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コラム No.28-1

CREコラム

今さら聞けない「不動産証券化」(1)証券化は、こうして始まった

公開日:2016/08/31

不動産の証券化と聞いてすぐに分かる人は、財務や経理に精通した擔當者に限られるのではないでしょうか。保有する不動産を有効活用する「証券化」は、財務の改善に大いに力を発揮します。企業にとって重要な経営資源である不動産を証券化するには、全社的な理解が不可欠です。不動産証券化の知識、歴史について、もう一度、おさらいしておきましょう。

原型は米國で始まった住宅ローン債権

証券化とは、土地やビルなど、そのままでは切り売りできないような資産価値のあるものを、小口の有価証券に替えて資金を集めることを指します。資産自體が持つ価値(信用力)によって資金を調達するので、銀行借り入れに比べて低コストで資金調達ができるメリットがあります。土地を擔保に銀行から借りることを思えば、まさに革新的な手法です。

証券化は米國で1970年代、住宅ローン(債権)の転売によって始まったと言われています。銀行が長期の貸付債権を保有するのは経営リスクが大きいと考える金融當局の方針から、住宅ローンを小口債権化して販売したことで普及しました。住宅ローン債権は、例えば「借入額3000萬円、20年返済?年利5%」のように金利が付いている有価証券。これを集めたのちに切り分けて証券化すれば、立派な金融商品になります。ちなみに「フラット35」は、民間銀行と住宅金融支援機構が証券化の仕組みを利用して作った住宅ローンです。

不動産の場合では、テナントビルの証券化を考えると分かりやすいでしょう。入居するテナントから定期的に入ってくる賃貸収入が、投資家に安定的な配當をもたらします。このように、ある一定の期間、安定した収益をもたらす資産ならば、債権や不動産、さらには事業そのものも証券化の対象資産となります。

BIS規制で銀行が証券化に目をつけた

証券化は、銀行借り入れという直接金融から間接金融への移行を加速させました。しかし、証券化によって企業融資が伸び悩んだ銀行で、皮肉にも証券化が深く進行することになります。

1980年代に本格的な金融の國際化が始まりましたが、財政破たんする國が出て累積債務が問題になったり、金融工學の技術を駆使した信用リスクの高いデリバティブ取引が増加したりするなど、金融不安が起きていました。

破たんした米國の銀行は自己資本が低かったため、國際金融の中央機関である國際決済銀行(BIS)は1988年、國際業務を営む銀行は自己資本比率8%以上を達成することを義務付けます。そして1993年、わが國の銀行に適用されました。これをBIS規制と言います。國際業務を展開する都市銀行や地方銀行は1990年代、8%をクリアするために、保有する資産を証券化していきます。

どうしたかというと、資産を減らすために融資を減らしたのです。自己資本比率は、簡単に言うと自己資本(分子)を貸し倒れリスクのある資産(分母)で割ったものです。分母を小さくすれば、自己資本比率が高まります。そこで使ったのが証券化。保有する住宅ローンなどの貸出債権を証券化して資産から外しました。また貸出そのものを抑制して貸し渋り、貸しはがしと批判されました。

流動化と証券化?

流動化とはなんでしょうか?証券化と違うのでしょうか。証券化は、前述したように土地などの資産を小口の有価証券に替えて販売し資金を集めることですが、流動化は、小口化した有価証券を多くの人に買ってもらうようにすることです。

當たり前ですが、土地やビルは小分けすることができませんから、そのままでは売れません。売れるように紙の証書にして投資家が買えるよう、市場に流通させます。この証書を資産擔保証券(Asset Backed Security =ABS)といいます?!袱长卧^書は、これくらいの価値があります」という擔保(裏付資産)を付けた証文です。ABSを発行するには、複雑な手続きが必要ですが、これは改めてお話しましょう。

不動産は証券化に適した資産である

証券化が可能な資産のうち、最も普及しているのは、不動産でしょう。証券化で必要な資金を低コストで調達できるうえに、証券化したあとも、土地や建物は所有者が引き続き利用することもできるからです。

不動産の証券化によって、企業価値が高まる、と言われます。これはどういうことでしょうか。昔は、企業が不動産を多く保有していると、その企業は資産を持っていると高く評価されていましたが、いまはその逆です。株式や不動産はリスクのある資産と見なされているからです。
そこで、企業は不動産=資産を減らして、ROA(當期利益を総資産で割った比率)を高めるのです。ROAは、企業が保有する資産がどれだけ利益を生んでいるかを示す財務指標です。この數値が高ければ、その企業は資産を効率的に使って経営していると評価されます。このときに使われるのが証券化。資産を売卻すればROAが高まり、企業価値が上がるというわけです。

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