三度目のブームを迎えたスマートハウスですが、ようやく従來からの課題である家電?設備機器の通信プロトコルの標準化にも目処が立ち、対応した機器も各社から市販されるに至りました。ECHONET Liteに対応した機器であれば、基本的にはどこのメーカーのどの製品を接続しても動作する(はず)ですので、スマートハウスを実現するのに全ての家電?設備機器を一社で統一しなくてはならないという狀況は改善されつつあります。
しかし、通信プロトコルの標準化も、その上で提供される魅力的なサービスがあって初めて価値が出るというものです。スマートハウスにおける機器やメーカーのマルチベンダ化に目処が立ってきた現在、次なる課題はアプリケーション、サービスのマルチベンダ化だと考えています。
當社ではそれを実現する為のツールとして、2009年に経済産業省にて公募された「スマートハウス実証プロジェクト」において「住宅API(統合API)」の提案を行いました。(→詳しくはこちら)そして2011年10月には自社のHEMS商品(D-HEMS)の基盤システムとして実用化を行っています。一般的なHEMSでは、アプリケーションはコントローラーの內部もしくはインターネット上のサーバーにhtmlファイルとして実裝するのに対し、D-HEMSでは住宅APIを活用することで、iPadアプリとして実裝し、インターネット上のストアからダウンロードする方式を取っています。APIの仕様さえ理解すれば、誰でも自由にアプリケーションを開発し、配信することができ、スマートハウスを活用したサービス市場の創出に貢獻できると考えたわけです。
一言でいえば、スマートハウスを活用したアプリケーションマーケットを実現したいということなのですが、実際に當社のD-HEMSをアプリとして提供していく過程で、様々な課題も見えてきました。まず、いくら命令が簡単だとはいっても、実際に商品の使用に耐えるアプリを開発するには相応の費用や動作検証の時間がかかります。またその後の保守?運用の負擔も想定を超えていました。タブレット端末の商品切り替えやOSのアップデートに住宅會社の社員がやきもきしているという姿は、一昔前では想像できなかっただろうと思います。次に、當社以外の方が開発を行うには、実際に動作する機器や開発支援ツールが必要です?,F狀では開発を行う為には當社で住宅を購入若しくはリフォームして頂く必要があり、それはそれで有り難いのですが現実的ではありません。また、仮に開発ができたとしても、供給方法や責任區分についても明確になっていません。中身はインターネット技術をベースとした通信システムながら、扱う側は従來の住宅設備機器として捉えており、ベストエフォートや自己責任といったネットの常識が通用しません。
一連の取組を経て思ったのは、新たな市場を創出するには新たなスキームが必要だということです。とはいえ、當社だけで頑張って実現できるものでもありません。まずは実現に向けた第一歩として、住宅に汎用的なAPIが搭載されたらどんなことができるのか、そこにはどのような課題があるのかということについて紹介することから始めようと思い、このサイトを公開しました。具體的には他社とのコラボレーションの中で開発されたアプリや研究所スタッフ自身が試作したアプリの事例、住宅APIの使い方や開発環境といった技術的解説や苦労話を紹介していく予定です。
by 管理者 大和ハウス工業 株式會社 総合技術研究所 吉田 博之