大和ハウス工業株式會社
オランダの工場に10億円を新規投資し、歐州事業を拡大
大和ハウス工業は、オランダの既存工場に約10億円を投資し、人員も2割強増員するなど歐州での事業を強化しています。
當社は、「第7次中期経営計畫」のもと、2026年度までに海外事業において売上高1兆円を目指しています。その中で、注力エリアの一つである歐州事業で売上高500億円を掲げていますが、グループ會社のダイワハウスモジュラーヨーロッパが展開するオランダ、ドイツの住宅市場と事業の現狀を紹介します。
1. 歐州の住宅市況
(1) オランダの住宅市場
オランダでは、ウクライナやシリアなどからの難民移入による人口の急増や高齢者人口の増加によって住宅供
給數が不足しています。オランダ內務省によると、住宅需要を満たすには、2020年から10年間で84萬5000戸の
住宅を建設する必要があります。しかし、オランダ統計局によると、2022年には新築住宅建設數が過去最高の
約74,000戸を記録しましたが、依然として供給が追いついていない狀態です。さらに、高齢化が進む一方で、高
齢者向け施設も不足しています。

また、建築物に対しては一定の環境基準を求める法制化が進められています。住宅法および建築規則ではエネ
ルギー効率係數が規定されており、「建築エネルギー効率規則」では住居や建物にエネルギー効率証明書を求め
ています。そのため、オランダでは、自然エネルギーを活用した高エネルギー効率の住宅や、再利用できるよう
うな建築資材を使用した建築物への関心が高い狀況が続いています。歐州の統計情報を統括するユーロスタット
によると、2021年の循環型材料利用率(※2)において、EUの中でもオランダが34%と最も高い結果となって
います。
※2.排出された廃棄物のうちリユースやリサイクルされたものの割合のこと。
(2)ドイツの住宅市場
ドイツでは、移民や難民の受け入れに伴う人口増加が顕著であり、住宅不足が深刻化しています。ドイツ連邦
統計局によると、2020年については約30萬戸の住宅が不足していたため、ドイツ連邦政府は2021年內に約40萬
戸の新設住宅供給を目指すことを発表しました。しかし、実際には建築資材の高騰や職方不足といった課題に
より、目標を達成できず、依然として住宅への入居が厳しい狀況です。

また、法律の整備や財政支援などにより、建築物に対する環境意識は高まりを見せています?!附êB物エネル
ギー法」では、建築物におけるエネルギーの効率的な利用を確保することを目的として、冷暖房熱や電気の生成
などに自然エネルギーを活用することを推進しています。財政支援としても、エネルギー効率の高い建築物の新
設や、既存建築物のエネルギー効率を高めるため、補助金や融資の支援をしています。
2. 當社のヨーロッパ進出とモジュラー建築
當社は、ヨーロッパにおいて高齢者や學生向けにモジュラー建築(※3)を供給しています。2020年にオランダ
で「Daiwa House Europe B.V.(ダイワハウスヨーロッパ)」を設立し、2021年にはモジュラー建築の販売および
レンタルを行う「Flexbuild Holding B.V.(フレックスビルドホールディング)」(現:Daiwa House Modular
Europe B.V.:以下「DHME」(ダイワハウスモジュラーヨーロッパ))およびその事業會社である「Jan Snel
Group(ヤンスネルグループ)」を子會社化しました。これを足掛かりとして歐州へ本格的に進出し、 2023年12
月には、工場の従業員を2割強増やして500人體制とし、ユニットの増産に向けて組織を整えました。あわせて、
オランダの既存工場に約10億円を投資し、無人搬送車(Automated Guided Vehicles: 以下「AGVs」)の上でユニ
ットを組み立てるライン生産方式を導入しました。従來の方法では、ユニットをその場で固定して組み立てるの
が一般的でしたが、AGVsの導入により、ユニットが動き、作業員がその場で繰り返し作業を行えるため、労働力
の削減、作業時間の短縮を実現しています。
※3.工場でユニットを作って、現場で組み立てる工法。

さらに、2022年にはドイツで施設管理を行う「Capital Bay Group(キャピタルベイグループ)」と合弁會社
「Daiwa House CB B.V.(ダイワハウスシービー)」を設立し、ベルリン郊外のフュルステンヴァルデ市にある工
場を取得しました。年間最大約2,500ユニットを生産できる工場で、集合住宅や學生寮を主として、高齢者施設も
供給することができます。最近では、ウクライナなどからの避難民向けの仮設住宅もオランダを中心に26カ所、
1,800ユニットを提供しています。(2023年12月末時點)

3.モジュラー建築のメリットと持続可能性
モジュラー建築には、効率的な部材生産や環境配慮などの特長があり、DHMEが供給するモジュラー建築におい
ても短工期とCO2排出量削減をより高水準で実現できる體制を目指しています。
(1)効率的な部材生産
規格化された寸法で部材を生産するため、工場での生産ラインが効率化されます。また、環境の整った工場
で生産した鉄骨ユニットを組み立てるため、建設現場での施工作業時間が短くなります。施工現場でも天候の
影響を比較的受けず、工期の遅延リスクも減少するため、鉄筋コンクリート造の建物と比較すると、20~50
?。ザ炭sできるとされています。
(2)環境への配慮
必要な部材を工場で適切に用意して現場に搬送するため、建築現場で発生する部材のロスをおさえることが
でき、輸送時のCO2排出量も削減可能です。部材の製造から現場施工、廃棄まで含めた単位面積當たりのCO2
排出量は、鉄筋コンクリート造の建物と比較すると、約50%減らすことができます。
また、通常の建物は解體すると大半が産業廃棄物として処分されますが、モジュラー建築の部材は分解?再
加工して再利用可能であるため、廃棄物削減にも貢獻することができます。

4. 今後の展望
モジュラー建築を中心に、2024年度からの5年間で約1萬5,000世帯分の住宅供給を計畫しており、將來的には、
年間1萬ユニットの生産を目指しています。
また、環境先進國である歐州において、環境配慮の技術を蓄積し、日本に持ち帰るだけでなく、米國など世界各
地にも展開させていき、環境負荷の少ない形で社會課題の解決を実現していきます。