Vol.1 鞍型屋根の家(インドネシア)
インドネシアの気候、バタク?トバの生活
インドネシアは東南アジアに位置し、ジャワ島やスマトラ島をはじめ、大小合わせて1萬3000以上の島々からなる國です。國土の面積は日本の約5倍にあたる約189萬平方キロメ?トル。赤道直下の國であり、主に高溫多濕の熱帯性気候に屬しますが、広大な國のため、さまざまな気候特性を持っています。首都ジャカルタでは、最高気溫は30~34℃の間で1年を通してあまり変化はありません。雨季と乾季があり、おおよそ5~10月は乾季で濕度もやや低めになります。11月~4月は雨季。午後を中心に1日に數(shù)回スコールがあります。
スマトラ島の北部にあるトバ湖周辺には、「バタク」という民族の集団が居住しています。バタクのなかでも、中心的な存在として知られているのがバタク?トバです。彼らが暮らすトバ湖の周囲やトバ湖に浮かぶサモシル島は、赤道付近にありながら、標(biāo)高が900~1,600メートルと高く、そのため1年を通して溫暖で過ごしやすい気候です。バタク?トバは、この地域でおもに水稲耕作(すいとうこうさく?水田で稲を栽培すること)や漁業(yè)を行って生活しています。
鞍型屋根の家の特徴
バタク?トバの家を見たとき、まず目に入るのが大きな鞍形切妻屋根です。家の出入口から見ると、開いた本を逆さにしたような切妻屋根の特徴が見て取れます。また、橫から屋根を見ると、まるで馬の背中にのせる鞍のような形をしていることがわかります。屋根部分を前後に突き出た形にすることで、やじろべえのように柱の上でバランスをとって安定させているのです。この突き出た屋根は日陰を作る役割もしています。
家のもう1つの特徴は、高床式であることです。現(xiàn)在は地床のものもありますが、この地域では伝統(tǒng)的に高床式がとり入れられてきました。1階の床は地面から約1.6メートルの高さにあり、家の出入りは床下から入るものと、高い床に外からハシゴをかけて入るものとに分かれます。外からハシゴをかけて入る形式のものは、米の倉を住居用に変えた家です。家の床下では鶏や豚などの家畜が飼育されています。食事の殘り物などは床のすき間から床下へとすてられ、家畜のエサになります。
間仕切りのない部屋
バタク?トバの家は、高床の広々としたワンルームで、仕切りはありません。中央の階段に続く通路部分は「テラガ」と呼ばれ、家族の共有スペースです。テラガにはかつて火を燃やす?fàn)tが置かれ、その上に薪(まき)や食器を置くラックが設(shè)置されていました。近年では臺所スペースを家の後方に増築することも多くなっています。
テラガの左右のスペースは、家族の數(shù)によって4~6つに分かれています。右手後方は「ジャブ?ボナ」と呼ばれる家長のスペース。入口すぐの左手は長男家族が使用する場所である「ジャブ?スハット」というぐあいに、間仕切りのない部屋でもそれぞれ使うスペースが決められています。
建物の真ん中はワンルームの部屋ですが、その前方と後方に中2階のデッキのような床が設(shè)けられています。ワンルームの中央の通路のうえに、前方と後方の床を結(jié)ぶ空中廊下がかけられている場合もあります。中2階の前面の床は屋外まで伸びていて、ドラムなどいろいろな種類の楽器が置かれています。これらの楽器は屋內(nèi)外のさまざまな祭儀で使われます。
住まいの間取り(一例)
機(jī)能的な集落「フタ」
バタク?トバの家がある集落は、共通の祖先を持つ一族が集まって暮らしています。「フタ」と呼ばれる集落の周囲は、堀割り(地面を掘ってつくられた水路)と高い土壁、そして竹林で囲われています。近年では堀割りや高い土壁ではなく、竹や樹木を周囲に植えて、集落の境界にしているところも少なくないようです。
1つの集落はそれほど大きくはなく、家の數(shù)は4~6棟ほど。鞍形屋根の家と向かい合うように「ソポ」と呼ばれる倉が建っています。家の後方では野菜などが栽培されています。集落の前にはバンヤン(ガジュマル)の木、門の近くには集會や作業(yè)のスペースがあり、長方形の集落の中央には、結(jié)婚式や葬式など祭儀のときに使われる広いスペースが設(shè)けられています。
バタク?トバの集落の例
POINT
- カッコいい屋根は、日陰もつくってくれるんだ。
- 床の高さを利用して、家畜を飼っているのね。
- 高い床なら、雨でも安心だね。風(fēng)通しも良さそう!
參考文獻(xiàn):布野修司「鞍型屋根の家―バタク?トバ、北スマトラ、インドネシア」布野修司編『世界住居誌』昭和堂、2005年、98-99頁