業(yè)界特有のトレンドの広がりが見られます。ミラノサローネで発表されたカラーは1?2年かけてじわじわと浸透し、ある程度長いスパンで人気が継続していく印象です。ここ數(shù)年のトレンドはアースカラーですが、2022年のミラノサローネでもテラコッタや翡翠色、ピンクがかったブラウンが注目され、張地やアクセントカラーに使われるケースが多く見られました。
こうした色はカーテンやクッション、ラグといった小物でアクセント的に取り入れると、今っぽいインテリアが演出できます。ソファなども最近はカバーリングタイプのものが多く出ており、家具を買い替えることなく手軽に印象を変えることができます。
グラデーションカラー


グラデーションの実例
色を取り入れる際には、単色に限らずグラデーションアイテムを採用するのも一つの方法です。各メーカーでグラデーションカラーのカーテンや壁紙が出ていますが、単色に比べるとやわらかい印象で、立體感が出るのも特徴です。新型コロナの流行でおうち?xí)r間が見直され、インテリアに癒やしやリラックスを求めたい気持ちがグラデーション人気の背景にはあるのかもしれません。
カラークロスのトレンドは「ベージュ系カラー」
壁紙の色もそのときのトレンドを表します。日本では少し前からグレー系のクロスが流行していますが、今はグレー系からベージュ系へとトレンドが移行しつつあります?!纲U貸住宅ではシンプルな白の壁紙だったので、新居では薄いカラークロスにして素敵な空間にしたい」というご要望は多くあります。予算的にも取り入れやすく、部屋の雰囲気ががらりと変わるカラークロスの人気は今後も続くでしょう。
キーワードは「SNS映え」「多様性」

近頃はインスタグラムの畫像をお持ちになり「こんな部屋を再現(xiàn)したい」とご要望を伝えてくださるケースも増えています。その畫像も、従來の日本のインテリアではあまり考えられなかった海外の大膽な色使いのインテリアだったり、お姫様気分に浸れるピンク一色の子供部屋だったりと、実にバラエティー豊か。國內(nèi)外のインテリアの情報をSNSで簡単に入手できるようになり、「自分らしいインテリアを自由な発想で楽しみたい」と考える方が増えているのでしょう。今後、インテリアのテイストはますます多様化していくことが予想されます。

インスタ映えする家づくりを目指す方もとても増えています。寫真投稿やインスタライブで映り込む背景にアクセントクロスをあしらい、オシャレなチェアや照明を配置するだけでもかなり雰囲気が良くなります。壁紙にトレンドカラーを取り入れるのもアイデアの一つです。
コロナ禍でおうち?xí)r間が増えたことでインテリアへの関心が高まり、居心地のいい空間にしたいというニーズはますます高まっていると感じます。従來のインテリアの常識に縛られず、インテリアも多様化する時代です。ぜひコーディネーターにご要望をお聞かせいただき、自由な発想でインテリアを楽しんでいただきたいと思います。