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      連載:未來の旅人 全國90カ所に広がる、私設図書館「みんとしょ」。焼津のまちから始まった市民自治の輪

      連載:未來の旅人

      全國90カ所に広がる、私設図書館「みんとしょ」。焼津のまちから始まった市民自治の輪

      2024.12.26

        日本屈指の水揚げ量を誇る、焼津港。漁師町として名高い焼津の地に、全國から注目を集める「図書館」があります。「みんなの図書館さんかく」は一般的な図書館とは異なり、分割された本棚をたくさんの"オーナー"たちが月額利用料を支払うことで所有し、自分の好きな本やおすすめの本を並べる仕組みです。

        「さんかく」を手がけたのは一般社団法人トリナス代表理事の土肥潤也さん。創業から4年が経ち、"みんとしょ"モデルは全國90カ所にも広がっています。図書館といえば公共施設、行政が運営を擔うイメージが強いかもしれません。土肥さんはなぜ、民間で図書館を立ち上げるに至ったのでしょうか。

        「さんかくは市民自治をどうつくっていくかの、実験の場なんです」と話す土肥さんに、その意図やこれまでの背景、目指す先を聞きました。

        お客様はひとりもいない。まちへの參畫を促す図書館

        焼津駅の南口を出ると、焼津駅前通り商店街が見えてきます。全長約400mの道沿いには、飲食店をはじめ30ほどの店舗が軒を連ねています。その真ん中あたりに「みんなの図書館さんかく」は位置しています。

        「図書館」というものの、広さは10坪程度。この中に約60個の本棚が並んでおり、その一つひとつをオーナーが月額2000円で所有しています。

        所狹しと並ぶ本棚に目を向けると、さまざまなジャンルの書籍が目に飛び込んできます。漫畫、エッセイ、俳句、古典、寫真集…。それぞれの本棚オーナーが「面白い」と思うものを思い思いに並べています。

        現在、約600人が借り手として登録しており、本を借りるには初回登録料の300円を払えばあとは無料です。さんかくは、本棚オーナーの月額利用料で運営されており、家賃や光熱費など必要経費を賄いながら、小さいながらも収益を上げられていると言います。

        「売り上げを増やすことを第一に考えると、本來の目的からズレてしまう。それに、どう考えてもたくさん稼げるビジネスモデルではなくて。棚や借り手をたくさん増やそうとか、ここで儲けようというのは考えていません。大事なのはいかにオーナーさんに楽しく継続してもらうかなんです」と土肥さんは話します。

        取材は「さんかく」の向かいに位置する、「みんなの公民館まる」にて。

        オーナーは20?70代と幅広く、9割が市內と隣接している市に住む人たちです。月額2000円を支払い本棚を"所有"する感覚を持つことで、自然と場に対してのオーナーシップを持ってもらうことを大切にしています。店頭に立つスタッフはおらず、時にはオーナー自らが店番を買って出ることも。

        「私たちの特徴は、全員が運営の當事者だということ。お客様はひとりもいないんです」。

        その言葉に、土肥さんがさんかくを通して実現したい「私設公共」——行政だけに頼らず、まちの人たちとまちをつくる考え方が現れています。

        公園で遊べなくなったのは"自治性"が取り除かれた結果

        もともと若者の社會や政治參畫に取り組んできた土肥さん。さんかく立ち上げのきっかけのひとつに、2018?2019年に文部科學省の青少年指導者交流事業の派遣団として、ドイツに約2カ月滯在した體験があります。

        「ドイツでは、まち全體が子どもの居場所になっていました。子どもたちが公民館や図書館で遊ぶ姿は當たり前でしたし、大人たちも自分の家かのようによく掃除をしていた。市民が自分たちで公共に関わり、公共をつくっている印象を受けたんです」。

        帰國して、日本を見つめてみると、市民自治が根づいていないことに気づきました。例えば、公共スペースのはずの公園には、「ボール遊び禁止」などの看板が貼り出され、子どもたちができることは限られていました。

        「住民がうるさい、危ないと苦情を入れ続けた結果、何もできなくなってしまいました。こうしたことは公園だけに限りません。道路で雑草が伸びているから『なんとかしろ』と苦情を入れる人もいます。ちょっとしたことでもすぐにクレームを入れるということは、自治性が取り除かれ"お客様化"している現れ。行政を一方的に消費する"サービス"として捉えすぎているんです」。

        そうなった原因にはこれまでの社會的背景やまちづくりのやり方があるのではないか、と分析します。

        「高度経済成長期以前は、住民も當たり前に地域のことや公共のことに関わっていたと思うんです。ですが所得倍増を目指して、まちづくりは行政がやるから、住民は働いて経済成長させてくれと、役割分擔が明確化されてしまいました。でも人口減、稅収減の未來が見えている中で、今後はそうもいかなくなります」。

        土肥さんは、西日本のとある消滅可能性都市に指定されているまちに足を運んだ時の言葉を鮮明に覚えています。

        「小さな限界集落でしたが、ご高齢の方たちが『もう俺たちが死んだらこの集落は終わりでいいんじゃないか。子どもや孫にここに住めとは言えない』と言っていたんです。高齢者の気持ちもよくわかりましたが、この発言を聞いた時、ある意味で市民自治の失敗と言っても過言ではないと感じました」。

        一方で、稅収面が豊かすぎる自治體にも懸念を示します。

        「子育て世帯にとって暮らしやすい、お金がかからないと謳ったことで、実際に人口が増えているまちがあります。そうしたまちは、豊かな行政サービスに惹かれて移住しているから"お客様感"が強い。ファミリー層は多いのに、自治會やPTAの加入率が悪いとか、地域で続いてきたお祭りが成立しなくなってるという聲も上がっています」。

        では、どうやって住民へまちづくりに參加してもらうのがいいのでしょうか。土肥さんは「まずはまちに関わることって楽しいって感じてもらいたいですね。メディアでは人口減少や、地方の人口流出、少子高齢化などの課題を指摘して煽ったりすることがありますが、煽られてまちに関心を持つかというと、持たないんじゃないかな。さんかくでは、市民自治の問題意識を持っていますが、表には出していません」と話します。

        みんとしょのコピペが増える? 90カ所に増えて感じたこと

        図書館という「公共空間」を自分たちでつくり運営していく——。住民がまちに參畫していく"みんとしょ"モデルが、日本中に広がっていくことに危機感を覚えた時期もありました。

        「みんとしょが全國30カ所くらいに広がった頃、今後手法だけが真似されて、コピペのような施設が広がっていくかもしれない、と懸念していました。ですが、今は型を決めなくて良かったと思っていて。僕が『みんとしょはこういうものだ』と決めてしまうと、オリジナリティが育たないですよね」。

        結果的に"みんとしょ"自體にも自治性が育ち、カフェやホテル併設型など、各地域でさまざまな形が生まれています。土肥さんは、「さんかく」で自治性が育つ背景として、居場所として機能しているのも大きいと続けます。

        「例えば50代のオーナーさんで、毎年サラリーマン川柳に応募している人がいるんです。過去には優秀作品に選ばれたこともあるのですが、おそらく家族や職場で興味を持ってくれる人はあまりいない。でもこの本棚に自分の川柳を置くと借り手さんから反応がある。本棚を通じて自分を表現したり、人と通じ合えるから、"新しい居場所ができたみたい"と言っていました」。

        本棚には、本だけではなくノートが置かれ、オーナーと利用者がやりとりするシーンもよく見られます。

        最近、嬉しい出來事があったそうです。

        「さんかくにもっと顔を出そうと思うって言ったら、オーナーさんたちからもう來なくていいって言われちゃって。自分の居場所でもあったのに、追い出されてしまった(笑)。でも、裏を返せば自分が死んでもここは回っていくということです。それに、ゆるやかに変化していくのっていいことだと思うんですよね。本棚オーナーでも辭める人もいるし、広がったみんとしょの中にも、続けられずに閉まっていくものもある。楽しみ続けるために、無理して続けない。それでいいんじゃないかな、って思っています」。

        子どもも大人も、一人ひとりが「良いまちとは何か?」を考える

        「さんかく」を拠點に人が集まり、集まった人たちが周囲の店を利用するようになり、まち全體が活気づいていく。まちづくりのトップランナーとして注目されている土肥さんですが、まちづくりを考える上で大切にしていることがあります。

        「橫浜の都市プランナー田村明さんが書かれた『まちづくりの発想』という書籍があるんですが、田村さんの定義によると『良いまちをつくることがまちづくり』だというんです」。

        一見すると當たり前にも思えるこの言葉を、土肥さんは「良いまちとはなんだろう、と考えることが市民自治の第一歩なんですよ」と解釈しています。

        「"良い"というのは、人によって違う。年齢や各々の人生フェーズによっても違います。それに、"まち"の印象も人それぞれ違います。僕が考えるまちは商店街を中心としたこのエリアですが、小學生が考えるまちはもっと小さいかもしれない。それを一人ひとりが考えて、まちにオーナーシップを持つ人を増やすのがまちづくりかなと思っています」。

        PROFILE

        土肥潤也

        土肥潤也Jyunya Dohi

        1995年、靜岡県焼津市生まれ。早稲田大學社會科學研究科修士課程修了、修士(社會科學)。2015年に、NPO法人わかもののまちを設立。2020年に一般社団法人トリナスを共同創業、現在は代表理事。焼津駅前通り商店街を起點に、完全民営の私設図書館「みんなの図書館さんかく」を開館。內閣府 若者円卓會議 委員、こども家庭庁こども家庭審議會 委員、東京都青少年問題協議會若者部會座長などを歴任。2024年9月に「みんなの公民館まる」を立ち上げる。

        未來の景色を、ともに

        大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

        大和ハウスグループは、まちに関わる全ての人や生き物が幸せになるまちづくりを目指し取り組んでいます。住宅やインフラを整えるだけではなく、それぞれのまちの価値を紐解き、未來につなげていきます。

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