豆柴の女の子?センパイと、ミックス貓の男の子?コウハイ。
本當の姉弟のような2匹との暮らしをほのぼのと描くエッセイストの石黒由紀子さん。
今回は石黒さんに、貓や犬との暮らしについてうかがいました。
東京都內のマンションに、犬と貓、そして夫と暮らす石黒由紀子さん。ほのぼのとした日々をつづったエッセイは、2匹のほほえましい寫真とともに本となって出版され、犬派?貓派の読者に親しまれています。
ご夫妻がここに越してきたのは約13年前。犬を飼うことを想定してリノベーションし、約2年後に豆柴の女の子「センパイ」を迎えました。たまたま仕事で訪れた犬貓関連の施設で生後2週間の彼女に出會った石黒さん。運命の出會いに心を打たれ、すぐに迎えることを決めたのだとか。ただ、その場で引き取るのではなく生後3か月になるのを待ってお迎えに行ったそうです。
「生後3か月までは母犬のそばで育てるというのが施設の方針だったんです。子犬にとっては母乳を飲んだり、犬社會のことを教わったりする大切な期間なんですね。私たち夫婦も犬を迎える気持ちと環境をしっかり整えることができました」と石黒さん。互いに準備を整えた甲斐あって、センパイは無駄吠えをせず人間との暮らしにもなじめるお利口な子犬になって石黒家にやってきました。
センパイと暮らすようになってから5年後。犬のいる生活に慣れた石黒さんご夫妻は、暮らしに新しい風を吹かせたいと、もう1匹の飼育を考え始めました。犬を飼う選択肢もありましたが、2人が選んだのは貓。犬と貓の多頭飼いがうまくいくかどうか多少の不安はありましたが、「犬がメスなら」「貓が小さい時から慣らせれば」仲良くなりやすいという情報を信じて、子貓を探しました。
知人の関わる動物愛護団體を通じて出會った元?保護貓の「コウハイ」は、石黒さんの心配をよそに、持ち前の無邪気さを発揮してすぐに石黒家になじみました。來た日の晩には先住犬センパイの背中に乗って眠ってしまうほどだったとか。最初は戸惑っていたセンパイも徐々に受け入れて、2週間のトライアル期間は無事終了。コウハイは新しく石黒家の家族になりました。
センパイとコウハイが仲良しになったのは、石黒さんがセンパイを立てるように気を配ったせいもあるようです。おやつを與える順番も、遊んでやるのもセンパイが先。おかげでコウハイは年功序列を守り、〝センねえたん〞を立てる気遣いのできる貓になりました。
また、貓は、お腹がいっぱいになるまで食べずに、気が向いた時にごはんを食べる「きまぐれ食べ」をするのが多いようですが、コウハイはセンパイに影響されて、犬のような食べ方をするのだとか。フードを與えられると、センパイとともにあっという間に平らげてしまうそうです。
そんな2匹ですが、時にはケンカをすることも。コウハイからいたずらを仕掛けるのがほとんどで、眠っているセンパイにじゃれついたり、耳をかじったり。安眠を邪魔されたセンパイが本気で怒り応戦すると、コウハイはおののいて拳を引っ込めるのだとか。ケンカをしてもいつの間にか仲直りして一緒に丸くなって眠っていることも。「そんな関係性も人間の姉弟みたいで面白いですね」と石黒さんは微笑みながら教えてくれました。
ご夫妻の一日は、センパイの「ごはん、ごはん」というおねだりから始まります。朝の散歩は夫の謙吾さん、夕方の散歩は石黒さんが擔當。ごはんと散歩の時間以外は、2匹はのんびりと寢て過ごします。
夜は人がベッドに入ると、センパイとコウハイがもぐりこんできます。曲げた膝の內側に入ったり、顔の橫で丸くなったり。「寢返りが打てなくて困ります」と言いながら、うれしそうな石黒さんです。
犬や貓との暮らしが與えてくれるのは、ほっこりする気持ちだけではないそうです。數年前、お母さんが他界した時落ち込んだ石黒さんでしたが、「この子たちの面倒を見ないと」という責任感に支えられて立ち直ることができました。また、ご夫妻にとって、犬は地域とつながるきっかけをくれる存在。飼い主同士で顔見知りになったり、困った時は助け合ったり。そんな関係ができたのはセンパイとの毎日の散歩のおかげだそうです。
石黒家の収納スペースの下には、センパイでもコウハイでも入れる大きさのゲージが置いてあります。普段は家の中を自由に行き來し、好きなところで寢ている2匹ですが、時々ゲージに入る練習をしているそう。これは、地震などの際に避難所で暮らせるようにするための訓練の一つなのです。
東日本大震災の時には、飼っていた犬や貓を避難先に連れて行けず離れ離れになってしまった例がたくさんありました。避難所には犬や貓が苦手な人もおり、ゲージに入らないことには連れていけなかったのです。萬一の時、大切な家族を安全な場所に避難させられるように。ゲージには、そんな石黒さんの思いが詰まっています。
犬や貓を飼う人が増えた一方で、最後まで飼い切れずに捨てたり保健所に持ち込んだりする飼い主も多くいることに心を痛めている石黒さん。元?保護貓のコウハイを見るにつけ、「こんなにいい子を捨てるなんて」という想いが強くなっていきました。
ある時知人に紹介されたことから、石黒さんは音楽家の坂本龍一さんが立ち上げた「FreePets(フリーペッツ)~ペットと呼ばれる動物たちの生命を考える會」に加わりました。數か月に一回小學校を訪問して授業を行ったり、小學生向けの教材を作ったりして、命の大切さを教えています。犬や貓を飼ったことがない子どもでも動物の気持ちを想像できるように、そして未來の愛犬家、愛貓家が育つように、メッセージを送り続けています。
「犬や貓も長壽命になり、長ければ20年以上生きるようになりました。その時まできちんと面倒を見られるか、自分が病気になった時には誰が代わって世話をしてくれるのか、十分に考えてから飼い始めてほしいですね。考えたうえで〝飼わない〞という選択をするのも動物愛護の一つなんです」(石黒さん)
センパイ、コウハイとの出會いに感謝しながら暮らす石黒さんご夫妻。2人と2匹の「特別ではないけれど幸せな日々」は、これからも穏やかに続いていきそうです。
お腹がいっぱいになったら、くるっと丸くなっておやすみなさい。コウハイは爪とぎボード、センパイはひだまりのベッドがお気に入り。
宙をじーっと見つめて、もの思いにふける。
頭の中にあるのはおやつのこと?それとも大好きなボール遊びのこと?
石黒さんが所屬する「(一社)FreePets~ペットと呼ばれる動物たちの生命を考える會」が行う、イベントの授業の様子。子どもたちは真剣な表情で犬や貓のことを學んでいます。
エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせをつづるほか、女性誌や愛犬誌、WEBに、犬貓グッズ、本のリコメンドを執筆。著書は人気の『豆柴センパイと捨て貓コウハイ』などのセンコウシリーズの他多數。6月には新刊『貓は、うれしかったことしか覚えていない』(幻冬舎)を上梓予定。
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2017年4月現在の情報となります。