消費稅と住宅購入
そもそも消費稅とは何でしょうか。
商品やサービスを購入するときに、購入する人が支払う稅金です。現在の稅率は8%なので、100円の買い物をすれば8円、1萬円なら800円、1億円なら800萬円かかります。
原則的にはあらゆる商品やサービスが対象ですが、例外があります。住宅関連では、土地が例外に該當します。土地はいくら使っても土地自體がなくなることはなく、消費とは考えにくいとして、非課稅とされています。
ですから5000萬円の住宅(=土地2000萬円+建物3000萬円)を購入するときにかかる消費稅は、5000萬円の8%ではなく、建物分3000萬円の8%分=240萬円となります。
非課稅品目としてはこのほか、醫療や介護、學校の授業料、株式、商品券、切手などもあります。
消費稅はなぜ上がるのですか。
消費稅は1989年に稅率3%で導入されました。1997年に5%、2014年に8%になりましたので、今回が3回目の稅率引き上げになります。
背景にあるのが、國の財政悪化です。2018年度の國の一般會計予算では、歳出の97.7兆円に対し、稅収は59.0兆円しかありません。積み上がった國の長期債務殘高は2018年度末に915兆円と國內総生産(GDP)の1.5倍以上に膨れあがる見通しです。
社會保障費が増え、歳出は増える一方です。しかし、所得稅や法人稅を増稅すると、お金持ちや企業が國外に流出するなどして、経済に悪影響が出ることが懸念されます。そこで、消費稅が著目されたのです。
消費増稅で変わる負擔額
住宅の購入で消費稅がかかるのは建物部分だけですか。
いいえ。実際には住宅の購入に関連する様々な取引が消費稅の課稅対象になります。
例えば、不動産會社に支払う仲介手數料には消費稅がかかります。仲介手數料の上限はたいていの場合、売買価格×3%+6萬円とされています。5000萬円の物件なら上限は156萬円ですが、これに8%の消費稅が発生します。司法書士に登記を依頼する際の手數料や、住宅ローンを組んだ場合に支払う金融機関への手數料にも消費稅はかかります。
また、住宅購入そのものではありませんが、住宅購入とは切っても切れない引っ越しや家具?家電の購入などにも消費稅はかかっています。家の建て替えの場合には、古い家屋の解體工事費用も消費稅の対象です。
稅率引き上げで消費者の支払額がどの程度変わるのでしょうか。
住宅ローンを組んで、3000萬円(消費稅別)の物件を購入したときに、総支払額がどう変わるのかの概算をファイナンシャルプランナーの深野康彥さんにまとめていただきました。稅率が8%なら消費稅は240萬円ですが、10%になると300萬円と60萬円増えます。経費には消費稅のかかるものとかからないものがありますが、引っ越し代などの新築にあたって必要な経費500萬円分に稅率引き上げの影響があったとして、全體で70萬円の必要額が増えると仮定しました。
金利は現在の水準に近い年1.35%に加え、年1.55%と年1.85%の3パターン、返済期間は25、30、35年の3パターン、頭金として500萬円、700萬円、1000萬円の3パターンを想定しました。※
金利年1.35%で返済期間25年、頭金は1000萬円の場合、総支払額は消費稅8%なら2357萬円ですが、消費稅10%なら2440萬円と83萬円増えます。一方、金利年1.85%で返済期間35年、頭金が500萬円の場合、総支払額は消費稅8%なら3397萬円ですが、消費稅10%なら3493萬円と96萬円増えることになります。
金利が高く、頭金が少なく(=借入額が多い)、返済期間が長いほど、消費稅率引き上げの影響が大きくなる傾向にあります。
消費稅率の引き上げと金利上昇が合わさると、負擔増はもっと明らかになります。上の例で、頭金500萬円、返済期間35年の場合、金利年1.35%で消費稅8%の時は、総支払額は3138萬円になります。金利が年1.85%で消費稅10%の時の総支払額は、これより355萬円も多いのです。
※將來の金利動向により、実際のご返済額は試算結果と異なる場合がございます。
●消費稅引き上げで負擔はこう変わる
※3000萬円(稅抜き)の住宅を購入し、経費も含め必要額が70萬円増えたと仮定。上段が消費稅が8%時、下段が10%時。
※ファイナンシャルプランナーの深野康彥さん試算。
稅率8%で買うには
消費稅率が引き上げられる前に購入すれば、消費稅は8%になるのでしょうか。
ここは正確に考える必要があります。消費稅率で8%が適用されるには、稅率が10%になる前の2019年9月末までに住宅の引き渡しを受けることが條件です。10月より前に売買契約を結んでも、引き渡しが10月以降になると、稅率は10%になるのが原則です。
ただ、注文住宅の場合には特例があります。工事が天候などの影響で遅れ、予定していた時期に住宅の引き渡しを受けられないことがあります。そんな場合でも、半年前の2019年3月末までに売買契約を結んでいれば、引き渡しが10月以降にずれ込んでも、稅率は8%が適用されるのです。逆に言えば、3月末までに契約していれば、消費稅率は8%です。
住宅の購入では、ハウスメーカーとの相談や銀行の住宅ローン審査などに時間がかかることもあります。消費稅引き上げはまだ先だと思っていても、殘された時間はそれほど多くないともいえます。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表 深野康彥さん
住宅購入で消費稅を気にされる方は非常に多いですが、稅率引き上げの直接の影響は數十萬円です。住宅購入にとっては、決して大きな金額とは言えないかもしれません。住宅ローンを組む場合は、金利動向や返済期間の方が総支払額に大きな影響を及ぼします。
とはいえ、元から頭金が少なかったり、返済期間が長かったりする方は、消費増稅の影響を受けやすくなります。総支払額は金利上昇にも左右されやすくなります。収入に比べて目いっぱいローンを組む方は、実際の負擔がどう変わるのかよく見極めることが大切です。
住宅購入で陥りやすいのは、建物や土地の価格だけしか見ないことです。様々な手數料や印紙稅、引っ越し代などの諸経費で、物件価格の5~7%程度かかると考えた方がよいです。注文住宅の場合は、門やガレージ、庭などのエクステリア、空調や照明などの工事費用もかかりますし、建て替えですと解體費用や仮住まいの費用も必要です。
住宅購入後にもかかるお金もあります。固定資産稅や駐車場代がありますし、家具や家電を新たに購入することもあるでしょう。マンションなら管理費や修繕積立金もあります。
住宅購入の際は、こうした費用も考慮に入れたうえで、計畫を立てるべきです。

- 深野康彥(ふかのやすひこ)
- ファイナンシャルリサーチ代表 ファイナンシャルプランナー
- 1962年生まれ。大學卒業後、クレジット會社を経て獨立系FP會社に入社。FP業界歴30年を誇る。1996年に獨立し、ファイナンシャルリサーチを2006年設立。メディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、稅金や年金などのお金周り全般の相談業務や啓蒙を幅広く行っている。テレビ、ラジオにも多數出演。主な著書に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)。
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※掲載の情報は2018年8月現在のものです。