土地活用ラボ for Biz

コラム No.27-12

サプライチェーン

秋葉淳一の「CREはサプライチェーンだ!」 Vol.5 物流不動産の価値を上げる「人工知能」が資産価値を上げる

公開日:2017/04/28

やっぱり人間は凄い!

最近では、人工知能やロボットの話題を目にしない日はない。
「Pepper」「ドローン」「自動運転」、etc。
たしかに、人工知能やロボットの進化は凄まじい。また、少子高齢化による人材不足が顕著な日本においては、これらの技術に対する期待は大きく、話題になるのもうなずける。
今回のコラムにおいても、人工知能とはどういうものなのか、物流不動産、ロジスティクスにどのような変化を起こし得るのか、また、それを活かす為にIoTがどのような役割を果たすのかを解説する。
まずは人間の凄さから考えてみたい。
私たちは、何かを手にした時に「思ったより重い」とか「思ったより軽い」と感じることや、そのことを言葉にすることがある。この「思った」は人工知能に置き換えられる。「思った」は手にするという動作以前の過去の経験値から導き出されているものであり、ビッグデータから人工知能が導き出した結果に置き換えることができるのである。簡単に経験値と書いたが、人間の経験値自體は優れたものである。なぜなら、その物自體を手にしたことがあるなら、「思ったより重い」とか「思ったより軽い」にはならないのである。その物の重量、表面の堅さ、摩擦抵抗が分かっているのだから、「思った通り」となる。
色々な要素に対する類似の経験値から「思った」は導き出されており、それも目からの情報だけで「思った」數値を割り出し、腕や手に指示を出しているのだ。
2016年11月、人工知能(機械學習)で東京大學合格を目指す「東ロボくん」の開発を進めてきた國立情報學研究所が、 2016年度の大學入試センター試験の模試で、偏差値57.1を獲得したと発表した。昨年からは橫ばいで東大合格圏に到達しなかった。今後は、東大合格を目標にせず、中高生の読解力を高める研究に注力するという。
これは、人工知能が言葉の意味、やり取りの意味を理解していないということであり、統計的にデータ処理をしているに過ぎず、「東ロボくん」がこの問題を解決する目処が立たなかったためである。

2016年3月に人工知能が囲碁の世界チャンピオンに勝ったというニュースを記憶されているだろうか。この人工知能はアルファ碁と名付けられており、深層學習(ディープラーニング)という手法で作られたものである。ディープラーニングについては、後の章で述べるとして、私が注目したのは、將棋やチェスでは既に人工知能が勝っていたが、囲碁においては、まだ10年は人工知能が勝つことはないと言われていたのに勝ったという事実、それでも1敗したという事実に注目をした。アルファ碁は6ヶ月間で人間の600年分の棋譜を勉強したと言われている。対局中もどんどん強くなったと。それでも1敗したのだ。やっぱり人間は凄いとこの時は思った。ところが、昨年末に登場したMasterと呼ばれるアルファ碁の進化型がトッププロを相手に100%の勝率だという。“勝ち負け”が決まっている世界では人工知能が有効だと証明されたのだ。そこが人工知能を有効活用する一つの考え方であることがはっきりした。

(図—1)東ロボくんが出來なかった英語の問題(※日本語にしています)

出典:NHK解説委員室 「東大斷念!?東ロボくんの挑戦」「くらし☆解説」 土屋 敏之 解説委員(2016年11月17日)

人工知能ってなに?

人工知能(Artificial Intelligence)という言葉自體は1956年から使われている。人工知能(Artificial Intelligence)の意味を改めて記述すると、「人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、或いはそのための一連の基礎技術を指す」となる。今更だが、コンピュータを使用する前提である。コンピュータの進化が人工知能の進化に及ぼす影響が大きいということだ。
30年前のスーパーコンピュータの能力は、今現在のノートパソコンよりも劣っていた。
私の経験でも人工知能や遺伝的アルゴリズムを使って25年以上も前に、配車や爐の自動制御も実施している。だが、結果出力に數時間を要していたのである。これでは、殘念だが多くの業務への適用や普及には繋がらなかった。しかし、今は違う。IoT(Internet Of Things)でも語られているように、高速インターネットの普及、クラウド環境の整備によって、多くの情報をリアルタイムで収集し、その集まったビッグデータを高速で処理するコンピュータが存在している。この環境こそが人工知能を進化させるに適した環境である。ちなみに、IoTは「全てのモノがインターネットに繋がる」と訳されることが多いが、捉えるべき意味は、「全てのモノがインターネットのように自由に繋がる」ということだ。身近なモノでは、スマートフォンやタブレット端末、最近では「AmazonDashButton」が登場して、ポチッとボタンを押すだけで商品の注文が完了するものまで出現している。これがまさにIoTでの人間の生活である。インターネットそのものや、そこに接続されていることすら意識しない。

(図-2)現代における人間の生活とそれらを取り巻くIoT環境

現在、人工知能(AI)と呼ばれているものは、大きく2つが存在している。
一つ目は、従來からの手法でフォーマリズムと統計分析を特徴としているものであり「機械學習」と呼ばれている。私たちの日常の中で「機械學習」が使用されている例を挙げるとイメージし易いだろう。

(図3)AI、機械學習、ディープラーニングの歴史と位置付け

出典:NVIDIA JAPAN 人工知能、機械學習、ディープラーニングの違いとは Michael Copeland (2016年8月9日)

商品レコメンデーション

顧客の購買履歴や検索履歴と膨大な商品の在庫情報から、その顧客が興味を持って購入しそうなものを識別する。この結果を用いて、顧客に商品を推奨し購入を促すようにプログラムされている。

迷惑メール検知

受信メールの內、どれが迷惑メールかを識別する。この結果を用いてメールを受信フォルダに入れるか、迷惑メールフォルダに入れるかの動作を実施する。

株式取引

現在と過去の株式の値動きから、その株式を買うか、保持するか、それとも売るべきかを決定する。この結果を投資家やアナリストの意思決定における重要な判斷材料としている。

ヒント(特徴) コンピュータの推理 / 回答
赤い 火、リンゴ、血、花…
フルーツ リンゴ、イチゴ、さくらんぼ…
ヘタに葉っぱがある イチゴ
ツブツブがある イチゴ(きっと間違いない)

(図-4)機械學習における特徴と推理の例

出典:「『人工知能がよ~くわかる本』神埼 洋治氏

二つ目は、ディープラーニングと言われるモデルである。機械學習とは何が違うのか。ディープラーニングは機械學習の一種とみなされているが、大きな違いがある。例えば、機械學習で色を認識するには、「色情報」を特徴にして識別させていたが、そもそもこの特徴は、人間が定義しているのだ。一方、ディープラーニングでは、學習データからシステム側が自動的に特徴を抽出する點が大きく違う。つまり何に著目すればよいかを教える必要がなく、どんな特徴を利用すれば識別できるのかをシステム自らが自動的に學ぶのである。
ディープラーニングが注目されるきっかけは、2012年6月に「Googleの研究開発によってコンピュータが貓を認識できるようになった」というニュースが話題になったことだ。YouTubeにアップロードされている動畫から、ランダムに畫像を1000萬枚用意し、これを処理させたところ「貓の顔」に強く反応するニューロンが現れ、そのニューロンを観察することで「貓の顔」が認識出來るという。機械學習のように貓の顔の特徴を人間が定義した訳ではない。それでも、実際の人間の脳のニューラルネットワークと比べると、100萬分の1の規模だというのだから、まだまだ発展の余地が殘されているし、人間はやはり凄い!

人工知能の進化には前にも述べたように、機械學習をさせるため、多くの學習データを用意しなければならない。これが、IoTによるビッグデータ技術の進展で容易に入手できるようになり、コンピュータの性能が飛躍的に上がったことで解決された。そして、「ディープラーニング(深層學習)」という新技術が登場した點も大きい。
ディープラーニングの特徴をひと言で言えば、コンピュータが人間のように「気づける」モデルということだ。

(図-5)ディープラーニングの仕組み

出典:『人工知能は人間を超えるか』松尾 豊 氏

「人工知能」の活用に向けた理解

一番大事なことは、人工知能が萬能ではないということである。當たり前ではあるが、これが人工知能を活用する上で認識しなければならない重要なことである。前に記述した「東ロボくん」も一つの人工知能(脳)が試験に挑んだわけではない。受験科目毎に別の人工知能が試験を受験したのである。問題(入力データ)に対して、求める解答(出力データ)を出す為にチューニングされたモデルが必要だからだ。そう囲碁のMasterも他のことはできないのである。このことを理解して人工知能を活用することが1つ目のポイントである。 次のポイントは、人間の経験にあたるビッグデータが必須であることだ。人間が屬人的に処理している業務は往々にしてデータ化(コンピュータが認識可能なデータ)されていないことが多い。これでは、人工知能を活用する以前の狀態である。

過去に言われてきた物流不動産の価値を決める立地條件に人手不足の影響で「人が集まるか」が加えられることが増えてきた。しかし、人工知能の活用がこの條件をなくす可能性があり、物流不動産の価値を上げる一つの施策であることは間違いない。

トークセッション ゲスト:學習院大學 経済學部経営學科教授 河合亜矢子

トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式會社 執行役員 河合秀治

トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式會社 COO 安高真之

トークセッション ゲスト:大和ハウス工業株式會社 取締役常務執行役員 建築事業本部長 浦川竜哉

トークセッション ゲスト:株式會社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

トークセッション ゲスト:明治大學 グローバル?ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆

トークセッション ゲスト:株式會社 日立物流 執行役専務 佐藤清輝

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トークセッション ゲスト:アスクル株式會社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸

トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創業者 滝野 一征

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トークセッション ゲスト:株式會社ローランド?ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

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スペシャルトーク ゲスト:株式會社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式會社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式會社フレームワークス會長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に攜わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス?リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式會社フレームワークスに入社、SCM?ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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