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コラム No.27-10

サプライチェーン

秋葉淳一の「CREはサプライチェーンだ!」 Vol.3 「當たり前を地道にコツコツ」実現(xiàn)したヨドバシカメラのロジスティクスシステム

公開日:2017/01/26

ヨドバシカメラとは

今回は、我々の重要なお客様の1社である「ヨドバシカメラ」の卓越したサプライチェーンについて紹介したいと思う。
ヨドバシカメラは、1960年に渋谷でカメラや寫真用品を扱う店として創(chuàng)業(yè)し、現(xiàn)在では(2016年3月)、売上高:6,796億円、経常利益:512億円、店舗數(shù):23店舗、従業(yè)員:5,000人を誇る企業(yè)へと成長した。
売上高は、(表—1)にあるように家電量販店業(yè)界の中で第4位であるが、店舗あたりの売上高は300億円に迫る、売上高経常利益率は7.53%と業(yè)界內(nèi)他社が5%未満であることを考えると圧倒的な數(shù)字となっている。

  売上高(単位;億円)
(2016/5/12現(xiàn)在)
店舗數(shù)
(2016/3/31現(xiàn)在)
店舗當たり売上
(単位:億円/店舗)
ヤマダ電機 16,127 1016 15.9
ビックカメラ 7,953 38 209.3
エディオン 6,920 432 16.0
ヨドバシカメラ 6,796 23 295.5
ケーズデンキ 6,441 451 14.3

(表—1)家電量販売り上げ比較

「ヨドバシカメラ」には、「お客様の聲で動く」という理念がある。
「夢を実現(xiàn)する糧はお客様の聲です。 夢と現(xiàn)実にはギャップがあります。そのためにヨドバシカメラは、お客様の聲で動きます。 お客様の聲を最高の原動力として、ヨドバシカメラの価値観を通じて夢を現(xiàn)実にするために動きます。」(株式會社ヨドバシカメラホームページより)
これがヨドバシカメラを成長させ続ける原動力であり、後述する特色でもある。この理念に則り、我々消費者の聲をもとに夢を現(xiàn)実としていく企業(yè)戦略と資産を活用したロジスティクス戦略について紹介する。

家電量販店とは

「家電量販店」というと、皆さんはどのような企業(yè)名を思い浮かべるだろうか?
このコラムで取り上げるヨドバシカメラを思い浮かべる人もいれば、ヤマダ電機、ビックカメラ、エディオン、ケーズデンキなど、皆さんの行動範囲、生活圏において目にしている店舗(ネット通販サイト含む)だったり、CMの音楽が頭の中を流れる企業(yè)だったりする人もいるだろう。あるいは、過去に利用した時のサービスや利便性が良かった企業(yè)なのかもしれない。
「家電量販店」の成り立ちは、大きく4つにカテゴライズされる。

電気街?パソコン店系(上新電機(業(yè)界6位)、ソフマップ(ビックカメラ子會社))
地域電器店系(エディオン(業(yè)界3位)、ケーズデンキ(業(yè)界5位))
郊外電器店系(ヤマダ電機(業(yè)界1位)、コジマ(ビックカメラ子會社))
カメラ店系(ビックカメラ(業(yè)界2位)、ヨドバシカメラ(業(yè)界4位))

このことからもわかるように、「家電量販店」の歴史は再編の歴史でもある。かつて私が子どものころは、家電メーカーの系列販売店(ナショナルショップ、東芝ストア)が自宅近くにあり、そこで生活に必要最低限の家電製品を購入していたものである。
それが高度経済成長の中で、各家庭で多くの家電製品が購入されるようになる。テレビ、エアコンも各部屋に、電子レンジやAV機器も當たり前のように置かれる。結果、消費者が多くの商品の中からメーカーにこだわらず、自分の必要とするものを価格も含めて比較して購入するようになった。この流れに乗って、家電量販店業(yè)界は大きく市場シェアを伸ばしてきたのだ。

しかし、その一方で業(yè)界勢力図は目まぐるしく変化してきている。
Windows95がIT業(yè)界に浸透しつつあったころ、コジマの店舗が次々に誕生していたし、業(yè)務で使用するパソコンを少しでも安く購入する為に、私は何度もソフマップの店舗に足を運んだものだ。そのコジマもソフマップも今ではビックカメラの子會社である。
詳細は割愛するが、ヤマダ電機は、かつて地域電器店系の雄であったベスト電器を子會社にしているし、ケーズデンキは、ギガスや八千代ムセン電機など多數(shù)の企業(yè)を、またエディオンも、エイデン、デオデオ、100満ボルトのど多くの企業(yè)の合併で誕生した量販店だ。
そしてまた、一旦落ち著いたように見える業(yè)界勢力図の変化が、Amazonを中心とするネット通販市場の急成長により、大きな変化、それも業(yè)界內(nèi)に留まらない変化が起こる可能性が出てきたのだ。
これは言い換えれば、カメラ店系のビックカメラやヨドバシカメラが家電量販店大手として成長してきたように、全く別の事業(yè)を行っている企業(yè)でも業(yè)界勢力図を大きく変えるチャンスがあるということだ。そして、「売場」だけを考えている家電量販店のネット通販の売上部分だけであれば、それを超えることは難しく無いということだ。
このような変化の大きな業(yè)界において、ロジスティクスでも、ITでも、オムニチャネルでも注目を浴び続け、結果を出し続けているヨドバシカメラの戦略を覗いてみることにする。

ヨドバシカメラの特徴

ヨドバシカメラは前述したように、店舗あたりの売上高が他社に比べて高い。これは駅前立地(人口集積場所)に大型店を配置しているからだ。店舗數(shù)を少なくすることと大型店舗にすることのメリットはいくつかある。その一方で、リアル店舗だけの時代にはデメリットもあった。その最大なものは、お客様の目に觸れる売場面積の確保である。
ユニクロでも洋服の青山でも、お客様の近くにロードサイド店を展開することで売上を伸ばし、首都圏を中心とした人口集積地への展開においては、ビルインでの店舗數(shù)を増やすことでお客様の目に觸れる売場面積を増やしてきた。

では、ヨドバシカメラが駅前立地の大型店で活用したメリットは何か。その最大なものは、店舗に物流のデポとしての機能も擔わせたことである。
駅前立地(人口集積地)にある大型店舗には、売場とバックヤードを合わせれば相當な店舗在庫が保管されている。この在庫を有効に活用する事で回転率を上げ、ムダな商品の動き(配送)も削減できる。物の流れ、商品供給の流れが非常にシンプルになるのだ。そして、店舗で買い物をするお客様とネット通販で買い物をされるお客様の商圏を重ねることができることも大きなポイントである。お客様が店舗で買い物をしても、ネットで買い物をしても同一店舗の商品が販売されることになり、いずれにしても、その店舗の売上成績になるということである。
実は、一般的に小売業(yè)では、店舗販売とネット通販での販売は、事業(yè)部あるいは本部が異なっており、ネットで販売された商品の取扱いを店舗の販売員が行うことは、売上はネット販売の事業(yè)部、コストは店舗販売の事業(yè)部という捻れが発生してしまい人事評価に影響を與えてしまう。企業(yè)における組織と人事評価制度にも関ることで、他の多くの企業(yè)ではオムニチャネルへの対応で一番苦労していることでもあり、なかなか解決できないことなのだ。

ヨドバシドットコムから見えるヨドバシカメラの強み

ヨドバシカメラにおいても、ネット通販勃興期にはネットでの販売をリアル店舗と橫並びで、1店舗をネット店舗として扱っていた。物流も川崎の物流センターから全國へ配送していたのである。この扱い自體はリアル店舗での販売を続けていた企業(yè)ではどこでも同じだったし、ユニクロや洋服の青山でもそうであった。
その後、ネット通販の市場規(guī)模が大きくなり、一般の人にも普及しだすとヨドバシカメラでも當然のように売上は伸びた。しかし、冷蔵庫のような大物家電を川崎の物流センターから全國に配送していては配送コストが嵩んでしまい利益の確保ができない。「お客様の聲で動く」という形で市場のニーズを把握する一方で「儲からないことはやらない(儲かる方法を考える)」というヨドバシカメラの理念からは外れてしまってきたのである。お客様のニーズにマッチしているからこそ市場規(guī)模が大きくなり続ける、といったネット通販に対応しないという選択肢が無いのであれば、如何にしてネット通販のムダなコストを圧縮するかに知恵を絞ることにしたのである。
その知恵の一つが、ヨドバシカメラの特徴でも記述した店舗に物流のデポ機能を持たせることであり、以前から継続して行っている自社運営の物流があり、倉庫スタッフの正社員比率が96%を超えるのである。これらは、藤沢副社長の言葉を借りれば、「當たり前を地道にコツコツ」であり、その成果が(図?1)にも現(xiàn)れている。最短6時間で配送、當日配送エリアも人口カバー率では70%を超える、離島を除けば全國翌日には無料で配送するのである。

(図—1)ヨドバシカメラのホームページより

最近Amazonのフルフィルメントセンターで使用されている物流ロボットKIVAが話題になっているが、AmazonがKIVAを買収する以前にヨドバシカメラでもKIVAの導入を検討したことがある。當時は日本國內(nèi)で運用保守をどうするかの目処がつかず導入には至らなかったが、常にお客様のためのサービスの一つとしてロジスティクスを捉えている例である。次の図を見ていただきたい、

(図—2)ヨドバシカメラのホームページより

ネットで購入した商品を店舗で受取れることを示したものである。「30分以內(nèi)でご用意いたします」と表示しているが、実はなかなかできる事ではない。表示する為には、その店舗に在庫があることがリアルタイムに把握できている必要もあるし、店舗への指示もリアルタイムでなければできないのである。これができている小売業(yè)は少ない。
店舗在庫をリアルタイムで把握する仕組みは、かれこれ8年前には導入しているが、オムニチャネルが巷で注目され、店舗在庫と物流センター在庫の共有化と言われる遙か前にこのITシステムを導入したのである。
ヨドバシカメラのオムニチャネルの仕組みは、(図—3)を參照してもらいたい。

(図—3)ヨドバシカメラのホームページより

ヨドバシカメラから學ぶ日本のロジスティクスプラットフォーム

ヨドバシドットコムがAmazonと比較されることが多くある。売上規(guī)模や品揃えではAmazonのほうが圧倒しているのにである。それは、(財)日本生産性本部が発表している「日本版顧客満足度指數(shù)」によれば、家電量販店において6年連続で1位となっていることを見れば明らかだ。
このように顧客満足のために、地道にコツコツとロジスティクスにITに資源を投資するのである。「お客様の聲で動いた」結果として。
全國23店舗に対して、物流センターは川崎と六甲のアッセンブリーセンターを含めて6箇所である。アッセンブリーセンター川崎は、2棟合わせると延床面積が284,967m2になる。ちなみに、羽田にあるヤマトのクロノゲートが約198,000m2、Amazonの國內(nèi)最大の小田原FCが約200,000m2である。
物流センターと店舗(デポ)を組合せて自社運営するロジスティクス網(wǎng)とリアルタイムでデータ更新するITシステムが、ヨドバシファンを増やし、ヨドバシファンの買い物頻度を上げる戦略を実現(xiàn)しているのだ。

ヨドバシカメラが、何に興味を持つのか、次に何をするのか、小売業(yè)界の人はもちろん、ロジスティクスに関る人間であれば、その動きは誰しもが気になるだろう。そしてそこには、お客様ニーズに応えて行く戦略が見えてくるし、他業(yè)界においてもヒントになる物が多く存在する。
Amazon以外の選択肢の一つとして、日本を代表する小売企業(yè)として、ヨドバシカメラが「當たり前を地道にコツコツ」実施していくことで強みを発揮して、我々消費者にとってなくてはならない企業(yè)であり続けると確信する。

トークセッション ゲスト:學習院大學 経済學部経営學科教授 河合亜矢子

トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式會社 執(zhí)行役員 河合秀治

トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式會社 COO 安高真之

トークセッション ゲスト:大和ハウス工業(yè)株式會社 取締役常務執(zhí)行役員 建築事業(yè)本部長 浦川竜哉

トークセッション ゲスト:株式會社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

トークセッション ゲスト:明治大學 グローバル?ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆

トークセッション ゲスト:株式會社 日立物流 執(zhí)行役専務 佐藤清輝

トークセッション ゲスト:流通経済大學 流通情報學部 教授 矢野裕児

トークセッション ゲスト:アスクル株式會社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執(zhí)行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸

トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創(chuàng)業(yè)者 滝野 一征

トークセッション ゲスト:株式會社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式會社ローランド?ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式會社アッカ?インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式會社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式會社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式會社アッカ?インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式會社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

「CREはサプライチェーンだ!」シリーズ

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式會社フレームワークス會長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に攜わる。
その後、多くの企業(yè)のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス?リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式會社フレームワークスに入社、SCM?ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業(yè)に応じたオムニチャネルを実現(xiàn)するために奔走中。

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