
サプライチェーン
秋葉淳一の「CREはサプライチェーンだ!」 Vol.1 究極の顧客指向で「在庫(kù)」と「物流資産」を強(qiáng)みとする「トラスコ中山」
公開(kāi)日:2016/11/18
1959年に中山工機(jī)商會(huì)として創(chuàng)業(yè)したトラスコ中山は、1964年にはプライベートブランド商品の発売や総合カタログ(オレンジブック)を創(chuàng)刊するなど、この分野での後発企業(yè)として「人が思いつかないことを考える」をモットーに成長(zhǎng)を続けた。
1997年には売上高1,000億円を突破し、その後の國(guó)內(nèi)製造業(yè)の停滯をものともせずに、2015年度には売上高1,665億円を記録している。
工場(chǎng)や建設(shè)現(xiàn)場(chǎng)などの現(xiàn)場(chǎng)で工員や職人に必要とされる“プロツール”の専門(mén)商社として成長(zhǎng)を続けるトラスコ中山株式會(huì)社の、企業(yè)戦略とそれを支えるオペレーションおよびITについて紹介する。
究極の顧客指向の取組みを続けるトラスコ中山
一般的に、株主構(gòu)成が“安定株主”から短期的なリターンを求める“投資家”に移るに従って、「投下した資本に対し、どれだけの利潤(rùn)を上げられるのか」という點(diǎn)が重視されるようになり、その結(jié)果、自己資本利益率(ROE)が企業(yè)の経営指標(biāo)としてクローズアップされるようになる。
ROEを代表的な経営指標(biāo)とする場(chǎng)合、物流設(shè)備や在庫(kù)などの資産は無(wú)駄あるいはリスクと見(jiàn)なされる。しかし、物流設(shè)備や在庫(kù)は本來(lái)意味のあるものであり、上手く管理できれば武器となる。
トラスコ中山の社長(zhǎng)は「ROEは目標(biāo)としない」と宣言し、全國(guó)16箇所の物流センターとITへの設(shè)備投資、26萬(wàn)アイテムにも上る在庫(kù)への投資を続けた。
物流設(shè)備や在庫(kù)は、トラスコ中山の顧客である“プロ”達(dá)に、必要なものを必要なときに屆けるためには不可欠なものだ。つまり、他社よりも物流設(shè)備や在庫(kù)を上手く管理することで商機(jī)を見(jiàn)いだすことができる。
トラスコ中山は、顧客にとって「多くの商品がカタログに載っていること」「すぐに手に入ること」を目標(biāo)とし、その指標(biāo)として「在庫(kù)アイテム數(shù)」と「在庫(kù)ヒット率」を用いている。「在庫(kù)アイテム數(shù)」はどれだけのアイテムを自社の物流設(shè)備に在庫(kù)しているかを表したもので、14.1萬(wàn)アイテム(2011年)から5年間で26.5萬(wàn)アイテム(2015年度)に増加した。また、「在庫(kù)ヒット率」は受注のタイミングで商品が在庫(kù)から引き當(dāng)てられる確率を表すが、同様に80.7%から88.2%に増加している。
トラスコ中山は顧客の求めるものを?qū)g直にそろえるという究極の顧客指向の取組みを続け、その結(jié)果2015年度には1,665億円という売上高と、7.8%という高い営業(yè)利益率を達(dá)成している。目標(biāo)としないとしたROEについても8.7%という立派な値となっている。
流通業(yè)における“規(guī)模の不経済”
一般に、在庫(kù)アイテム數(shù)を増やすと、優(yōu)先順位の低い低回転商品を持たざるを得ない。また、在庫(kù)ヒット率を上げるためには安全在庫(kù)を増やさなければならない。その結(jié)果、流通業(yè)において売上規(guī)模を求めるために在庫(kù)アイテム數(shù)(取扱いアイテム數(shù))を増やすと販売管理費(fèi)が高まり営業(yè)利益が下がる、という“規(guī)模の不経済”が起こることがある。
よって、顧客の求めるものを?qū)g直にそろえるという究極の顧客指向は、同様の非効率性が生じかねない戦略だ。しかし、トラスコ中山は在庫(kù)アイテム數(shù)を増やし在庫(kù)ヒットを上げるという目標(biāo)を設(shè)定し継続的に改善を続けた上で、在庫(kù)日數(shù)や販売管理比率はむしろ改善傾向にあり、“規(guī)模の不経済”は生じていない。
さらに、社長(zhǎng)は「在庫(kù)回転率は求めない」というメッセージを社內(nèi)外に発信している。トラスコ中山は、「ロングテールの在庫(kù)増と在庫(kù)日數(shù)改善の両立」と「在庫(kù)管理を支えるプロセスとIT、人材」によって、26.5萬(wàn)アイテムという膨大な在庫(kù)を管理し改善を続けているのだ。
ロングテールの在庫(kù)増と在庫(kù)日數(shù)改善の両立
在庫(kù)は、供給のリードタイムやロットサイズが需要の許容リードタイムやロットサイズと異なる場(chǎng)合に、これらを調(diào)整する役割があり、ここに在庫(kù)の必要性がある。
また、実際の需要に先んじて実際の需要以上に在庫(kù)を持つためには、將來(lái)の需要を予測(cè)する必要がある。実際の需要が予測(cè)を上回るときの保険として安全在庫(kù)が必要だが、実際の需要が予測(cè)を下回ると余剰在庫(kù)が発生するからだ。
そのため、荷動(dòng)きの少ないアイテムを探し、調(diào)達(dá)のロットサイズを小さくし発生する在庫(kù)を減らしたり、扱い自體を取りやめたりして、目標(biāo)する在庫(kù)回転率に近づけるような取組みがなされる。しかし、調(diào)達(dá)のロットサイズを小さくすれば、調(diào)達(dá)の単価が上がり、扱い自體を取りやめれば、「多くの商品がカタログに載っていること」「すぐに手に入ること」という顧客の要望に応えられなくなる。
トラスコ中山の在庫(kù)管理のアプローチはこれと全く逆である。まず「多くの商品がカタログに載っていること」「すぐに手に入ること」という顧客の要望に応えることを考える。そのために増加する在庫(kù)は1日あたり166アイテム(注:2015年度の在庫(kù)アイテムの増分33,200を営業(yè)日數(shù)200日として計(jì)算)にも上るが、この166アイテムをどのように倉(cāng)庫(kù)に収めるかに知恵を絞ると、必要なもの、本當(dāng)に生きたものだけを持つようになり、不要なものが排除されるのだという。
具體的には、ものの動(dòng)きを注意深く観察することで、安全在庫(kù)や余剰在庫(kù)が削減できる。大きなロットで仕入れても、各センターに分散配置すればセンター毎の在庫(kù)は圧縮できる。このような取組みにより、「在庫(kù)アイテム數(shù)」と「在庫(kù)ヒット率」を改善し、その結(jié)果として、トレードオフ関係にあるロングテールの在庫(kù)増と在庫(kù)回転率の向上のどちらをも実現(xiàn)しているのだ。
在庫(kù)管理を支えるプロセスとIT、人材育成
しかし、人間ひとりが毎日管理できる在庫(kù)はせいぜい數(shù)千アイテムにとどまる。16箇所の物流センターと35箇所の在庫(kù)型営業(yè)所で26萬(wàn)アイテム、合計(jì)300萬(wàn)SKU(在庫(kù)管理単位)の在庫(kù)管理は人間ではとても不可能だ。さらに需要を予測(cè)し、最適な在庫(kù)水準(zhǔn)を算出するとなると、計(jì)算量が膨大なためコンピュータでも容易ではない。つまり、人間との協(xié)調(diào)作業(yè)を許容する柔軟なシステムに加えて、システムを十分に理解した人間も必要だ。
トラスコ中山の社內(nèi)スタッフはシステムについて深く理解しているため、“どのようにコンピュータに実裝するか”という技術(shù)面について外部の意見(jiàn)は求めても、“何をどのように扱うか”という業(yè)務(wù)オペレーションは全て自社のノウハウで定義を行っている。
サプライチェーンに限らず、ITシステムが実際のオペレーションと乖離してしまうのは、業(yè)務(wù)知識(shí)とIT雙方の経験や知識(shí)をもった人材の不足が一因だ。
また、トラスコ中山では全ての新入社員に物流現(xiàn)場(chǎng)を1年間経験させて、商品と顧客を理解させている。物、金、情報(bào)の動(dòng)きを理解した人材の育成、機(jī)能間にまたがる意思決定のできる人材の育成を行っているのだ。
トラスコ中山の成長(zhǎng)戦略と課題
トラスコ中山の競(jìng)爭(zhēng)力は、高い在庫(kù)回転率(在庫(kù)日數(shù)70日)、在庫(kù)アイテム數(shù)(26萬(wàn)アイテム)と在庫(kù)ヒット率(88%)、営業(yè)利益率(7.8%)とROE(8.7%)、という構(gòu)造に整理できる。
ただし、トラスコ中山と同業(yè)の専門(mén)商社の他にも、同様の商材を扱う大手のECサイトが存在する。一見(jiàn)競(jìng)合にも見(jiàn)えるが、現(xiàn)時(shí)點(diǎn)ではこうしたEC企業(yè)のバックエンドはトラスコ中山が運(yùn)営しており、競(jìng)合というよりも顧客として位置づけられている。しかし今後、これらのECサイトの物量が増えれば自社でメーカーと直接取引を始める事や、プライベートブランドを作る可能性もあるだろう。
しかし、トラスコ中山はこれらの可能性も織り込み済みである。つまり、現(xiàn)在の顧客がメーカーと直接取引を始めることは、売上面では痛手であるが、そのように流通ルートの増えた商品は既に価格競(jìng)爭(zhēng)にさらされ利益率が低下する。そこでの不毛な戦いを避けて、ロングテールというフロンティアを広げ利益を確保しようというのがトラスコ中山の戦略である。実際に、過(guò)去5カ年の売上増に占める新製品の売上比率は71%にも及ぶ。そして、その戦略を具體化したものが、2021年度に50萬(wàn)アイテムという在庫(kù)目標(biāo)なのである。
この戦略のもとでのオペレーション上の課題を二つ上げてみよう。まず50萬(wàn)アイテムを揃えるためには、現(xiàn)有商品の延長(zhǎng)線上にはないものを扱うことになる。何を扱うか、どのように扱うかのノウハウもなく、また荷動(dòng)き自體も少ないためリスクの高い商品と言えるだろう。
また、これまで16箇所の物流センターと35箇所の在庫(kù)型営業(yè)所に26萬(wàn)アイテムすべてを在庫(kù)してきたが、今後50萬(wàn)アイテムを在庫(kù)できるセンターは限られる。在庫(kù)管理が“ある商品を何個(gè)おくか”という一変數(shù)の最適化問(wèn)題から、“どこに何を何個(gè)おくか”という組合せの最適化問(wèn)題に変わるため、オペレーションの難易度がさらに高まることとなる。
しかし、この難題をもトラスコ中山は解決するはずである。
究極の顧客志向に基づくこれら問(wèn)題解決能力は、一朝一夕には真似できないトラスコ中山の競(jìng)爭(zhēng)力の源泉だからである。
トークセッション ゲスト:學(xué)習(xí)院大學(xué) 経済學(xué)部経営學(xué)科教授 河合亜矢子
- 第1回 物流を知り、理解することから始まる
- 第2回 テクノロジーでネットワーク化し、全體最適を図る時(shí)代
- 第3回 現(xiàn)在の學(xué)生が業(yè)界の中心となる30年後、企業(yè)はどうあるべきかを考えたい
トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式會(huì)社 執(zhí)行役員 河合秀治
トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式會(huì)社 COO 安高真之
トークセッション ゲスト:大和ハウス工業(yè)株式會(huì)社 取締役常務(wù)執(zhí)行役員 建築事業(yè)本部長(zhǎng) 浦川竜哉
トークセッション ゲスト:株式會(huì)社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎
トークセッション ゲスト:明治大學(xué) グローバル?ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆
トークセッション ゲスト:株式會(huì)社 日立物流 執(zhí)行役専務(wù) 佐藤清輝
- 第1回 LOGISTEEDで物流の新領(lǐng)域へ
- 第2回 LOGISTEEDの「デジタルプラットフォーム」で次世代ロジスティクスへ
- 第3回 LOGISTEEDのSSCV技術(shù)が物流の世界を拡げていく
トークセッション ゲスト:流通経済大學(xué) 流通情報(bào)學(xué)部 教授 矢野裕児
- 第1回 モビリティを再編し、物流起點(diǎn)のイノベーションを起こす
- 第2回 「その場(chǎng)対応のロジスティクス」から「先を読んだロジスティクス」の世界へ
- 第3回 物流ネットワークの在り方が変われば物流が変わる
トークセッション ゲスト:アスクル株式會(huì)社 CEO補(bǔ)佐室 兼 ECR本部 サービス開(kāi)発 執(zhí)行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸
トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創(chuàng)業(yè)者 滝野 一征
- 第1回 ロボットを動(dòng)かす「脳」をつくる
- 第2回 ロボットを?qū)毪工毪趣いΔ长趣稀ⅴ抓恁互工驂涓铯工毪趣いΔ长?/a>
- 第3回 物流倉(cāng)庫(kù)の自動(dòng)化でSCM改革を起こす
トークセッション ゲスト:株式會(huì)社ABEJA 代表取締役社長(zhǎng)CEO 岡田陽(yáng)介
トークセッション ゲスト:株式會(huì)社ローランド?ベルガー プリンシパル 小野塚 征志
トークセッション ゲスト:株式會(huì)社アッカ?インターナショナル代表取締役社長(zhǎng) 加藤 大和
スペシャルトーク ゲスト:株式會(huì)社ママスクエア代表取締役 藤代 聡
スペシャルトーク ゲスト:株式會(huì)社エアークローゼット代表取締役社長(zhǎng)兼CEO 天沼 聰
- 第1回 お互いのビジネスが「シェアリング」というコンセプトで結(jié)びついた
- 第2回 まずは見(jiàn)ていただいて、シェアリングの世界を感じていただきたい
- 第3回 シェアリング物流のコアで、かつ本質(zhì)的なところは、進(jìn)化すること
秋葉淳一のロジスティックコラム
トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式會(huì)社アッカ?インターナショナル代表取締役社長(zhǎng) 加藤 大和
トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式會(huì)社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏
「CREはサプライチェーンだ!」シリーズ
- Vol.1 究極の顧客指向で「在庫(kù)」と「物流資産」を強(qiáng)みとする「トラスコ中山」
- Vol.2 「グローバルサプライチェーン」で食を支える日本水産
- Vol.3 「當(dāng)たり前を地道にコツコツ」実現(xiàn)したヨドバシカメラのロジスティクスシステム
- Vol.4 「新たなインテリア雑貨産業(yè)」を構(gòu)築したニトリホールディングス
- Vol.5 物流不動(dòng)産の価値を上げる「人工知能」が資産価値を上げる
- Vol.6「ロボット」が資産価値を上げる
- Vol.7「人財(cái)」が資産価値を上げる
- Vol.8「ビッグデータ」が資産価値を上げる
- Vol.9 AI、IoTがCRE戦略にもたらすこと
「物流は経営だ」シリーズ
土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)
株式會(huì)社フレームワークス會(huì)長(zhǎng)。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開(kāi)発と生産管理システムの構(gòu)築に攜わる。
その後、多くの企業(yè)のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構(gòu)築とそれに伴うビジネスプロセス?リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式會(huì)社フレームワークスに入社、SCM?ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構(gòu)築や改革、および倉(cāng)庫(kù)管理システム(WMS)の導(dǎo)入をサポートしている。
単に言葉の定義ではない、企業(yè)に応じたオムニチャネルを?qū)g現(xiàn)するために奔走中。