



「公民連攜のまちをつくる」
-富山コンパクトシテ?!妇t曲輪レガートスクエア」-
持続可能なまちづくりの先進都市、富山市。大和リースは富山市とともに、
まちなかのにぎわいを創出する公民連攜のプロジェクトに取り組んだ。






先進のコンパクトシティ

人口減少が進む中、持続可能なまちづくりを進め、國內はもとより世界からも注目されるまちがある。2012年、経済協力開発機構(OECD)により、コンパクトシティ※の先進事例として世界の5都市のうちの1つに取り上げられた富山市だ。
富山市は、富山県の約1/3の面積を占め、住民が広く分散している。そこで、中心市街地にLRT(次世代型路面電車)などの公共交通機関を整備。住民にはその沿線へ移住してもらえるよう、魅力的な施設の整備や補助金など、さまざまな施策を打ち出してきた。効果は著実に表れ、中心市街地は転入超過を維持し、小學校児童數も増加している。
そして、まちなかのにぎわいを創出し、質の高いライフスタイルを実現する次の一手として、中心市街地にある舊総曲輪小學校跡地の活用事業を計畫。スキームとして、公民が連攜して公共サービスを提供するPPPを活用することに。プロポーザルの結果、大和ハウスグループの大和リースを中心とするチームが選ばれた。
※都市の中心部に醫、職、住、交通などの都市機能を集中させ、住民の利便性向上や行政コストの低減を図る概念。



テーマは醫療?福祉?健康

2017年4月、公民連攜の交流拠點「総曲輪レガートスクエア」が誕生。8,700m2の敷地に公共施設として、地域包括ケアの拠點となる「富山市まちなか総合ケアセンター」、「パティオ(広場)」が整備された。民間は6施設が集まり、醫療福祉?調理製菓の専門學?!笇W校法人青池學園」、スポーツクラブの「グンゼスポーツ富山レガートスクエア」、 富山を代表する製薬會社である廣貫堂のカフェ「バルツェル」、「ローソン富山総曲輪店」と「ファーマみらい広貫堂薬局」を併設した北陸初のヘルスケアローソン、大和ハウスグループの立體駐車場「Dパーキングレガートスクエア」がある。また、當初より郊外からの移設が決まっていた富山市醫師會看護専門學校も敷地內に建つ。

富山市まちなか総合ケアセンター

學校法人青池學園

グンゼスポーツ富山レガートスクエア
大和リースが提案したのは、「醫療?福祉?健康」をテーマに多世代交流を育む健康拠點。富山市の岸さまは、そのコンセプトに適した民間事業者を取りまとめた大和リースの手腕を評価する。
「最も大きなポイントは、専門學校を誘致してくれたことです。青池學園と看護専門學校を合わせると、定員880人の學生さんがここへ來ることに。統廃合で使っていなかった跡地に、人の流れが生まれ、周辺のにぎわいにもつながりました」。



公と民の相乗効果が生まれる

「富山市まちなか総合ケアセンター」には、子育て支援や在宅醫療、地域コミュニティーを醸成する機能が集約されている。驚くのは、このセンターがきっかけで國のルールが変わったことだ。
2階の「病児保育室」は、子どもが保育所などで體調不良になるとタクシーで迎えに行き、かかりつけ醫を受診後、預かるシステムを導入。國との交渉で「お迎え型病児保育」が新たに國の要綱に加わり、送迎費の助成が認められた。訪問診療のみを行う「まちなか診療所」は、主治醫不在時の往診代行を行う他、介護度の重い患者や終末期の患者を多く受け持ち、多忙な地域の開業醫を支えている。3階の「産後ケア応援室」は、産後の母子に宿泊やデイケアを提供。宿泊施設のため、當初は「旅館業」として登録するしか選択肢がなかったが、國への要望を出し続けた結果、産後ケア事業のガイドラインに「産後ケアセンター」として新たに位置づけられた。

タクシーでのお迎えを導入した病児保育室

訪問診療のみを行うまちなか診療所

和洋の客室に宿泊できる産後ケア応援室
1階の「こども発達支援室」は、発達の遅れが心配される子どもの訓練や相談を行い、2018年度は延べ11,505人もの利用者があった。地域コミュニティーの場である1階「まちなかサロン」は、市民主體で催しを実施。健康講座やヨガ教室など、連日多くの人でにぎわっている。
富山市まちなか総合ケアセンター所長の酒井さまは、この活況は「総曲輪レガートスクエア」全體の魅力が寄與していると考える。
「センター単體だと利用者が限られ、閉鎖的だったと思います。けれども周りにスポーツクラブやカフェ、學校があり、まち全體の魅力度が高い。それで地域の人たちが來てくださり、センターへの來館も増えているのではないでしょうか。まさに公と民の相乗効果が出ているのを感じます」。



多世代が交流する仕掛けづくり

大和リースは、モノを消費するのではなく、多世代が交流しながらコト(體験)の消費を楽しめるよう、さまざまな仕掛けを提案した。
カフェやスポーツクラブなどをつなぐ2階デッキ部分は「ギャザリングスペース」と名付け、3つの建物を設置してレンタル可能に。1つ目の「ギャラリー」は企業のミーティングなどでも人気だ。2つ目は「バル」。期間限定でかき氷店が出店した時は大行列ができた。3つ目の「和室」は有名な左官職人が內裝を仕上げたこだわりの空間だ。他にも、まちのメインストリートである「貫通通路」をイベントなどでレンタルできるようにした。

複數の建物がつながる立體的な設計

各施設を行き來できる2階デッキ

市民に貸し出すギャザリングスペース
中庭の「パティオ」は、計畫では芝生だけだったが、地域住民の散歩や休憩場所になるように方向修正し、富山のリンゴや樹齢100年のオリーブなどを植樹。近くの幼稚園児たちの遊び場になっている。
ギャザリングスペースの管理やまちなかサロンの運営は、大和リースが支援するNPO法人「まちづくりスポットとやま」が擔う。
さらに、まちのにぎわいを長期的に維持?発展させていくには、公民の協力體制が不可欠だと考え、「総曲輪レガートスクエア協議會」の立ち上げを提案。公民の擔當者が月に1度集まり、さまざまなイベントを企畫?実行する。毎年夏に開く「親子ガーデン」は、2018年には約2,000人を集客。貫通通路での雑貨フェア、子ども向けの青池學園おやつ作り教室、グンゼ腰痛體操、看護學校での子ども看護師體験などを実施した。



時代の変化にどう対応するか

「総曲輪レガートスクエア」は、全國からの視察が相次ぐ?!溉珖灾误w?視察件數ランキング2018 人口規模別ランキング(人口30萬人以上)」※において、「富山市」は1位、「総曲輪レガートスクエア(富山市まちなか総合ケアセンター)」は2位に輝いた。國內だけでなく、韓國や中國、東南アジア、ヨーロッパからも視察に訪れるという。
大和リース富山営業所の統括所長、粕谷は「これほどまでに注目されるとは思っていませんでした??鄤氦瑘螭铯欷蓼埂工认菠?。そして「全國の自治體さまが抱えている課題解決に向けて、総曲輪レガートスクエアがヒントになれば」と考える。規格建築営業所所長の土肥も「この活況は富山市長のリーダーシップや職員の皆さまの前向きな取り組みに支えられたものだと感謝しています」と語る。
また、民間施設の土地は、大和リースが富山市から30年間の事業用定期借地権設定契約で借りていることもあり、富山市の岸さまは「30年にわたって取り組む事業ですが、大和リースなら長期的に安定した事業を推進していただけるはず」と期待を寄せる。
大和ハウス工業の創業者は「時代の変化に、どう対応するか」という言葉を殘した?!妇t曲輪レガートスクエア」は、富山市が時代の変化に対応するべく取り組んだ先進プロジェクトだ。市の理念と行動に學び、粕谷は今、改めて思う。
「まだまだできることはたくさんある。日々進化しながら、時代に合った取り組みを考え、お客さまと一緒に進んでいきたい」。
※出典/日経BP総研Webサイト「新?公民連攜最前線」アンケート調査
※掲載の情報は2019年8月時點のものです。